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『クリスマスがちかづくと』(斉藤倫、くりはらたかし:イラスト) [読書(小説・詩)]

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「サンタなんて、だいきらいなんだ。クリスマスにならないでって、いつも、おもってた。さみしくて、つらくて。世界じゅうの子どもがしあわせなのに、ぼくだけが、ひとりぼっちで」
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 少年はクリスマスが大嫌いだった。クリスマスなんてなくなればいいのに。そんな願いが通じて、今年こそクリスマス中止。だが少年は、寂しい日々のなかでクリスマスを楽しみにしている一人の少女に出会う。
 『とうだい』『せなか町から、ずっと』の斉藤倫さんと、『冬のUFO・夏の怪獣』のくりはらたかしさんが組んだ、素敵なクリスマス絵本。単行本(福音館書店)出版は2017年10月です。

 とある事情でクリスマスが大嫌いな少年。ようやく今年のクリスマスが中止になったことで大喜びですが、クリスマスを大切にしている少女と出会ったことから、気持ちが揺れてゆきます。


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「それでも、わたし、サンタさんが、いたらうれしい。かぞくでもないのに、どこかで、だれか、見まもってくれるひとがいる。そうおもえるから」
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 自分にとっては嫌なことでも、それを大切にしている誰かがいるかも知れない。他者への想像力が少年の心を動かし、そして一つの決断へとつながってゆきます。


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「きれいなかざりなんか、いらない。ごちそうも、にぎやかなふんいきも。ぼく、わかったよ。そんなの、クリスマスとは、ひとつも、かんけいないんだ」
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 少年が手に入れた本当に大切なクリスマスプレゼントとは何なのか、子供と一緒に話し合ってみるといいかも知れません。クリスマスプレゼントに最適な絵本です。


タグ:絵本 斉藤倫
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『渡辺のわたし』(斉藤斎藤) [読書(小説・詩)]

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勝手ながら一神教の都合により本日をもって空爆します
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セブンイレブンからのうれしいお知らせをポリエチレン製で無害の袋にもどす
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牛丼の並と玉子を注文し出てきたからには食わねばなるまい
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うなだれてないふりをする矢野さんはおそれいりますが性の対象
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そっかそっかだねときにはねなるほどねうんでもまあねそろそろいい? 「だめ」
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このうたでわたしの言いたかったことを三十一文字であらわしなさい
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 他の誰であってもいいはずなのになぜわたしはこのわたしなのだろう。都市生活の細部やアイデンティティの揺らぎを問う第一歌集。単行本初版(booknes)出版は2004年7月、新装版(港の人)出版は2016年9月です。


 まずは、自分をまるで他者として突き放したような作品、他者から見た自分とセルフイメージの乖離を描いた作品、あるいは自分は誰でもあり得るはずなのに実際には他人ではなく自分でしかないことの不思議をうたった作品、などが目につきます。


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お名前何とおっしゃいましたっけと言われ斉藤としては斉藤とする
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おおくのひとがほほえんでいて斉藤をほめてくださる 斉藤にいる
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題名をつけるとすれば無題だが名札をつければ渡辺のわたし
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渡辺のわたしは母に捧げますおめでとう、渡辺の母さん
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このなかのどれかは僕であるはずとエスカレーター降りてくるどれか
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私と私が居酒屋なので斉藤と鈴木となってしゃべりはじめる
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 そもそも自分というものをちゃんと自分がコントロールしているのかどうか怪しい。


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牛丼の並と玉子を注文し出てきたからには食わねばなるまい
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豚丼を食っているので2分前豚丼食うと決めたのだろう
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カラオケに行くものだからカラオケに来たぼくたちで20分待ち
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 自分のことなのに何か他人事のように感じられる都市生活。その細部を描いた作品も数多く収録されています。


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雨の県道あるいてゆけばなんでしょうぶちまけられてこれはのり弁
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実際はこのままでもいいお客様4番の窓口でお待ちください
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セブンイレブンからのうれしいお知らせをポリエチレン製で無害の袋にもどす
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内側の線まで沸騰したお湯を注いで明日をお待ちください
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いけないボンカレーチンする前にご飯よそってしまったお釜にもどす
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くらくなる紐ひっぱりながら横たわりながらねむれますよう起きれますよう
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夜は闇に、昼はむなしさにささえられ窓はどうにか平らでやってる
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 短歌そのものを扱ったいわばメタ短歌、ありがちな定型文をひねった作品、会話をリアルに表現した作品なども印象に残ります。


