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『解決人』(両角長彦) [読書(ファンタジー・ミステリ・他)]


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「あなただけじゃありません。僕らはみんな、自分の思い込みだけで生きてる。世の中の役になんか立たない、生きる価値などそれほどありゃしない人間ばかりなんです」六原は田辺の肩を叩いて言った。「そのことに気づいてるやつと、気づいてないやつの二種類がいるだけです」
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単行本p.155


 戦場で、映画撮影現場で、教室で、空手道場で、そして、あの世で。わけの分からない災難やトラブルはいつどこで降りかかってくるか分からない。困ったときはトラブルシューター六原にお任せあれ。七編を収録したミステリ短篇集。単行本(光文社)出版は2017年01月、Kindle版配信は2017年01月です。


[収録作品]

『上司交替』
『パトロンがいるから』
『天使虐殺』
『静かな教室』
『道場破り』
『いかにもげ』
『実験』


『上司交替』
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“それをわかってくれたのなら、私も条件をつけやすい。君が契約を取れなければ、ここにいる全員を殺す。この契約が取れないなら生きていても仕方がない。誰もかれもだ”
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単行本p.36

 某国で発生した内戦に巻き込まれた日本のビジネスマン。外国人が脱出するための最後の飛行機が数時間後に飛び立つというのに、本社の上司から、契約を取るまで帰国は許さん、業務命令に従わないなら他のスタッフを皆殺しにする、というお達しが。進退窮まったそのとき思い出したのは、トラブルシューターを名乗る不思議な男、六原。そうだ、彼なら何とかしてくれるかも知れない……。めちゃくちゃ強引な状況設定で六原が初登場する第一話。


『パトロンがいるから』
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 自意識過剰の盗作作家(まずそれに間違いない)が、異常者につかまった。警察に知らせても、時間内に桑島を救出することはむずかしいだろう。
 私は焦った。あまりにも非現実的な事態のうえ、時間は三十分たらずしかない。警察にも頼れないとすれば、どうしたらいい? 誰に相談すれば――。
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単行本p.62

 新人賞を受賞したデビュー作が評判になったものの、その後はろくな作品が書けないでいる作家が、パトロンを名乗る異常者に監禁された。受賞作が盗作だと認めろ、さもないと殺す、というのだ。電話で泣きつかれた語り手は、事態を収拾すべくトラブルシューター六原に連絡する。


『天使虐殺』
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「ここ一番という時に飛び降りられない臆病娘であっても、使い続けざるをえないわけか。一方で、スタントマンを使うことは監督の意向でできない――内田監督が四十年ぶりに撮る新作が、こんなことでスタックするとは」
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単行本p.85

 巨匠が撮っている新作映画の撮影現場で、何度もNGが出る。どうしても飛び降りることが出来ない若い主演女優、スタントなし長回しで撮ることにこだわる監督。さらに、主演女優に対する脅迫状が届く。エキストラとして出演する美川麗子(本名、安田和子)から事情を聞いた六原は、彼女にある行動を依頼するのだが……。


『静かな教室』
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「すまん」〈生徒〉たちに向き直った田辺は、手で涙をふきながら言った。
「君たちがあまりにもいい生徒なので、つい感激してしまって――君たちにはわからないかもしれないね。こういう静かな授業、誰も騒がず、誰も走り回ったりしない授業というものが、今の時代、どれほどありがたいものか――」
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単行本p.128

 学級崩壊への対応で疲弊し休職した教師。ケアのために行われている模擬授業。だが、次第に現実と虚構の境界が曖昧になり、精神的に追い詰められてゆく。ついに自殺を図った彼を止めたのは、六原だった。


『道場破り』
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「僕がこの目で見ただけでも、師範は十一回道場破りに勝っている。総数は数十回になるはずだ。そのころはもう師範の強さが評判になっていて、全国から道場破りがおしかけるようになっていたんだ」
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単行本p.160

 六原がかつて所属していた空手道場。そこの師範が道場破りに殺された。相手は卑劣にも刃物で刺して逃げたという。恩師の仇ということで真相を探ってゆく六原。だが、現場に居合わせた道場生たちは、全員が何かを隠していた。


『いかにもげ』
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「お父さんが来たの!?」買い物から帰ってきた母親の政子は、驚いて言った。
「わけのわからないことを、一人でわめくだけわめいてから、飛び出して行ったわ。『こうしちゃいられない。地球を救わなければ!』とか言って」麗子は食後のお茶をすすりながら言った。「五年ぶりに姿を見せて、何を言うかと思えば」
「相変わらず『いかにもげ』ねえ」政子はため息をついた。
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単行本p.199

 一応、シリーズを通したヒロイン役である美川麗子(本名、安田和子)再登場。五年ぶりにふらりと現れた父親が、自分はとてつもない秘密を抱えている、誰にも言うなよ、言うなよ、そうだこうしちゃいれらない、などと思わせぶりなことを口走って姿を消した数日後、死体となって発見された。事故か、偽装殺人か。そして秘密とは何か。真相をめぐるトラブルに巻き込まれた麗子は、六原に相談するが……。


『実験』
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“四人をむだに殺したが、やっと見込みのありそうな相手に出会えた。ここにいる女は数字を持っている。きっと「扉」の向こうへ行かせてみせる”
「そして殺すのか?」六原は静かにたずねた。
“やむをえない。おれという人間のための尊い犠牲だ”
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単行本p.260

 拉致監禁した被害者に臨死体験を強いることで、死後の世界に関する情報を手に入れようと企む男。すでに四人を殺した連続殺人犯が、一応ヒロインである美川麗子(本名、安田和子)を拉致する。このままでは彼女の命が危ない。六原には心当たりがあった。犯人は、かつての自分の親友ではないか。あのとき一緒にやった臨死体験実験を再開したのではないか、と。長篇『デスダイバー』を彷彿とさせる最終話。



タグ:両角長彦
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