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『音楽の絵本』(勅使川原三郎、佐東利穂子) [ダンス]

 2017年03月31日は、夫婦でKARAS APPARATUSに行って勅使川原三郎さんと佐東利穂子さんによる新作公演を鑑賞しました。上演時間60分の作品です。

 特にストーリーや背景設定はなく、様々なジャンルの音楽が次々に流れるなか、勅使川原三郎さんと佐東利穂子さんが、それこそ出し惜しみなしという感じで、がんがん踊ってくれます。本当にお二人ともよく体力がもつなあ、というのがまずもって率直な感想。

 いつも神話的な雰囲気をまとってミステリアスに立っているという印象の強い勅使川原三郎さんが、俗っぽいというか、滑稽な仕草をするのが忘れがたい。例えば、踊っている佐東利穂子さんの姿を柱の陰に隠れてこっそりのぞいてみたり、床に倒れている佐東利穂子さんの周囲でおろおろしたり、自分の前で踊っている佐東利穂子さんの「手が邪魔」という表情をしたり。

 曲の途中でいきなり次の曲に移って、ダンスの雰囲気もがらりと変わるため、最初から最後まで驚かされます。全体的に明るく楽しく暖かい雰囲気なのですが、ダンス自体はとにかく驚異的。特に、それぞれが踊る長いソロのシーンは素晴らしい。勅使川原三郎さんがスウィングに乗せて踊る軽快なソロダンスは、もう何度でも観たくなります。


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『小品集』(小野寺修二、カンパニーデラシネラ) [ダンス]

 2017年3月28日に夫婦で浅草九劇に行って、カンパニーデラシネラの新作公演を鑑賞しました。浅草九劇のこけら落とし公演です。独立した三つの作品を連続上演する舞台で、上演時間は全部で90分。だいたい一本あたり30分です。


[キャスト他]

振付・演出: 小野寺修二

『鏡像』
テキスト: ノゾエ征爾
映像: 新井風愉
出演: 大庭裕介、崎山莉奈、仁科幸

『フーガ '17』
出演: 王下貴司、大庭裕介、斉藤悠、崎山莉奈、辻田暁、遠山悠介、仁科幸、野坂弘、増井友紀子

『幸せな男』
テキスト: 山口茜
出演: 辻田暁、野坂弘


 最初の『鏡像』はハーフミラーを使ったトリック(それまで映っていた“鏡を見ている人物の顔”が、照明の切り替えにより“背後にいる人物の顔”に変わるなど)から、登場人物が持っている紙や鞄に投影された手足の動画が現実の手足と重なって視覚的な混乱を引き起こすプロジェクションマッピングまで、仕掛けが楽しい作品。唐突に始まって終わるダンスシーンが印象的です。大庭裕介さんの「てんで駄目な社交ダンス」の動きが個人的にツボ。

 『鏡像』の冒頭では、明らかに似てない二人の女性について「この二人は同一人物です」というセリフ(さらに背景に和文と英文で文字投影)が提示され、そこからアイデンティティの混乱が引き起こされるのですが、これは次の作品でも徹底されます。

 殺人事件を目撃したかも知れない男が、どうやらギャングの抗争に巻き込まれたらしい状況で、もしかしたら殺されたのかも知れないまま、シャッフルされたり逆転したりするような気がする時系列のなかで、何やら色々するかのように見える、という『フーガ '17』。

 役と出演者の対応が次々と入れ替わるところがミソで、同一人物を全員が交替で演じるシーケンスは圧巻です。人物の同一性だけでなく、状況の一貫性も次々に放棄され、時間の流れもシャッフルされます。「録画テープの逆回し再生」のように、時間の流れを逆転させ、出演者がそれまでの動作を高速逆回転してゆくシーンは個人的にお気に入り。

 とにかくどこをとっても小野寺修二さんらしさ溢れる演出です。いきなり始まる群舞がすごくカッコよく、これはシビれる。それにしても、状況や人物や展開に何の一貫性もなくても、場面場面の演出だけで何となく納得させてしまえるギャング映画というのは強力だなあ。

 最後の『幸せな男』は、21世紀ゲバゲバ舞踊団で踊っていた辻田暁さんの「角材ダンス」が素晴らしい。一本の白い棒(角材)を使って、椅子に腰かけた野坂弘さんのサポートで踊る辻田さんの動きが凄くて、ああこれは幻覚を見てるんだな、と観客に納得させる迫力がありました。


