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『どうせダンスなんか観ないんだろ!? -激録コンテンポラリー・ダンス』(乗越たかお) [読書(随筆)]

 『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイド HYPER』で有名な舞踊評論家、乗越たかおさんの新刊が出ました。雑誌『シアターガイド』、『DDD』に連載されたダンス関連の文章を集めて編集した一冊です。単行本出版は2009年8月。

 タイトルからしてむっちゃ挑発的ですが、帯の「そこにダンスがある限り、どこでも乗越(ヤツ)はやってくる!」というアオリも素晴らしい。

 内容はこんな感じで。

 最近のコンテンポラリーダンス公演評。注目すべきダンサーの活動紹介。海外各地(イスラエル、韓国、ニューヨーク、イタリア、オランダなどなど)に行って観てやってきたことの臨場感あふれるレポート。ダンサーをとりまく色々な問題について。そして日本ダンス界の状況や舞踊評論家の方々やコンクールのあり方など様々なテーマについての問題提起(著者曰く“マイルドにケンカを売ってはどんどん娑婆を狭くしていく”)。とにかく幅広い。

 自分で観たことしか書かないという姿勢を貫いていて、変に抽象的な言葉遊びや小難しい理屈は一切なし。とにかく舞台を観ろ、話はそれからだ。誰を観ればいいかって、それはオレが教えてやる。その気合と責任感は尋常ではなく、当事者意識バリバリ。

 レポートがそのまま檄文になだれ込んだりして、そのダンスへの愛と情熱がほとばしり過ぎた文章は読んでいて火傷しそうなアツさ。興奮します。とにかく今コンテンポラリーダンス公演を観ないとマズい、取り返しがつかない、いても立ってもいられない気分に駆られます。

 というわけで、コンテンポラリーダンス関係者、観客はもちろんのこと、「最近、劇場でダンス公演が話題になることが多いので気にはなっているけど、何を観たらいいのか全然分からない」と困惑している演劇好きの方々、あるいは「ローザンヌ国際バレエコンクールの映像を観ると、“コンテンポラリー部門”とかいってバレエとは思えないヘンテコなわけ分からないダンスを踊らされていて出場者が可哀相だと思いました」というクラシックバレエな方々、『テレプシコーラ(舞姫)』(山岸凉子)の六花ちゃんがどこに行こうとしているのか知りたい方々、とにかく黙って『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイド HYPER』と一緒に本書を購入して読んで下さい。読んだら、もう観るしかありません。というか観ましょう。コンテンポラリーダンスを。


タグ:乗越たかお
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『スーパーバレエレッスン ロイヤル・バレエの精華 吉田都(1)』 [映像(バレエ)]

 パリ・オペラ座のエトワール、マニュエル・ルグリさんが講師をつとめたことで大いに話題となった『NHK教育 スーパーバレエレッスン』終了からニ年。その第二弾がついに放映開始されました。

 今シリーズでは、何と英国ロイヤルバレエ団の元プリンシパル、吉田都さんが講師ということで、もう我が家は大騒ぎに。とりあえず昨日放映の第一回を録画しておいて、観てみました。

 わずか25分の短い番組ですが、本編であるレッスンシーンに加えて、英国ロイヤルバレエ団と吉田都さんの紹介、吉田さん本人および恩師であるピーター・ライト卿(バーミンガム・ロイヤル・バレエ元芸術監督)へのインタビュー、吉田都さんによる模範演技、など盛りだくさんの内容が詰め込まれており、けっこう充実していたと思います。

 今回のテーマは『ジゼル』第1幕のバリエーション。テクニックより表現力が重要になる演目で、吉田さんのレッスンもひたすら「呼吸に気をつけて」、「棒読み風に踊らないで強弱をきちんと付けて」、「身体の動きでジゼルの喜びを見せて」といった感じの表現に対する指導でした。厳しい。

