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<title>馬場秀和ブログ</title> 
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<modified>2012-05-19T02:45:35Z</modified> 
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<tagline><![CDATA[ソーシャルネットワーキングサービス mixi に書いた日記の一部を転載するブログです。]]></tagline> 
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<copyright>Copyright (c) 2012, babahide </copyright>
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<title>『エステルハージ博士の事件簿』（アヴラム・デイヴィッドスン）</title> 
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  <modified>2012-05-19T02:45:35Z</modified> 
  <issued>2012-05-18 17:52:00+09:00</issued> 
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  <dc:subject></dc:subject> 

<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-05-18">
<![CDATA[
　30年以上眠り続ける童女の謎、熊に変身する男、ローレライの贈り物、純金よりも純度の高い黄金の秘密、皇帝閣下のバイロケーション。20世紀初頭、バルカン半島に位置する架空の帝国を舞台に、博学多才この上ないエステルハージ博士が数々の怪事件に遭遇する。世界幻想文学大賞を受賞し、『SFが読みたい!』ベストSF2011海外篇第6位に選ばれた連作短篇集。単行本（河出書房新社）出版は、2010年11月です。<br />
<br />
　今から百年以上前、東欧に存在したという小国。あまりにも完璧に滅亡したため、もはやわれわれの記憶にすら残っていない幻の帝国。それがスキタイ＝パンノニア＝トランスバルカニア三重帝国です。<br />
<br />
　この架空の、あるいは存在した証拠が一切残っていない、東欧の小国を舞台に、法学博士、医学博士、哲学博士、文学博士、そして理学博士でもあるエンゲルベルト・エステルハージ博士が活躍する短篇8篇をおさめた連作集です。<br />
<br />
　ガス灯と電灯が並び、馬車と蒸気自動車が並走し、鉄道網と封建制が共存する19世紀と20世紀の境界。骨相学のようないかがわしい近代科学、錬金術、心霊術、魔術、そして狼男や人魚など民間伝承、怪しいものがごった煮になったような物語が次々と展開してゆきます。<br />
<br />
　30年以上も眠り続けているという童女の秘密をめぐる奇譚（『眠れる童女、ポリー・チャームズ』）。盗まれた宝冠の行方をエステルハージ博士が追う『エルサレムの宝冠または、告げ口頭』。悪魔崇拝の邪教集団をエステルハージ博士が策略であっさり片づけてしまう『神聖伏魔殿』。<br />
<br />
　『熊と暮らす老女』では狼男、『真珠の擬母』では人魚、『夢幻泡影　その面差しは王に似て』ではバイロケーションあるいは幽体離脱、『イギリス人魔術師ジョージ・ペンバートン・スミス卿』では魔術、『人類の夢不老不死』では錬金術、といった具合に、とにかく怪しいネタが満載。<br />
<br />
　すっきり解決する話もあれば、謎が謎のまま不気味な雰囲気で終わるもの、ユーモラスな喜劇調の作品もあり、どう展開するか予想がつきません。というよりプロットはさほど重要ではなく、作品のキモは長々と語られる蘊蓄（あるいは法螺）にあるような気がします。<br />
<br />
　怪談ともミステリとも幻想小説ともつかない、この何ともいえないジャンル未分化感。さらにストーリー展開など気にもとめない勢いで奔流のように繰り出される蘊蓄、耳慣れない異国風の単語、元ネタを見つけてみろと挑発するかのような子細。そして最初は読みにくいと感じられるものの、その独特の気取った調子が醸しだすユーモアに慣れてくると、だんだん癖になってくる不思議な文体。<br />
<br />