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このうたでわたしの言いたかったことを三十一文字であらわしなさい
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そんなに自分を追い込むなよとよそ様の作中主体に申し上げたい
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勝手ながら一神教の都合により本日をもって空爆します
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そっかそっかだねときにはねなるほどねうんでもまあねそろそろいい? 「だめ」
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 最後に、個人的に気になるのが「矢野さん」が登場する作品ですね。


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うなだれてないふりをする矢野さんはおそれいりますが性の対象
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矢野さんが髪から耳を出している 矢野さんかどうか確認が要る
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車両への扉を開ける矢野さんがちゃんと閉じないのを見てしまう
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 というわけで、自分がおくっている都市生活にどうも実感が持てない、というか都市生活を送っているのが本当に自分なのかどうかがどうもあやふや、という多くの人に覚えのある感覚を口語体で巧みに表現した歌集です。若いころのもやもやとした気持ちが蘇ります。


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『星の林に月の船 声で楽しむ和歌・俳句』(大岡信:編) [読書(小説・詩)]

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天の海に 雲の波立ち 月の船
星の林に 漕ぎ隠る見ゆ
                柿本人麻呂歌集

中国の漢詩文からの影響、あるいはヒントがいろいろ指摘されている歌ですが、日本の古代詩歌で、これほど見事に天空の豊かさを幻想的にえがいた歌は他に見当たりません。
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文庫版p.21


 万葉集から近代詩歌まで、小中学生のために知っておくべき名作を選んで紹介する和歌・俳句の入門書。文庫版(岩波書店)出版は2005年6月です。


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詩歌作品は、年齢の上下によって理解できたりできなかったりするようなものではありません。ただ、使われていることばを理解するのに、少し背伸びをしなければならない、ということはあり得ます。背伸びしてでも、ちょっとむつかしいものに挑戦してみてほしい――本書を読んでくれる人たちには、そんなことも言ってみたい気持ちがあります。詩歌を楽しむということは、ことばの世界への探検旅行であると思うからです。
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文庫版p.10


「千数百年のあいだに日本語によってつくられてきたたくさんの詩歌作品の中から、小・中学生のみなさんにとって興味深いかもしれないと感じた作品を、選びだし時代の流れにそって配列したもの」(文庫版p.10)ですが、どの年齢で読んでも楽しめる一冊。全体は5つのパートから構成されており、年代順に並んでいます。


『星の林に月の船  『万葉集』から』
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萩の花 尾花葛花 瞿麦の花
女郎花 また藤袴 朝貌の花
                山上憶良

憶良は人生の苦悩、社会の矛盾、また妻子への愛情をはばからずに歌った、すぐれた歌人でしたが、時には花の名前をならべるだけのこんな楽しい歌もつくっています。このような歌は平凡なようで、知恵と知識がないとつくれません。
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文庫版p.30


『都ぞ春の錦なりける  『古今和歌集』『新古今和歌集』から』
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わが君は 千代に八千代に さざれ石の
いはほとなりて 苔のむすまで
                よみ人しらず

『君が代』の原歌です。「わが君は」ということばが現在のような「君が世は」に変わったのは、『古今和歌集』から百年ぐらいあとの『和漢郎詠集』からだと言われています。「君」は、あなた。かならずしも天皇を指すことばではありません。
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文庫版p.58


『舞へ舞へかたつぶり  中世の詩歌』
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月は船 星は白波 雲は海
いかに漕ぐらん
桂男は ただ一人して
                梁塵秘抄

古代から、夜空を大海原に見立てる想像力は、人びとにとっての一つの型だったのかもしれません。ただ一つちがっているのは、『梁塵秘抄』のこの歌には、月に住む仙人といわれる「桂男」が、あらわれていることです。「桂男」は美男子といわれていますから、「ただ一人して」というのは、どこか孤独な影を感じさせます。
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文庫版p.100


『鼠のなめる隅田川  江戸の詩歌』
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世の中に こひしきものは はまべなる
さゞいのからの ふたにぞありける
                良寛

