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『せつない動物図鑑』(ブルック・バーカー、服部京子:翻訳) [読書(サイエンス)]

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 これは、世界でいちばん孤独なクジラの話。
 1989年、北太平洋でひとりぼっちで歌う、迷子のクジラの音声が観測されました。かれがひとりになった原因は、オンチだったこと。クジラは歌でなかまと会話をするのですが、かれの声は、ほかのクジラよりもずっと高かったのです。いくら歌っても、ほかのクジラは耳をかしません。
 おまけに、オンチのクジラはほかのクジラが通らないルートに迷いこんでおり、ぐうぜんなかまに出会うチャンスもないのです。かれの声はたびたび確認されているものの、そのすがたはまだ、だれも見たことがありません。
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単行本p.159


 味のある著者イラストと共に、様々な動物が持っている特性を「せつない」という観点から紹介する動物図鑑。単行本(ダイヤモンド社)出版は2017年7月、Kindle版配信は2017年7月です。

 著者はオランダ在住の作家、イラストレーター、コピーライター。デビュー作である本書"SAD ANIMAL FACTS"は世界的ベストセラーになったそうです。日本では"SAD ANIMAL FACTS"が出たのと同じ年に『ざんねんないきもの事典』という似たコンセプトの本が出ており、こちらは国内でベストセラーになりました。ちなみに単行本の紹介はこちら。

  2016年11月03日の日記
  『おもしろい!進化のふしぎ ざんねんないきもの事典』(今泉忠明:監修)
  http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-11-03

 本書は"SAD ANIMAL FACTS"の翻訳版で、ヘタウマ調の味わい深いイラストと共に、子供たちに動物の「せつなさ」を教えてくれる一冊。全体は9つの章から構成されています。

 「1.ちょっとした、せつない告白」では、「ファイアサラマンダはときどき家族を食べる」「アデリーペンギンは、がけからなかまをつき落とす」「チンチラは、一度ぬれたらかわかない」といった、ちょっとした豆知識を教えてくれます。

 「2.できなくて、せつない」では、「シマウマはひとりで寝られない」「エミューはうしろ向きに歩けない」「一匹狼は遠吠えをしない」といった、やりそうでやらない、出来そうでできない、そんな動物の行動について教えてくれます。

 「3.恋は、せつない」では、「カバは好きな子におしっこをかける」「クジャクのオスはモテてるふりをするために鳴く」「オスの子イヌは、メスとのけんかにわざと負ける」といった、動物たちの求愛行動に「せつなさ」を見つけます。

 「4.そのこだわりが、せつない」では、「ハクトウワシは巣を巨大化させすぎて木から落としてしまう」「カモノハシは目をつむって泳ぐ」といった、動物たちの特殊な行動を「こだわり」と見なして紹介します。

 「5.へんてこでせつない」では、「ニュウドウカジカには筋肉がない」「ツチミミズには心臓が5つある」「キツツキは長~い舌が頭がい骨をぐるりとおおっている」といった、動物たちの身体構造の意外な特徴を紹介します。

 「6.すごいけど、せつない」では、「ヤギは正面を向いていても自分のおしりが見えている」「タランチュラは2年間何も食べなくても死なない」「アホウドリは19Km先にある死んだ魚のにおいがかげる」といった、普通なら「すごい」と評価されるような動物たちの能力を、あえて「必死な感じがしてなんかせつない」と見なします。

 「7.おとなになるのは、せつない」では、「ミーアキャットの赤ちゃんは、親から死んだサソリをプレゼントされる」「生まれた瞬間キリンは2m落ちる」「タテゴトアザラシの子どもは氷の上に置いてけぼりにされる」といった、動物たちの誕生や成長に関する豆知識を紹介。

 「8.さみしくて、せつない」では、「キツネは一生朝から晩までずーっとひとりぼっちで過ごす」「オンチなクジラは迷子になる」といった、群れを作らず孤立して生きている動物たちを紹介。

 「9.子育てだって、せつない」では、「フィッシャーのメスが妊娠してないのは1年で15日間だけ」「アブラツノザメは2年間妊娠しっぱなし」「カザノワシは子どもに命がけのけんかをさせる」といった、妊娠出産に関する豆知識を紹介。


 動物たちの特性を何でもかんでも「せつない」と見なしてしまう人間中心的な強引さは気になりますが、動物図鑑ではなく雑学豆知識集だと思えば楽しめます。ちなみに動物たちの絵は学術的に正確なものではなく、あくまで文章に添えられたゆるいイラスト。漢字にはすべてルビが振ってあり、小学生でも問題なく読めると思います。


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