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『巨大ブラックホールの謎 宇宙最大の「時空の穴」に迫る』(本間希樹) [読書(サイエンス)]

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 著者らは現在この本の執筆中も、電波望遠鏡で巨大ブラックホールを直接写真に収めようという国際プロジェクトを推進中です。世界中のミリ波サブミリ波帯の電波望遠鏡を束ねて「視力300万」という人類史上最高の性能を達成する、EHTプロジェクトです。本書のしめくくりでは、目前にせまったEHTによる観測と、それによって期待される「巨大ブラックホールの直接撮像」についても解説します。
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新書版p.5


 いよいよ目前に迫った、巨大ブラックホールの直接撮像。国際プロジェクトEHTに参加している著者が、200年に渡る巨大ブラックホール研究の歴史、現在までに知られていること、そして残された謎について、一般向けに解説する一冊。新書版(講談社)出版は2017年4月、Kindle版配信は2017年4月です。


東京新聞 2017年4月11日夕刊記事
「ブラックホール撮影 世界の望遠鏡が協力 プロジェクト進行中」より
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 天の川銀河の中心にあると考えられている超巨大ブラックホールを撮影しようと世界の電波望遠鏡で一斉に観測する国際共同プロジェクトが今月一日から十四日までの日程で行われている。日本の国立天文台などが運営する南米チリのアルマ望遠鏡のほか、米国や欧州、南極の望遠鏡が参加することで、地球サイズの仮想望遠鏡を形作り、見ることが不可能とされてきたブラックホールの輪郭を浮かび上がらせる計画だ。
(中略)
 チームは、重力の影響でブラックホールの周囲を回転する高温のガスが発する電波を観測する計画。この結果、光や電波を出さないブラックホールが黒い穴として見える可能性がある。本間希樹(まれき)・国立天文台教授(電波天文学)は「ブラックホールや周囲の現象の解明につながる」と期待している。

 得られたデータを数カ月かけて解析して組み合わせ、早ければ夏ごろに画像を公開できる見込みだ。
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201704/CK2017041102000240.html


 巨大ブラックホールを直接撮影する、早ければこの夏に画像が公開される、という新聞記事を読んでぶったまげました。まじですか。

 というわけで、新聞記事にも登場した本間希樹先生の解説書を読んでみました。基礎知識から始まって、巨大ブラックホール直接撮像プロジェクトに至るまでの流れを分かりやすく解説してくれる本です。全体は10章から構成されています。


「第1章 ブラックホールとは何か?」
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シュバルツシルト半径は厳密には相対性理論を使って求めるべきものですが、本書での説明では相対性理論を使わずに、あくまでニュートン力学の範囲内で物事を考えています。それにもかかわらず、上で求めたブラックホールの半径は、じつは相対性理論を使って求めた場合とぴったり同じになります。これはある意味偶然なのですが、ここではそれ以上深く追求せず、ニュートン力学的な考察でよしとしておきます。
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新書版p.25

 ブラックホールとは何か、それはどのようにして誕生するのか。まずは基本となる知識をおさらいします。


「第2章 銀河の中心に潜む巨大な穴」
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 このようにブラックホールは、本体に加えて降着円盤とジェットの3つの成分がセットになっている、というのが現代の描像です。ところが、じつはこの3つの主要な成分のうち、ちゃんと撮像(画像の撮影)によって観測されているのはジェットだけです。(中略)ジェット以外の降着円盤とブラックホールはまだ分解して観測された例はなく、現代天文学でも重要なフロンティアとして残されています。
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新書版p.61

 銀河の中心核に存在すると考えられているブラックホール。太陽の100万倍から100億倍という途方もない質量、驚異のエネルギー解放効率、何もかも桁外れの天体「巨大ブラックホール」の特性にせまります。


「第3章 200年前の驚くべき予言」
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じつはブラックホールの可能性が科学的に初めて指摘されたのは、今から200年以上も前のことです。ブラックホール研究の歴史は意外に長いことに驚かれる読者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。(中略)ミッチェルとラプラスは単にブラックホールの提唱者であるだけでなく、「巨大ブラックホールを初めて考えた科学者」でもあるのです。
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新書版p.64、71

 意外なことに200年前から存在の可能性が指摘されていた巨大ブラックホール。一般相対性理論に基づく現代的ブラックホール理解に至るまでの研究の歴史を概説します。


「第4章 巨大ブラックホール発見前夜」
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この数行の報告が、巨大ブラックホールに関連した「ジェット」を初めて直接的に捉えた記念碑的なものといえます。
 なお、このM87という天体は、本書の主題である巨大ブラックホールの研究において、現在注目度の最も高い天体の一つです。現在も頻繁にいろいろな波長の望遠鏡で観測されますし、本書の中でもこれからたびたび登場します。そして、うまくいけば、近い将来ブラックホールを「黒い穴」として初めて撮影できるのも、この天体かもしれません。このような巨大ブラックホール研究の重要天体であるM87の研究の原点も、カーチスの1918年の論文にあります。
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新書版p.99