　あまりにも個性的な作品で、好みは分かれるかも知れませんが、好きな人は猛烈にハマるかも知れません。20世紀初頭の東欧を舞台に繰り広げられる古式ゆかしい奇譚、ときいて惹かれる方にお勧めします。<br />
<br />
［収録作品］<br />
<br />
『眠れる童女、ポリー・チャームズ』<br />
『エルサレムの宝冠または、告げ口頭』<br />
『熊と暮らす老女』<br />
『神聖伏魔殿』<br />
『イギリス人魔術師ジョージ・ペンバートン・スミス卿』<br />
『真珠の擬母』<br />
『人類の夢不老不死』<br />
『夢幻泡影　その面差しは王に似て』<br />
<br />
<a name="more"></a>
]]> 
</content>
</entry>
<entry>
<title>『異性』（角田光代、穂村弘）</title> 
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  <modified>2012-05-19T02:45:35Z</modified> 
  <issued>2012-05-17 16:50:00+09:00</issued> 
  <id>tag:blog.so-net.ne.jp,2012:babahide.53208731</id> 
  <summary type="text/plain"> </summary> 
  <dc:subject></dc:subject> 

<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-05-17">
<![CDATA[
　人気作家と歌人が交替で書いた恋愛考察エッセイ集。モテは何で決まるのか、デートは割り勘か、内面と外見のどちらが大切か、別れた相手には不幸になってほしいか。かみ合っているような、そうでもないような二人の対話に頷いたり首をかしげたり思わず笑ったり。単行本（河出書房新社）出版は、2012年04月です。<br />
<br />
　というわけで、恋愛について、その恐るべきカースト制度について、どう努力しても絶対モテない男女の存在について、嫉妬の謎について、「好きだから許せる」と「好きだけど許せない」の間にある微妙な一線について、「おれがいないとだめな女」と「おれなんかにはもったいない女」の差について、真面目に考える二人。<br />
<br />
　角田光代さんが女性として、穂村弘さんが男性として、それぞれエッセイを交替で書くという形で対話が進みます。<br />
<br />
　もちろん内容は真剣なのですが、そこはどちらもプロですから、といっても恋愛のプロという意味ではなく、プロの書き手としてという意味ですけど、ちゃんと読者を楽しませてくれます。読んでいて思わず笑ってしまうような表現やエピソードも頻出し、最後まで飽きさせません。<br />
<br />
　「高校生の私は「格好よくなるための本」を何冊も熟読した。でも、くすんだ存在感は変わらない。無駄無駄無駄。だって、主電源が落ちてるんだから。（中略）現実には一歩も動くことができない。自分の部屋で自分の匂いの蒲団にくるまって、外の音をきいている。嗚呼、宇宙人が僕を攫っていって、格好よく改造してくれないかな」（単行本p.104）<br />
<br />
　「ブスでデブでださい私がもてたいなどと思っていることがちょっとでもばれたら、もう世界の終わりだ、というくらいに恥ずかしい。（中略）私は女子校であるのをこれ幸いと、いっさいの努力をしなかったし、もてる努力、いや、もてたいという願望を、もみ消しもみ消しして日を送った」（単行本p.97）<br />
<br />
　宇宙人の侵略でも何でもいいから「格好よく」なりさえすればモテる、という妄想にすがって何もしない男子。スピリチュアルパワーでも何でもいいから「内面を磨き」さえすればモテる、という逃避にすがって何もしない女子。互いの過去をぼろぼろ告白しあう様が何ともいえず、痛。<br />
<br />
　「穂村さんとやりとりをすればするほど、男性と女性のありようの差異がじつに具体的にわかってきて、「こんなにも違うことを考えているのか」と驚くことが多い」（単行本p.89）<br />
<br />
　恋愛にまつわる様々な話題をぐるぐると周回しながらやりとりが続き、特に結論や総括に向かうことなく唐突に終わってしまう。まさか誤解する方はいらっしゃらないとは思いますが念のため、読んでもモテるようにはなりません。<br />
<br />
　じゃあ、異性の心情を理解できるようになるかというと、それも非常に心もとなく。むしろ、「カクちゃん」や「ほむほむ」が何を考えているのか、そして知人にどんなヘンな人がいるのか、それを知りたい読者が読むべき一冊でしょう。どちらかの愛読者なら、その語りの妙を大いに楽しめますよ。<br />