タグ:小野寺修二
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『季節のない街』(Co.山田うん) [ダンス]

 2017年03月26日は、夫婦で世田谷パブリックシアターに行って、Co.山田うん公演を鑑賞しました。2012年に世田谷パブリックシアターで初演された作品の再演です。出演者は20名(山田うんさんを含むカンパニーメンバー18名+マレーシアのダンサー2名が客演)、上演時間は70分です。

 『季節のない街』(山本周五郎)が原作ですが、残念ながら未読。映画『どですかでん』(黒澤明監督)も、さらには2012年の初演も観ておらず、恥ずかしながら予備知識ゼロで観ました。


[キャスト他]

振付・演出: 山田うん

出演: 荒悠平、飯森沙百合、伊藤知奈美、川合ロン、河内優太郎、木原浩太、小山まさし、酒井直之、城俊彦、西田祥子、西山友貴、長谷川暢、広末知沙、三田瑶子、山口将太朗、山崎眞結、山下彩子、山田うん、
Fauzi Amirudin、Jabar Laura


 ベートーヴェンの第九が流れるなか、舞台上で首倒立している出演者たち。薄暗いので何だか異様な生物がコロニーを作っているようでちょっと不気味です。少しずつ孵化してゆくのですが、これまたエイリアンの幼生体がうごめいているようで怖い。やがて怒濤の群舞になだれ込み、歓喜の歌を背景にどどーっとはじけてゆきます。冒頭から度肝を抜かれるようなウェイブの連打、圧巻です。

 唐突に群舞は中断され、舞台は貧民街となります。いい加減にトタン板を打ちつけた建物(キャスター付きで移動可。ときどき賑やかに動かされ、それは山車にも、移動式舞台にも、電車にも見えてきます)。派手で安っぽい服が何枚もかけられていたり。たぶん捨てられていたのを拾ってきたんだろうなあという生活用品が並び、水道や電気などインフラは整備されていません。

 このよどんだ空気ただようスラム街を背景に、出演者たちがてんでばらばらに動きます。脈絡なく綺麗なダンスを踊ったり、いさかいを起こしたり、飲んだくれたり、暴力ふるったり、鍋など叩いて音を鳴らしたり。

 ときどき、唐突に祝祭的な群舞が勃発して、二列に並んだ出演者たちが建物からどどどどと走り出てきたりしてカッコいいのですが、全体的には閉塞感が強く、息苦しさを覚えます。美しいバレエの動きでも、爆発的な群舞でも、それが終わればまたスラムのよどんだ空気に戻ってしまう。

 個人的に印象的だったのは川合ロンさんの動き。何か不穏なことを口にしようとする女性に走り寄っては口をふさいだり、山田うんさんと取っ組み合いの喧嘩をしたり、何だか目が離せません。

 観客の期待通り中断された群舞を再開してくれるラストは、まるで貧困やら暴力やらすべてをなぎ倒す鉄砲水のよう。冒頭の群舞とはまた異なる激しさ、勢いを感じさせてくれました。



タグ:山田うん
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『カーネーション NELKEN』(ピナ・バウシュ振付、ヴッパタール舞踊団) [ダンス]

 2017年3月19日は、夫婦で彩の国さいたま芸術劇場に行ってピナ・バウシュの代表作の一つ『カーネーション』を鑑賞しました。 ヴッパタール舞踊団のメンバー21名(+スタントマン4名、ドーベルマン犬と担当者数組)が出演する作品です。上演時間は110分。

 舞台上にびっしりと植えられたカーネーション。その淡いピンクの絨毯を拡げた、夢のように美しい場所で、優しげな顔をして、観客も巻き込みながら、陰惨な悪夢が次々と暴かれてゆく恐ろしい恐ろしい。

 東ドイツで秘密警察による苛烈な弾圧が行われていた時代に初演された作品で、社会的弱者に対する容赦ない迫害、互いに対する密告や暴力の強制、全体主義的な同調圧力など、目を背けたくなるようなシーンが続出します。

 すごいと思うのは、それを他人事として観ることを許さない仕掛け。

 様々な演出(美しいカーネーション畑、愛の歌、手話、優雅な身のこなし、優しい微笑み、片言の日本語、等)により、最初は暴力的なあるいは抑圧的なシーンも「滑稽」に見えて、観客は笑うわけです。子供時代の虐待や社会的しつけ(たとえ殴られていても幸福そうにふるまえと強要される等)も、最初はユーモラスに見えるわけです。出演者が片言の日本語を懸命に話す様も、おかしさをかもしだします。