 観測技術の発展により相次ぐ新発見。そのなかで、後に巨大ブラックホールとむすびついて理解されることになる活動銀河中心核と宇宙ジェットの発見について解説します。


「第5章 新しい目で宇宙を見るーー電波天文学の誕生」
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 観測可能な宇宙が一挙に広がって非常に遠い天体が見つかったことにより、これらの天体が途方もない大きさのエネルギーを放射していることが判明します。(中略)3C273の例に当てはめると、3C273はじつに太陽の2兆倍(!)の明るさを持つことになります。3C273は「準恒星状」の天体ですから、図2-5にあるように「点」にしか見えない小さな天体です。そのような狭い領域から、太陽2兆個分という巨大な銀河にも匹敵する莫大なエネルギーが出ているのです。
(中略)
そこでこのような天体の正体として有力な候補となってくるのが、エネルギーを効果的に解放することができる巨大ブラックホールです。宇宙からやってくる電波が発見されてからわずか30年、電波天文学の進歩とともに巨大ブラックホールの存在が現実のものとなっていきます。
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新書版p.138、139

 電波天文学の誕生、電波干渉計の原理、そして後に巨大ブラックホールものものと判明することになるクェーサーの発見にいたる流れを解説します。


「第6章 ブラックホールの三種の神器」
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 このように、クェーサーのエネルギーを説明するのにブラックホールが必要と考えられるようになり、またX線の観測での恒星質量のブラックホールの発見や、VLBIによるジェットの超光速運動の発見などと合わせて、活動銀河中心核の正体がブラックホールであるという説が確立されていきました。
 さらにこれと並行し、理論的なブラックホールの研究も進み、巨大ブラックホールの基本的な描像が確立されていきます。中心には巨大ブラックホールが存在し、そこへ降着するガスが降着円盤を形成しつつ莫大なエネルギーを放射するとともに、ガスの一部がジェットとしてそこから飛び出していく、というのが基本的な描像です。
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新書版p.169

 ついに明らかになったクェーサーの正体。そしてX線天文学が明らかにした恒星規模のブラックホールの存在。活動銀河中心核に存在する巨大ブラックホールの基本的な描像が確立されていくまでのプロセスを解説します。


「第7章 宇宙は巨大ブラックホールの動物園」
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1970年代中頃までに巨大ブラックホールの概念が基本的に確立し、活動銀河中心核は巨大ブラックホールとその周囲の降着円盤、そしてジェットという3つの成分からなるシステムとして考えられるようになりました。わずか3つの成分ですし、そこで行われていることといえば、重力によってガスを集めてブラックホールに落とすだけですから、きわめて単純なシステムということができます。ところが多くの活動銀河中心核を観測していくと、非常に多種多様な性質を持っていることが明らかになります。
(中略)
じつは、活動銀河中心核のこのような多様性を比較的簡単に説明するシナリオが提唱されています。活動銀河中心核の「統一モデル」というものです。
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新書版p.174、

 活動銀河中心核の多様性を説明する「統一モデル」の確立、そして活動性を示さない銀河(私たちの天の川銀河を含む)の中心部に存在する「隠れた巨大ブラックホール」の発見。巨大ブラックホールが観測の対象となるまでの動きを解説します。


「第8章 巨大ブラックホールを探せ!」
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ブラックホール存在のより確からしい証拠を得るためには、ブラックホールにより近いところで非常に大きな速度を測定することが鍵なのです。1990年代に入ってこれが実現した画期的なケースが、NGC4258という近傍の銀河にある活動銀河中心核と、私たちの銀河系の中心にある、いて座Aスターになります。速度を測る測定の原理は同じですが、前者はVLBIの手法を用いて、また後者は赤外線の補償光学(大気のゆらぎを打ち消す手法)の技術を用いて、それを実現しています。
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新書版p.197

 質量測定、降着円盤の回転速度の測定。銀河中心核に巨大ブラックホールが存在する証拠をつかむために行われてきた観測について解説します。


「第9章 進む理解と深まる謎」
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 ここまで見てきたように、巨大ブラックホールの存在はほぼ確実と考えられる一方で、現在でもまだまだ多くの謎が残されています。(中略)これらの謎がいまだ未解決で残っている最大の理由は、何よりも巨大ブラックホールそのものがとても小さくて観測できなかったからです。しかし、今後数年以内に巨大ブラックホールの直接撮像が実現する可能性が高まってきており、それが実現するとこれらの謎の解明も劇的に進むことでしょう。
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新書版p.232

 巨大ブラックホールの起源、中間質量ブラックホールの存在、連星ブラックホール合体、降着円盤からガスが供給されるメカニズムの詳細、ジェットの加速および絞り込みメカニズム、そして巨大ブラックホールの直接的観測。いまだ残されている謎と課題についてまとめます。


「第10 章 いよいよ見える巨大ブラックホール」
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 このようなミリ波サブミリ波帯での地球規模のVLBI観測網の実現を目指すのが、EHT(Event Horizon Telescope)と呼ばれる国際プロジェクトです。"Event Horizon"とは「事象の地平線」を意味し、これはブラックホールが「事象の地平線」で覆われていることにちなんだ名前です。文字どおりブラックホールを事象の地平線のスケール(シュバルツシルト半径)で分解し、本当に「黒い穴」であるかどうかを直接に証明することを目指しています。
(中略)
 日本でも、著者ら国立天文台の研究者を中心とするグループが、すでに10年近くこの国際プロジェクトで活動してきています。
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新書版p.243、246

 「月面に置いた一円玉を地球から撮影するのに匹敵する」という巨大ブラックホールの直接撮像。国際プロジェクトEHTとそこに用いられる観測技術について解説します。


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