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『人生を歩け!』(町田康、いしいしんじ) [読書(随筆)]

 シリーズ“町田康を読む!”第20回。

 町田康の小説と随筆を出版順に読んでゆくシリーズ。今回は、いしいしんじさんとの対談というか雑談を収録した随筆集。単行本出版は2006年3月です。

 タイトルからも分かる通り、『人生を救え!』の続編です。いしいしんじ、町田康、両名がそれぞれ若い頃に住んでいた街を一緒に歩き、互いの人生を語るというような内容。

 町田さんが、自分がかつて住んでいた成増のことを「外道たちの街」(単行本p.61)と言い放ったり、「そこの情けない質屋で、妻の誕生日の指輪を買ったことがあります」(単行本p.63)などと思い出を語ったり、いしいさんが「レッサーパンダ事件については、二千件の通報があったらしいんですけど、なんと、二千件のうち八百件は僕についての通報だった」(単行本p.126)と凄いことを告白したり、けっこうネタで楽しめます。

 しかしながら、町田康のいわゆる“語り”の魅力はあの文体あってのことなので、話したことをそのまま文字に起こしても「けっこう話のおもろいおっさん」程度の会話にしかならないというのが、残念というか、納得というか。

 というわけで、語り下ろしのライブ感にあふれた一冊で、熱心なファンにとっては両名の青春時代について知ることが出来るだけで嬉しいでしょうが、やはり文筆作品として書かれたエッセイほどの満足感は得られませんでした。


タグ:町田康
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『蟹は試してみなきゃいけない』(バリントン・J・ベイリー) [読書(SF)]

 SFマガジン2009年5月号は、バリントン・J・ベイリーとトマス・M・ディッシュという昨年亡くなった二人の追悼特集。どちらの特集を先に読むかでSFファンとしての立ち位置が決まる、というわけではないと思いますが、私は迷わずベイリー追悼特集から読み始めてしまいました。色々とすいません。

 さて、バカSFの巨匠、バリントン・J・ベイリー氏の本邦初訳短編が3作も収録されているのは至福という他はなく。

 まずは『邪悪の種子』。不老不死の秘密を奪うべく、地球を訪れた異星人を追いかけ回すマッド外科医の話。解剖させろと叫びながらあらゆる試練を乗り越えメス振りかざして追っかける外科医、ひたすら逃げる異星人、とうとう人類絶滅したその後も、続くよ続く大追跡劇。そしてその結末は・・・。

 いやー、巻頭からむっちゃトバしてます。あまりのバカっぷりにほれぼれ。

 続いて『神銃(ゴッド・ガン)』。タイトルはベイリーの代表作『禅銃(ゼン・ガン)』を連想させますが、内容は全然関係ありません。ある天才科学者が、光の速度をマイナスにすることで、時間軸上を過去に向かって進むレーザーを発明します。出力を最大にして発射したレーザービームは、天地創造の瞬間まで時をさかのぼり、ついに「光あれ!」と叫んだ神に見事に命中。神は死んだ・・・。

 いかにもベイリーらしい作品。その発想のアホらしさに感動を覚えます。

 ただ、どちらの作品も、不老不死は業罰に他ならない、とか、神がなければ生きる喜びも失われてしまう、とか、そういうありきたりなオチなのが残念。良識的というか、キリスト教的な倫理観から一歩も踏み出さないというか。一瞬、ベイリーは自分の書いているものが正真正銘のバカSFだと気づいていなかったのではないか、という不安さえ覚えます。

 最後は『蟹は試してみなきゃいけない』。昔のアメリカ青春映画みたいな話。仲間とつるんでは酒を飲み、頭の中は女の子とヤルことばかり、仲間うちで「誰がどこまでいった」とか、「女の子のアソコはどうなっているのか」とか、そんな話ばかりしている若者たちの無軌道青春グラフィティ。ただし、みんな蟹ですが。

 蟹たちの青春を大真面目に書いた怪作。一生のうちに交尾ができるのは千匹に三匹か四匹、ほとんどの雄は、雌に求愛し続けた挙げ句に童貞のまま生涯を終える運命、それでも、蟹は試してみなきゃいけない。

 蟹の生殖プロセスが生み出す悲喜劇がオカシイやらもの悲しいやら。ここまでアホな話が男の共感呼びまくり、何と英国SF作家協会賞を受賞。ベイリー晩年の代表作としてファンの間で熱烈に愛されているというんだから、SFファン(主に男性)は哀しい色やね。

 というわけで、期待を裏切らないベイリーでありました。素敵。


タグ:SFマガジン
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『motoshi chikamori ++ kyoko kunoh』(plaplax プラプラックス) [映像(映画・ドキュメンタリー)]

 先日観た珍しいキノコ舞踏団公演『The Rainy Table』は、背景スクリーンに投影される映像のセンス、さらに舞台上のダンサーと映像上のダンサーのインターラクションなど、アート作品としても見応えがありました。

