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『四畳半王国見聞録』(森見登美彦) [読書(小説・詩)]

 京都を舞台にクサレ大学生どもが無用な試練にあたふたする妄想話を書かせれば日本一、いやおそらく世界一の作家、森見登美彦さん。前作『ペンギン・ハイウェイ』でついに京都も四畳半もクサレ大学生も出て来ない新境地を開拓、作家として成長した、と思ってたら、最新刊では再びアレですよ。単行本(新潮社)出版は2011年1月。

 というわけで、今さらですが、京都を舞台にクサレ大学生どもが無用な試練にあたふたする妄想話7篇から構成された連作長篇です。それぞれの作品は独立していますが、共通の登場人物も多く、本書収録作品間のみならず過去の作品(特に『四畳半神話大系』と『<新釈>走れメロス他四篇』あたり)へのリンクも多数アリ。

 最初の『四畳半王国建国史』と『四畳半王国開国史』が対になっていて、朽ちかけた下宿に引きこもり、四畳半のなかに全世界を取り込んでしまおうと、必死の妄想にふけるクサレ大学生が語り手となります。まあ、いつものやつです。

 この間に5つの短篇がはさまります。

 『蝸牛の角』と『四畳半統括委員会』は、全宇宙に存在するすべての四畳半を統べるもの、すなわち神(阿呆神)と秘密結社(四畳半統括委員会)に関する物語。前者はお得意の細かいギャグを繰り出しながら神話を紡いでゆき、後者は手紙や怪文書など様々な文体を駆使して意味不明な陰謀論を組み立ててゆきます。まあ、いつものやつです。

 平穏無事で何事もなく過ぎてゆくかのように見える真夏の一日の出来事を記した『真夏のブリーフ』は、その奇妙なホラーめいた雰囲気で異彩を放っています。ちょっと『きつねのはなし』や『宵山万華鏡』を思い起こさせる不安感がお見事。個人的には、これと、次の『大日本凡人會』がお気に入り。

 『大日本凡人會』は、いわゆる超能力戦隊もの、だと思う。妄想数学的に存在を「証明」することでいかなるものであろうと現出せしめる能力(もっか自分の「恋人」の存在証明に取り組んでいる)、桃色映像からモザイクを外す能力、精神的にヘコむと空間を歪曲させてしまう能力、など訳の分からない能力を持った5人のクサレ大学生たち。

 世をすねひたすら四畳半にて青春を浪費するのみだった彼らの前に現れた最大の敵とは。ラストは、まるでデビュー作『太陽の塔』を思わせる展開になって、不覚にもちょっぴり切ない気分になったり。いかんな。

 『太陽の塔』を思わせると言えば、『グッド・バイ』にもちょっとそういう傾向はあって、これは「自分はみんなに愛され大切に思われているから」と言い張る「かまって君」タイプのクサレ大学生が、よせばいいのに京都から出てゆくと知人に嘘を触れ回り、うすうす分かっていた通りの反応の薄さに涙目になる話。

 最初は笑いながら読んでいても、途中で身につまされて苦しくなってくる、というのが正しい読者というものでしょう。いかんな。

 というわけで、笑えたり、謎めいていたり、ちょっと切なかったり、阿呆らしかったり、身につまされたり、若い頃の(いらん)思い出がありありと蘇ってきたり、色々と心穏やかではいられない青春ユートピア幻想譚。まあ、いつもの、アレです。


[収録作]

『四畳半王国建国史』
『蝸牛の角』
『真夏のブリーフ』
『大日本凡人會』
『四畳半統括委員会』
『グッド・バイ』
『四畳半王国開国史』


タグ:森見登美彦
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