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『モグラハンドブック』(飯島正広、土屋公幸) [読書(サイエンス)]

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大陸からアズマモグラが300万年前に渡来し、その後コウベモグラが150万年前に渡来した。先住のアズマモグラを大型で力の強いコウベモグラが駆逐東進して、北海道をのぞく東日本にアズマモグラが、西日本にはコウベモグラが主として生息し、太平洋側では富士・箱根付近で接して分布している。(中略)九州ではかつて生息していたアズマモグラは、すでに絶滅してしまった。
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単行本p.3

 日本に生息しているモグラの仲間、全21種について、知られている情報を豊富なカラー写真とともに掲載したカラー図鑑。単行本(文一総合出版)出版は、2015年7月です。

 モグラというと何やら愛嬌のある小型哺乳類のイメージで、昔から漫画やゲームにキャラクターとして登場することが多いこともあって、馴染み深い印象を受けます。しかし、本書を読むと、実はこんなに知らないことばかりだったのか、と驚かされます。


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 従来、アフリカ・アメリカ・ユーラシアに広く分布する原始的な特徴をもつ小型の哺乳類を「食虫目(モグラ目)」としていた。しかし、それらは最近の分子遺伝学的な研究の結果、二つの大きなグループに再分類された。アフリカのキンモグラやテンレック類は、ユーラシアやアメリカのトガリネズミやジネズミ、モグラ類とはまったく起源が別で、生息環境が似ているために形態が似ただけで、実はゾウなどに近縁であることが明らかになった。
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単行本p.2


 アフリカのモグラは、モグラじゃなくて超小型の象。これ、テストに出るので、覚えておきましょう。

 本書はそんな知られざるモグラの仲間のカラー図鑑です。持ち歩いてフィールドで種の同定に用いるための実用書なので、それぞれの種について、各種の情報はもとより、全体写真、身体各部位の拡大写真、頭骨写真、生息環境の写真などが、1種につき見開き2ページにぎっしり詰め込んであります。

 行動に歴史的経緯など、豆知識的な解説も充実しています。


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キャラバン行動:トガリネズミ類は、親のお尻に子が食いつき、その子のお尻に別の子が食いつく。子たち全員が同様に食いついて、親が進むと連られて子供が一緒に列になって進む行動。
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単行本p.6

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(トウキョウトガリネズミは)東京に生息しているわけではないが、発見者がラベルに記載する際に ezo を edo と書き間違えたためトウキョウの名がついた。
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単行本p.17


 しかし、本書で最も面白いのは、最新の研究成果や研究テーマについて紹介してくれるパートでしょう。キノコ類の研究者がモグラ研究者になってしまった「モグラとキノコの共生」という魅力的な話題から始まって、モグラに関する様々な「謎」が提示されます。


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モグラはまだ謎の多い動物だ。モグラの巣は広葉樹の落葉数百枚から約1000枚でつくられているが、その巣と住者のモグラを人為的に取り除くと、再び同じ場所に別のモグラが巣を再構築することが相良氏の研究によりわかっている。しかしなぜモグラは同じ場所にこだわるのか?
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単行本p.63

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今私は目が見えないと書いたのだが目がないとは書かなかった。そればかりか実は不思議なことがわかったのである。産まれたばかりのモグラの幼獣の眼は皮膜がかぶって眼は開眼していない。しかし飼育した成獣の写真を撮ってみると、モグラは坑道の中で眼を間違いなく見開いているのである。
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単行本p.65


 意外に基本的なことが分かっていないモグラ。内視鏡カメラによるトンナル内の行動観察、多摩動物公園にあるモグラ観察施設「モグラのいえ」の紹介(「こんなすばらしい展示施設はほかでは見たことがない」(単行本p.67)とのこと)、などコンパクトな一冊にモグラ情報がぎっしり詰め込んであります。


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