 この世で何よりも恋しいものは、浜辺にころがっているさざえの殻のふただ。
 へんなものを恋しがっているものだと思いますが、この歌と同じときに弟にあてた手紙に、「目ぐすり入りの壺のふたによろしく」とありますから、海岸で適当な形のさざえのふたを探してほしいとたのんでいるわけです。
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文庫版p.141


『柿くへば鐘が鳴るなり  明治以降の詩歌』
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てふてふが一匹韃靼海峡を渡つて行つた。
                安西冬衛

これは「春」と題する有名な一行詩。文末に句点「。」があります。「韃靼海峡」はサハリン北部とシベリア大陸との間にある間宮海峡のこと。「てふてふ」は蝶々の古いかなづかいですが、蝶々の飛びかたが目に見える感じがします。
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文庫版p.193



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『Aa』(高塚謙太郎、鈴木一平、疋田龍乃介、瀬戸夏子、タケイ・リエ、他) [読書(小説・詩)]

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眠りのなかで首を切られても、おなじこと。あるいは、切った感触がなまなましく、
絞りたてのフルーツのように残っている。
ひどい睫毛だった。愛かと思った。
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『詩9篇』(瀬戸夏子)
「生クリームの上のミントの葉」より全文引用


 十名の詩人が参加した詩誌「Aa」の第10号。発行は2017年9月です。


[掲載作品]

『crack』(荒木時彦)
『詩9篇』(瀬戸夏子)
『成層圏から降りてきた手』(望月遊馬)
『ロックマンの谷』(疋田龍乃介)
『ヤーの娘』(髙塚謙太郎)
『それもひとつの顔』(タケイ・リエ)
『日差しの海辺』(鈴木一平)
『すべての本は開かれていなければならない』(加藤思何理)
『へ向かう 目と鼻の先』(八潮れん)
『セピア』(萩野なつみ)


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16連打の彼方の空で
軽々と移り変わるような
この谷を飛ぶあれはなんだ
あれはガッツマンだ
カットマンだ
いや、鳥だ
羽毛すら
ピコピコと
鮮やかな水の鳥
谷底にはしずくがあふれ
まばゆい川となって
夢の流れる滝の手前の
エレクトロなそのほとり
とうとう
残り一機になってしまった
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『ロックマンの谷』(疋田龍乃介)より


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今夜十二時きっかりに猫の碧い眼に稲妻が落ちる。
それまでにぼくはその猫を探しださねばならない。
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『すべての本は開かれていなければならない』(加藤思何理)
「真夜中に猫を探す」より全文引用


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女はひとりの ただの饅頭売りだったが
ひとりであることが怪しいと人々は噂し
夫のいないことを気味悪がった
三世代家族で暮らす自分たちとは違う
あの女は化け物だろうと噂した
やがて女は化け物だと断定され
保健所から来た役人たちに連行された
――――
『それもひとつの顔』(タケイ・リエ)
「饅頭売り」より


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われわれの火星が告げている、あなたに存在してほしくないと、そんなふうに。
よい詩集は邪魔だ、害悪だ、わたしのためではなく、あなたたちのために、そう告げ
ているに過ぎない。
ゆうべ、彼のまわりのほとんどの人々が死に、彼はむだにはなやかな色のアルコール
を飲みながらそれをやりすごした。生きのこった花嫁は彼自身がその日、みずからの
手で殺した。それ以外に方法はなかったのだ。
――――
『詩9篇』(瀬戸夏子)
「多くの最悪な日々」より



タグ:同人誌
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『灰と家』(鈴木一平) [読書(小説・詩)]

地響きや割れた氷をなおす姉
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  山本と『いぬのせなか座』を印刷するために、大学に行く。
  道の途中の弁当屋のまえに、幼稚園ぐらいの女の子と、その
  子より年下の、紙コップをもった男の子がいた。男の子は、
  手にもっていたコップを女の子にわたそうとした。女の子が
  コップを手ではたくと、中に入っていた氷が地面にばらばら
  散らばった。男の子が、おねえちゃんがなおしてね、といって、
  そっぽを向くと、女の子は氷をざくざく踏みはじめた。それ
  を見た男の子は、女の子といっしょに氷を踏みはじめた。
――――


 詩、俳句、日記、縦書き、横書き。様々な作品と表記を巧みに配置したいぬのせなか座叢書第一弾。単行本(いぬのせなか座)出版は2016年11月です。

 河野聡子さんの詩集『地上で起きた出来事はぜんぶここからみている』のデザインはとても印象的でした。このデザインを担当したのが「いぬのせなか座」です。

  2017年07月19日の日記
  『地上で起きた出来事はぜんぶここからみている』
  http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-07-19