 短い番組時間に内容を詰め込んだせいか、レッスンシーンが短めに編集されていたのはちょっと残念ですが、吉田都さんによる模範演技は当然ながら素晴らしく、ああ、いいもん見せてもらったなあ、と感激。

 これから毎週、金曜日が楽しみです。

[番組情報]

放映時間: 2009年8月28日(金) 12:00~12:25
放映チャネル: NHKデジタル教育3
出演:
 吉田都(講師)、茂田絵美子(生徒)、蛭崎あゆみ(ピアノ)、ピーター・ライト(インタビュー)


タグ:吉田都
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共通テーマ:演劇

チア [その他]

 我が家で飼っていたモルモット、チア(♀)が本日お亡くなりになりました。享年6歳でした。

 昨年死去したタオズと一緒に我が家にやってきたイングリッシュ種モルモットで、愛嬌のある三毛でした。この夏の暑さをしのぐのに体力を使い果たしたのか、ようやく気温も下がってこれから楽な季節がくるという矢先に、敷草の上で眠るように逝ってしまいました。苦しんだ様子はありませんでした。

 もともと腎臓にトラブルを抱えており、何度も体調を崩したので、長生きは無理かと思っていました。この一年くらい体調も良く、食欲も旺盛だったので、あと数年は生きてくれるだろうと期待していたのですが。

 タオズのような気品には恵まれていませんでしたが、何につけ気楽で自分勝手に生きたモルモットでした。他のモルモットも、チンチラも、猫も、私たち人間でさえ、取るに足らない存在として軽んじていたようです。六年半の歳月を割と楽しく過ごしたのではないかと今はそう思い心を慰めています。

 これで我が家の齧歯類はいなくなりました。これからは、人と猫だけで生きてゆきます。


タグ:モルモット
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共通テーマ:ペット

『クリエイター』(オレグ・オフチンニコフ) [読書(SF)]

 SFマガジン2009年10月号はJ・G・バラード追悼特集になると思い込んでいたのですが、購入してみると神林長平・谷甲州・野阿梓の特集号になっていて、えええっ、この人たちも亡くなってたんかいっ、と一瞬マジにビビってしまいました。不謹慎な話ですいません。ちなみにバラード追悼特集は来月号だそうです。

 で、そのかげに隠れるように、ひっそりと「ロシアSF小特集」なる地味な企画も掲載されているんですが、実はこちらが予想外に面白い。ロシアにおける短篇SFの概況にざっと目を通した後、訳出された2作を読んでみたのですが、どちらも異色短篇というか、その不条理でありながら妙にリアルで迫力ある暗さが印象的でした。

 『クリエイター』(オレグ・オフチンニコフ)は、牢獄のような殺風景なアパートの一室に閉じ込められ、ドラッグ漬けにされ、禁断症状に苦しみながら、ひたすら“クリエイティブな仕事”に取り組む青年の話。そのクリエイティブな仕事というのが、「交通安全標語のコピーライター」という実にくだらないもの。

 風刺色が強い設定なんですが、文体も雰囲気も大真面目で、主人公と作者の名前が同じであることから私小説のような雰囲気も出ていて、一種異様な迫力に打たれます。

 社会主義と官僚機構による悪夢から、資本主義とグローバル企業による悪夢へ。とにかく人間性を徹底的にすりつぶしてゆく現実には何の変わりもないようです。実質的に選択肢など与えられてないのに、自己責任で現状を選んだことにされているというのも既視感。ただ、作中に登場するドラッグの名前が<ゲーナ>と<チェブラーシカ>というのはロシアっぽいです。

 他の一篇は『祝宴』(アンドレイ・サロマトフ)で、週末に自宅でホームパーティを開く男の姿を通じて、孤独というテーマをえぐる作品。いかにも英米の古い異色短篇という感じの変な設定にも関わらず、雰囲気は哲学的というか、ロシア文学の香りすら漂います。