 しかし、何度か繰り返される「パスポート拝見」のシーンを経て、これが移民や少数民族など社会的弱者に向けられた暴力と差別と人権侵害を表しているということが分かってきます。そうなると、さきほどまでの「滑稽」なシーンが自分の過去の体験につながることもあって、観客の笑い声は少なくなってゆきます。でもなくならない。

 「さっき、あなた、笑いましたよね。弱みのある人々、子供、片言でしか話せない外国人、そういった人々が踏みにじられ、互いに踏みつけあうことを強制されている光景を見て、あるいはかつて自分が受けたつらい仕打ちを見て、あなたは笑った」と糾弾されているような、後ろめたい気持ちに。

 しかしピナは容赦してくれません。優雅なラインダンスを踊りながら微笑んでいるダンサーの一人が悲鳴を上げて逃げようとする。そこを暴力的に押しとどめられ、殴られ、元のラインに引き戻される。すると何事もなかったようにまた微笑んで優雅なダンスを続ける。優しい音楽に合わせて。

 「あなたはこれが観たかったんでしょう! やれますよ、どうですか、何でもやれますよ! どうですか」と泣き叫びながら古典バレエの技を懸命に繰り返す(でも散々侮辱された末に無慈悲にパスポートを取り上げられる)シーンなど、不法移民(我が国では「外国人留学生」)に対する労働搾取といったひどい現実を思い起こして、背筋が凍ります。

 表面的には優雅なまま、陰惨さはどんどんエスカレートして、公開処刑、自殺、拷問、侮辱など様々な悪夢的光景が織り込まれます。それでもそれらを見ていちいち観客席から笑い声が起きるという恐ろしさ。おそらくそこまで含めてピナの計算だと思うのですが、この「最後まで笑う観客」の存在が実にこわい。この国の今の世相を連想させるところがこわい。

 ラスト近くになるとそうしたものに抗うもの、個人のそれぞれの人生と多様性、その尊厳を見せてくれるわけですが、どうだろう、それまでの暴力と痛みの表現が圧倒的なためか、どうにも心もとなく感じられました。


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『いつかモンゴリと眠る』(東京ELECTROCK STAIRS、KENTARO!!、高橋萌登) [ダンス]


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「全員帰るまでやってやる」(KENTARO!!)
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 2017年2月19日は夫婦で駒場アゴラ劇場に行ってKENTARO!!率いる東京ELECTROCK STAIRSの公演を鑑賞しました。KENTARO!!を含む三名で踊る70分の舞台です。

[キャスト他]

振付・音楽: KENTARO!!
出演: 横山彰乃、高橋萌登、KENTARO!!

 はじめて観た東京ELECTROCK STAIRSの公演は、2012年05月に駒場アゴラ劇場で観た『最後にあう、ブルー』でした。それから5年近くたって、ついに再びここで彼らのダンスを観ることが出来て感無量です。

 三名で踊る公演ですが、全員オーバーオールに前髪ぱっつん。揃えてきたのに驚きました。気合はいってるなあ。個人的には、高橋萌登さんのショートヘアが印象的でした。

 全員でがんがん踊ったり、誰かがソロでひゅぱひゅぱ踊ったり、二人で踊っている間に残り一名が所在なさげに座っていたりと、とにかく常に誰かが踊っている状態。まず体力的に大変だろうと、思わず同情してしまいます。

 個々人の断片的な動きが徐々につながって、次第にダンスめいてくる振付は素敵。随所で使われる言葉(発話)も効果的で、全力で踊るシーンは文句なしにカッコイイ。横山彰乃さんも高橋萌登さんもきっちり踊ってくれましたが、何といっても驚かされたのはKENTARO!!さんのダンス。

 何しろ動きが読めない。力が入ってないように見える身体が柔軟にふらふらと動くのですが、動きがいつも観客の予想をこまめに裏切るというか、目の前で踊っているのに全体像がつかめないというか、何だこれ状態。それでいて無性に気持ちいいという。ヒップホップとかストリートとかもうそんなの関係なく、これは狐狸妖怪の幻惑舞踊ではないか。

 それを横山彰乃さんの迫力あるパワフルなダンスと、高橋萌登さんの素早い切れ味のダンスが支えるという、絶妙なバランス感が巧み。5年前と比べると、各人のダンスも、作品としての構成も、段違いに良くなっているように感じました。これからの公演にも期待したい。



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