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『おばけ詩篇』(暁方ミセイ、装幀:カニエ・ナハ) [読書(小説・詩)]

――――
じっとり赤い牛が
むこうの木の間で見ている
顔のない人たちが
白い円盤を追い続けて
見えなくなったり
また現れたりする
――――
『赤牛記念公園』より


 2017年7月9日は、夫婦で江戸東京博物館に行って、詩の同人誌即売会「第21回 ポエケット」に参加しました。そこで購入したものです。いわゆるフランス装というのか、アンカット(袋とじ)の詩作6篇を、一冊、一冊、手作りで装幀したのはカニエ・ナハさん。発行は2017年7月9日。

 なにしろフランス装なので切らないと読めないわけですが、手元にペーパーナイフといったおしゃれな道具はなく、そこらのハサミでじょきじょき切り開いて、この世に一冊しかない自分だけのおばけ本が完成しました。能動的に読書してるなー、って実感です。

 おばけ詩篇といっても、ねないこだれだ的オバケが出てくるわけではなく、むしろ精霊や自然神のような人間と隔絶した存在に対する畏怖の念を引き起こす作品が多くなっています。


――――
木は従う
強いものに従う
わたしの命を隠しながらじろじろ眺め
ちっぽけな魂だけを
ビリジアンに落ち窪んでいく
森から追い出そうとする
夕方、夕方、
背中をおおきな掌で
どおうっと
押すもの。凄まじいもの。
――――
『天狗』より


――――
生物の構成を覗き込むような
雲の模様は
わたしの認識できる
ものの縮尺をずっと小さくしてしまって
二相にわかたれた世界の間に
光のたおやかな境界をはる
すさまじい
放射の音楽だ
巨大な横顔はけして
地上のほうに目をくれない
――――
『巨眼』より全文引用


 幽霊の気配を描いた作品も印象に残ります。決して怖いわけではないのですが、どこか置き去りにされたような心もとない感触。


――――
影に
どしん、どしん、と響くものがある
わたしの命を
突然取るもの
それを正しい瞬間に
変えるもの
――――
『七月三十日』より


――――
今朝方の雨は
こめかみを刺し
庭の濡れた草の匂いに
タイの山奥の民家や
またドイツの温泉宿の
古びた窓辺が
ここに現れるが
少し線香の香りがして
やがて途絶える
――――
『仲春暗影』より


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