 最後に置かれたちょっとしたオチの効果がお見事で、読者に嫌な想像をさせることで一気に不条理SFへと拡大。何とも言えない余韻を残します。

 どちらもあまりSFらしくない、むしろ疎外や孤独といった伝統的な主題を扱った風刺小説の感が強い作品ですが、その変な真面目さ深刻さが印象的でした。こういうのがSFとして書かれているかと思うと、じゃ今のロシア文学ってどうなっているのかしらん。

 特集の他には、現代日本のネット文化をテーマにした『雨ふりマージ 連作シリーズ<あたらしいもの>』(新城アズマ)がちょっと気になりました。

 現実の人間が「架空人」(まあネット内いじられキャラですね)として存在する権利が法的に認められる、という設定、およびタグ([あとで読む]、[これはひどい]、[むしろ萌え]といったアレのアレ)がびっしり張り付けられたエントリという形式は面白いのですが、どうも話がベタ過ぎて、設定がうまく活かされてないような。新連載とのことなので、今後に期待したいと思います。


タグ:SFマガジン
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『建築する動物たち -ビーバーの水上邸宅からシロアリの超高層ビルまで』(マイク・ハンセル) [読書(サイエンス)]

 ビーバーのダム、シロアリの巨大塚、クモの巣、鳥のバワー(あずまや)。人間以外の動物が作り上げる建築物について、その最新の研究成果を教えてくれる一冊です。単行本出版は2009年8月。

 単行本p.79に掲載されている見事な「工芸品」の写真。陶器の破片を巧みに組み合わせて製作された美しい壺のようなものが、実はアメーバが作る住居殻だというのには驚かされます。

 あるいは生きたクモに卵を植えつける寄生バチ。体内で孵化した幼虫は、クモを操って、通常の巣ではなく、蛹を保護するための特別な構造物を作らせる。クモが体液を吸い尽くされ干からびて死ぬと、幼虫はクモが遺した構造物に守られながら蛹となり、やがて蜂となって飛び去ってゆく。

 こういった例を見ると、その不思議さに首をひねらざるを得ません。脳どころか神経系も感覚器官も何もないアメーバが、複雑な形体をした美しい殻をどうやって作り上げるのか。クモの神経系に直接アクセスできない寄生生物が、どのようにして建築手順を指示しているのか。

 高さ数メートルにおよぶ巨大なアリ塚。換気システムや温度湿度調整システム、子育てや菌類栽培などの特別室を含む数百万匹が住む超高層ビル。全体設計図も現場監督もなしに、知能も記憶も持たない多数のシロアリが共同作業でこれだけのものを作り上げる秘密はどこにあるのか。

 本書は、こういった「動物建築学」の謎について議論を積み重ねてゆきます。建造物と環境との相互作用、知能も記憶も全体像把握もいらない建築原理、ハチやアリなど社会性昆虫における共同作業の仕組み。

 さらには、建築様式に関する遺伝と自然淘汰の影響を論じ、リチャード・ドーキンスの『延長された表現型』(私見ですが、これまでに翻訳されたドーキンスの著作のうち最も興味深い一冊)をベースに議論を進めてゆき、ついには道具の使用と知能の発達、性選択と芸術の起源、といったところまで話題が広がります。

 次々と紹介される動物建築学のエピソードがやたらと面白く、例えばアリが巣穴の総面積を“計測”するのに「ビュフォンの針」の原理(18世紀に提唱された数学の定理)を用いている、といった話には思わず引き込まれてしまいます。

 専門書に近いので文体はそれなりに硬く、議論の進め方も慎重で、しばしば論を補強するための脇道にそれたりするため、ときにまどろっこしく感じられる箇所もあります。話題を広げすぎてやや散漫になっているという印象も。

 しかし、前述したように動物建築学のエピソードの数々は実に興味深く、最後まで知的興奮と共に読み進めることが出来ます。生物学、特にエソロジー(動物行動学)に興味がある方にお勧めします。


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