 このメディアアートを制作したplaplaxというアートユニットの作品カタログを会場で購入したのですが、そこに付属していたDVDを再生してみました。

 plaplaxおよびその前身であるminim++の主な作品の、それぞれごく短い(数分程度の)紹介映像が多数収録されています。作品の多くがインターラクティブアートなので、美術展などで展示されている作品に鑑賞者が「作用」して「反応」を引き起こす様をビデオ撮影したものが大半。

 机の上に雑然と並んでいる文房具。鑑賞者が手を触れると、その影が変形したり動物の姿になったり。あるいは並んだ柱のそばを通ると、列柱に巨大な魚の影が現れてゆうゆうと泳いでゆく。自分の影がゆっくりと変形して他の生き物になる。地面を歩くと様々な動物の足跡が残り、そこを他の人が踏むと、その動物が現れて走り去ってゆく、などなど。

 まるで絵本のように楽しく、ちょっと不気味な絵や影が、鑑賞者の働きかけに応じて現れたり消えたり動いたりする様は、心浮き立つような、それでいて奇妙な懐かしさも感じさせてくれます。

 観ていると、実際に触って色々と試したくなる作品ばかり。まるで、不思議なおもちゃ箱のようです。

 また、ダンサー/振付家である小川麻子さんとのコラボレーション作品の舞台映像も短時間ながら収録されており、コンテンポラリーダンスの鑑賞者としても要注目です。


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『あらかじめ』(小野寺修二) [舞台(コンテンポラリーダンス)]

 小野寺修二ひきいるカンパニーデラシネラの新作公演を観るために、夫婦で青山円形劇場まで行ってきました。

 円形劇場ということで、周囲360度ぐるりと観客に取り巻かれている舞台でのマイム作品です。小野寺さんを含む出演者5名が、椅子や机、鞄、帽子、各種おもちゃ(バス、飛行機、犬など)を存分に駆使して、夢ともうつつともつかない奇妙な世界を作り上げてくれます。

 特に明確なストーリーはなく、安っぽいドラマにありがちな場面を散りばめたようなマイム作品。けっこうセリフもあり、ごく普通の寸劇やダンスっぽい動きも色々と含まれています。

 出演者たちが完璧に調整された機械のように見事にシンクロして動き回る様は観ていて心地よく、次から次へと仕掛けのあるマイムが繰り広げられ、笑いのツボも的確に押してきて、とにかく退屈する暇がありません。

 1年以上前に『空白に落ちた男』を観たっきり小野寺修二さんの作品はいくつか見逃してしまったのですが、今日の舞台を観て惜しくなってきました。ちゃんと観ておけばよかった。これからはきちんと追いかけようと思います。


『あらかじめ』

作・演出 小野寺修二(カンパニーデラシネラ)
出演: 有川マコト、佐藤亮介、藤田桃子、宮下今日子、小野寺修二


タグ:小野寺修二
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『another BATIK ~バビロンの丘にいく~』(黒田育世、BATIK、笠井叡) [舞台(コンテンポラリーダンス)]

 黒田育世ひきいるコンテンポラリーダンスカンパニー「BATIK」のひさしぶりの新作公演を観るために、夫婦で世田谷パブリックシアターに行ってきました。

 タイトルに"another"とある通り、今回の公演は舞踏家・笠井叡さんに振付を依頼したとのことで、黒田育世さん以外(しかも男性)が振り付けたBATIKというのがどのような感じになるのか予想がつかず、好奇心がうずきます。さらに、何と黒田育世さんが『ボレロ』を踊るというのも巷で大いに話題になっており、これも期待大。

 で、観たわけですが、これが期待をはるかに超える凄まじい公演でした。魂を揺さぶられるというか、凶暴なパワーで胸を叩き潰されるような、圧倒的な感動です。途中で頭がくらくらして酸欠状態になり、終演後に立ち上がろうとして膝がガクガクゆれるという、ほとんど臨死体験したような気分。

 シューベルトの「未完成交響曲」を使い、激しい衝動に身体が砕け散るような白いダンス「BATIK バビロン」と、BATIKメンバーの強烈な群舞を背景に黒田育世さんが神がかり的に踊ってのける黒いダンス「ボレロ」。この2本柱を、松本じろ&スカンクの呪術的音楽にのせて(たぶん)死と誕生を暴力的に描いてみせた、「バースデーI」、「バースデーII」、「バースデーIII」がつなぐという構成です。

 あまりと言えばあまりに高密度な作品で、一瞬たりとも気を抜くことが出来ません。ダンサーが死力をつくして踊り、観客もぎりぎりの集中力を振り絞って観るという、命がけの宗教儀式のようなテンション。

 会場で売っていた『ペンダントイヴ』映画版のDVDを購入して帰宅しましたが、こうして思い出しながら日記を書いていても、手足に震えが走ります。今、ちょっと冷静さを欠いてるかも知れませんが、今回の作品は『ペンダントイヴ』をも超える大傑作だと言い切ってしまいたい。

『another BATIK ~バビロンの丘にいく~』
構成・演出・振付: 笠井叡
出演: BATIK
黒田育世、伊佐千明、植木美奈子、大江麻美子、梶本はるか、
田中美沙子、寺西理恵、中津留絢香、西田弥生、矢嶋久美子


タグ:黒田育世
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