 気になったので、同じいぬのせなか座叢書の『灰と家』も読んでみました。詩と詩のあいだに、俳句と日記を組み合わせた作品が並んでいます。個人的に、この俳句と日記を組み合わせたパートがお気に入り。いくつか引用してみます。


近寄れば窄まるような牛の顔
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  母方の実家に行く。家の裏は土手になっていて、草木がじゃ
  まで見えないが、牛小屋がある。窓を開けて過ごしていると、
  ときどき牛の声がする。トイレに立つと、窓の向こうで牛の
  声がする。トイレの電気に反応して鳴くのだとおもう。電気
  をつけずにトイレに入ると、便器がどこかわからず、電気を
  つけると、牛の声がする。
――――


牡鹿来るまで足を卍に組み眠る
――――
  家族と買い物にいった帰りに、家のちかくの田んぼのまん中
  に鹿を見つけた。車の光を浴びた鹿は、急に背中を向けて、
  リズミカルな動きで、闇のなかに姿を消した。母親が、あれ
  はカモシカだといって、それから、むかしフクロウを車で轢
  いたことがあると、話し始めた。家に帰ってタイヤを見ると、
  目玉がタイヤのみぞにはさまっていたという。
――――


今か今かと死を待つ鼓膜で鳴く蝉は
――――
  仕事がおわる。とおくで、蝉が鳴いている。横断歩道で青信
  号を待っていると、目の前にバスが停まり、向こう側の信号
  機が車体に隠れる。代わりに、こちら側の信号機がバスの車
  体に反射して、それがちょうどバスの影にあった信号と重なっ
  て見える。バスが透明になったように感じる。
――――


 どことなく漂っている不思議な、というか不気味なユーモアが印象的です。他に、いかにも若い男のエピソードだなあと思わせるあれこれも沢山でてきて、青春いっぱいいっぱい。


物よりも手前のあけび雨宿り
――――
  仕事おわりに飲み会。二次会で後輩と先輩を全裸にして、後
  悔する。家に着いて、会社の同期に電話をする。旅行の話を
  する。おたがいの記憶が微妙に食い違っていて、上手く嚙み
  合わず。電話の途中で眠ってしまい、気がつくと朝になって
  いた。
――――


似姿や背を持ち上げる草の春
――――
  道を歩いていて、トンネルに入る。粉々になったコンクリー
  トの破片が草を絡ませながら転がっている。光が見えて、光
  の向こう側に出る。外はいちめん草だらけの、切り立った崖
  に囲まれた広場。真向かいの、はんたい側に、奥へとつづく
  道がある。足をすべらせないように、崖のなかほどにある足
  場にそって歩いていると、高台に女のひとがいて、なにかを
  話しているのが聞こえる。その声が知っているひとに似てい
  たので、崖からおりて、足もとでジャンプして、うでの力で
  縁につかまり、確認をすると、やはり似ていた。
――――


行く人のふと筒に見え春の雨
――――
  金子さんと中野で、詩集がたくさん置いてある古本屋に行く。
  なにも見つからず、中華屋で何かじゃりじゃりする炒飯を食
  べる。もういちど本屋に行くが、やはりいい詩集がなかった
  ので、帰る。家に戻ると、部屋の鍵が開いていて、中が荒ら
  されているような気がした。机の上に、なにかの薬がたくさ
  ん入った箱が置かれていた。警察署に行って話をすると、パ
  トカーに乗せられて、警察のひとといっしょに家まで戻る。
  部屋の中を見せると、「もともとこうだったんじゃないです
  か?」といわれる。
――――


 ちなみに原文の表記は、俳句も日記も縦書き、ページ上段に俳句、その下に日記、という構成になっています。その視覚的な効果を確かめたい方はぜひ原文にあたって下さい。

 こうした日記パートを読んでから詩のパートに戻ると、微妙に同じモチーフが使われていたりして、最初に読んだときと印象が大きく変わっているのが驚き。読む順番を自分で能動的に選ぶことが大切になってくる詩集なんだろうと思います。全体的に青春の苦々しさを感じさせる作品が多く、懐かしい気持ちになりました。



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