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『Down Beat 10号』(柴田千晶:発行者代表) [読書(小説・詩)]

――――
再放送の二時間ドラマをみながら父ちゃんは「お前犯人
わかるか?父ちゃん知っとんで。こいつや」言ってから
                      寝る。
檻のなかの薄い布団の下でタヌキはカッパに変身したの
です。引っ張ってもちぎれない手首のバーコードが証拠
です。
レンタルの病衣には橙の細いライン。サイドテーブルの
乾いた蜜柑の色より濃く、山下公園の救命浮輪の色より
                      薄い。
長身の看護士さんは、父ちゃんの毛のない手首と点滴棒
にぶら下げた薄茶の袋のバーコードをスキャン「夕食っ
す」
四角い座面の三辺からはみでていた尻しびれてかゆい。
――――
『307』(谷口鳥子)より


 詩誌『Down Beat』の10号を紹介いたします。お問い合わせは、次のフェイスブックページまで。

  詩誌Down Beat
  https://www.facebook.com/DBPoets


Down Beat 10号
[目次]

『電気も音を立ててなくことがある』(今鹿仙)
『港』(小川三郎)
『反町公園』『もし』(金井雄二)
『シミ』(柴田千晶)
『307』『867』(谷口鳥子)
『へちま』『朝比奈越え』(廿楽順治)
『円應寺』(徳広康代)
『暖海』『再会』(中島悦子)


――――
遠い記憶を
たぐろうとするときはたいてい
魚の名前を思い出すような気持ちになる。
波の合間を覗き込めばたいてい
死んだ人の気配がする。

港の周辺に立っている
ただ四角いだけの白い建物。
その中身にひどく愛着を感じる。
なくてはならない
大事なものがそこにはあると
わかっているくせに私はまだ
釣り糸を垂らしている。

またおじさんがやってきて
魚の名前を告げていった。
釣れた魚は
籠からいなくなっていた。
沖合では
船が何隻も停泊している。
一生そこにいるつもりでいる。
――――
『港』(小川三郎)より


――――
玄関脇の
小さな台所の窓に
蛇の影が映っていて
蛇は
磨りガラスを
ゆるゆると這い上がり
二階へ上ってゆくようで
蛇は
男の化身
などとは思わなかったけれど
蛇は
なぜ空っぽの二階へ
登っていったのだろうか
如月荘202号室の
畳に残る
人のかたちをした
黒いシミ
あたしもいつか
黒いシミになって
小さな台所の窓から
覗かれて
発見されたい
――――
『シミ』(柴田千晶)より


――――
長い間空家だったから、縁側には砂が溜まっている。掃除が行き届いていないと父が不機嫌になるからと言いながら、姉と雑巾がけをしていた。調理台には、鱈のぶつ切りとだだみ、板こんにゃく。母が夕飯にしようと、もう用意していたのかと思う。でも、まだ障子の破れや玄関の鍵がないことが気になっている。
――――
『再会』(中島悦子)より全文引用


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