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『「超」怖い話 乙(きのと)』(松村進吉) [読書(オカルト)]

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「それにしても、岸から何メートルも入ったところで両手を振って、バシャバシャやってるから、変だなとは思ったんだけど」
「へえ」
「キサさん達がすぐに服脱いで、飛び込んで、助けに行ったんだ。そしたら……」
 お父さんはまたブルブルブルッ、と顔を震わせて立ち上がった。
 そして、トイレへ駆け込んで行った。

「ーーその溺れてた人を引き揚げたら、腐乱死体だったっていうんです」
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文庫版p.65

 『セメント怪談稼業』 の著者による、実話怪談シリーズ最新作。文庫版(竹書房)出版は、2015年7月です。


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 ただ残念なことに、祖母は筋金入りの現実主義者でもあった。
 私が本シリーズの新刊を渡したりしても、少しとぼけた顔で眼鏡をずらし、
「……実話怪談。なるほどまぁ、本当にあったって態ね。はいはい」
と、はなから信用せずに受け取っていた。
(中略)
 そんな中で昨年、怪談専門誌『幽』における私の連載が単行本化した。
 これは少なからず実験的ーーというよりも半ば自棄っぱちで、私小説的な要素を多分に放り込んだ、半自伝的な代物だった。そういえばもう何年も自作を渡していないなと思い、祖母にこれを贈ったところ、意外にもいたく気に入った様子で私を呼び、
「お化けの話でも何でも、一生懸命書いてれば一人前になれるんだって、それがよくわかる本だったよ。あんた、頑張ったね」
 と、膝の上に件の本を置き何度も何度も撫でた。(中略)
 彼女が亡くなったのは、その翌月である。
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文庫版p.220、222


 祖母が褒めたのは『セメント怪談稼業』 のことだと思われますが、私もこの本を読んで大いに感銘を受け、この人が書いたものなら個人的に苦手な(だって怖いから)実話怪談本も読んでみようと思ったのでした。ちなみに単行本読了時の紹介はこちら。

  2015年04月09日の日記
  『セメント怪談稼業』(松村進吉)
  http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-04-09

 さて、松村進吉さんによる実話怪談本の最新作です。心霊ものがメインとなっていますが、個人的に好きな「わけのわからない妖怪」の話もけっこう含まれていて嬉しい。


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「〈反吐の妖精〉って私は呼んでますけど」
 終電に限らず繁華街などでも、極まれに、路上の反吐のそばにうずくまり、頭を振りまくる女の姿を志摩さんは目にしている。(中略)
 彼女が数回見たというその女は、深夜の町という点は共通しているが場所も時間もまちまちなので、同一の存在なのかどうかは不明という。
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文庫版p.95


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 黒々とした子象のようなものが前方の木立の合間、ほんの5メートルばかり頭上の位置にすすすすすすすすす、と滑り現れた。
「ッ……!」
 流石に仰天した。
 近いなどというものではない。目の前である。
 直径約2メートル、下に向かって尻すぼみの形状。
 全面皺だらけで艶はない。布か、紙で出来ているようにも見える。
 そしてその下部からは、確かに二本の人の脚に似た器官が生え、じたばたもがいている。
 ーー化け物である。
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文庫版p.88


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 ーーその、落書きの犬の横顔は、室内の様々なもののフチやヘリにぴったりとくっつくように、ないしはフチやヘリ自体を自分の顔の輪郭として利用して、出現していた。
 ごちゃごちゃと入り組んだものほど危険だった。
 沢山の、物の輪郭の断片が「イヌ」の輪郭をつくるのだ。
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文庫版p.113


 どうやら今でも、名前のついてない妖怪はいっぱい出没しているようです。ちなみに、ごちゃごちゃ入り組んだ物を利用して自らの輪郭を作って出現する「イヌ」は、チャイナ・ミエヴィルの『細部に宿るもの』という短篇にそっくり。

 他に好きなのは、やっぱりUFOもの、そしてファフロツキーズ(あるいはテレポート)もの。


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 目の前に聳える山肌の、遥か上の方にびゅんびゅんと旋回する光点があった。
 まともな速さではなかった。(中略)
 まるで蠅のようだった。速すぎて光が尾を引いて見えた。
 あれは「UFOみたい」な物じゃない。
 明らかに、それ、そのものとしかーー。
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文庫版p.80


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 幅6メートル、奥行き2メートルほどの裏庭の、物干し台や植木の隙間にぴったりと収まるようにして、白いダンプが停まっている。
 なにこれ、誰のーーと呟きかけた浅田くんだが、すぐにそれ以前の問題に突き当たる。
 ーーこの車、どうやって入ったんだ。
 フロントが前を向いているのでバックで進入したのだろうが、その前にある物干し台が動かされた形跡はないし、花壇も踏み荒らされていない。
 轍の跡がどこにもない。
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文庫版p.160


 最近、いわゆる「フォーティアン現象」とか「ハイストレンジネス」などと呼ばれる超常現象の報告を目にすることがあまりないなあ、寂しいなあ、と思っていたのですが、みんなひっくるめて「実話怪談」に放り込まれていたのか。心霊と猟奇を除いた「へんな実話怪談」だけを集めてくれればいいのに、と、きわめて個人的にそう思います。



タグ:松村進吉
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