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『気分上々』(森絵都) [読書(小説・詩)]

 いい男は黙って我慢だ。亡き父のそんな古くさい遺言を守っていたら、友達とは疎遠になり、ガールフレンドからは誤解され、プレーヤーが故障してエロDVDが再生できないし、いい男を目指す中学生男子の青春も色々と大変だ・・・。表題作ほか、人生に降りかかってくる様々な恋模様を描く9篇を収録した作家デビュー20周年記念短篇集。

 作家デビュー20周年を記念して、ここ10年ほどの間に雑誌やアンソロジーに掲載された短篇を集めた一冊です。最も古いものが2000年、最新作は2012年。ほぼ全ての作品が恋愛小説です。といってもロマンティックな作品ばかりではないのは当然のことで。

 『17レボリューション』は、テンション低い女子高生が“イキのいい女”への自己改革を目指して頑張るユーモア青春小説。そもそも昆布茶や温泉が似合う体質だというのに、似た者同士だと思っていた「薄暗い」男子にふられたことから一念発起。テンション高い友達グループと付き合い始めたが・・・。

 少女漫画でよく見かける低血圧女子ものですが、文章の軽快さでさらさら読んで楽しめます。ちなみに、友情に恋にエロに(特にエロに)迷いまくる中学生男子のイタい青春時代を描いた表題作『気分上々』と対になっているような気もします。

 『本物の恋』は、恋愛なんてもうコリゴリだと思っていた女子高生が、「本物の恋」に苦しむ男を目撃する話。幸せそうなカップルに笑顔で挨拶して立ち去ってから、地面に崩れ落ち、号泣する男。本物の恋とはこれほどまでのものなのか。衝撃を受けた彼女は、自分も本気の恋を目指す決意をする。それから8年、その男に再会した彼女は、自分が決定的な勘違いをしていたことを知るのだった・・・。

 よくあるオチがついていますが、話の流れに説得力があり、さわやかな読後感を残してくれる短篇です。

 『東の果つるところ』は、左右対称の字だけで構成される姓名(例えば、ヒロインの名は「草間由果」)を持つ相手としか交際が許されないという一族の悲喜劇を描く話。一族の呪縛を嫌って土地を逃げ出したヒロインは、女優となって非対称の芸名を名乗ることで掟に反逆するが、しかし「左右対称の呪い」は彼女の努力をあざ笑うかのように人生を支配してくるのだった・・・。

 能力も人柄も家柄も関係なく、ただただ姓名を構成する漢字の何割が左右対称であるかが全ての評価を決めるという厳しい掟、それに反逆するヒロインが命をかけて非対称を希求する。客観的に見ると途方もなく馬鹿げたことに、この上なく真剣に取り組む熱血譚、という個人的なツボの一つにピタリはまった作品。本書収録作のうち最も気に入りました。共感する人は少ないかも知れませんが。

 他に、因習的な母親に嫌気がさして都会へ飛び出した青年が、母親の死後に郷里に戻ってきてようやくその真意に気づく『ブレノワール』、東京港湾合同庁舎の検疫所で始まる激しい恋の顛末を描いた『ヨハネスブルグのマフィア』などが印象に残りました。

[収録作品]

『ウエルカムの小部屋』
『彼女の彼の特別な日 彼の彼女の特別な日』
『17レボリューション』
『本物の恋』
『東の果つるところ』
『本が失われた日、の翌日』
『ブレノワール』
『ヨハネスブルグのマフィア』
『気分上々』


タグ:森絵都
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