<br />
<a name="more"></a>
]]> 
</content>
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<entry>
<title>『第40回ローザンヌ国際バレエコンクール』（NHK教育、吉田都、金森穣）</title> 
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  <modified>2012-05-19T02:45:35Z</modified> 
  <issued>2012-05-16 16:43:00+09:00</issued> 
  <id>tag:blog.so-net.ne.jp,2012:babahide.53187825</id> 
  <summary type="text/plain"> </summary> 
  <dc:subject></dc:subject> 

<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-05-16">
<![CDATA[
　菅井円加さんが第一位入賞したことで話題となった『第40回ローザンヌ国際バレエコンクール』。その決勝の様子を、5月13日（日）にNHK教育が放映してくれました。<br />
<br />
　東京シティ・バレエ団芸術監督である安達悦子さんが解説を担当。元英国ロイヤルバレエ団プリンシパルである吉田都さんと、新潟市民芸術文化会館舞踊部門芸術監督にしてNoismを率いる金森穣さん、この両名にビデオコメントをもらい、さらには菅井円加さんご本人をスタジオに招いて抱負を語らせるという、この力の入れようときたら。<br />
<br />
　今年のローザンヌ国際バレエコンクールでは、女子10名、男子11名、総計21名が決勝に進出しました。うち日本人は、菅井円加、早乙女愛毬、田代梢、藤井彩嘉、加藤凌の5名。決戦では8名の入賞者が選ばれ、ご存じの通り菅井円加さんが第一位入選したというわけです。<br />
<br />
　コンテンポラリー部門の課題は、ここ数年おなじみのキャシー・マーストン作品、そして昨年までのクリストファー・ウィールドンに替わって、ディディ・フェルトマン作品が使われました。人気演目は、女子はキャシー・マーストンの『トレーセス』、男子はディディ・フェルトマンの『アウトサイト』。女子は活き活きとした感情表現を、男子は有無を言わさぬパワー誇示を、それぞれ狙ったのでしょうか。<br />
<br />
　感想ですが、まず菅井円加さんの『リベラ・メ』（振付：キャシー・マーストン）は気迫とエネルギーに満ちた非常にドラマチックな表現で、大いに感銘を受けました。第一位入賞よりも、日本の若手ダンサーがコンテンポラリーダンス賞をとったことに大きな意義があるのかも知れません。<br />
<br />
　でも個人的なお気に入りは何といってもハンナ・ベッテス（アメリカ）。『トレーセス』（振付：キャシー・マーストン）が、それはもうキュートで可愛らしくて、ノックアウトされました。ちなみにクラシック部門のスワニルダもチャーミングだったなあ。スカラシップに加えて観客賞をとったのも無理はないというか、すぐにでも舞台で観たい魅力的なダンサーです。<br />
<br />
　男子では、エドソン・バルボーサ （ブラジル）の、柔軟性、バランス、そしてドラマ性を兼ね備えた『テンダー・フックス』（振付：ディディ・フェルトマン）には唸らされましたし、王楽（中国）の同演目も太極拳を連想させるしなやかで強靱な動きが心地よかった。<br />
<br />
　ちなみに金森穣さんのコメントが面白くて、例えば菅井円加さんについて「上半身の使い方」や「床へのアプローチ」を褒め、コンテンポラリーを自在に踊れる次代のダンサーだと評価していました。「クラシックしか踊ってない子は、床に転がった途端に分かりますよ」というコメントが印象的。<br />
<br />
　余談ですが、その菅井円加さんがハンブルク・ナショナル・ユース・バレエ（ジョン・ノイマイヤーが率いるハンブルクバレエを母体とした若手ダンサーのバレエ団）に進むと知らされたときの金森穣さんのコメントが歯切れ悪く、私の思い過ごしかも知れませんが、「これだけコンテンポラリーを踊れる子を、ノイマイヤーごときに取られるのか、ちっ」という悔しさがにじんでいたような。<br />
<br />
　それはそれはもう、『テレプシコーラ　第2部』（山岸凉子）のラスト、ローザンヌコンクール会場にスカウトに来ていたルードラ・ベジャール・ローザンヌの指導者が、ヒロインを目の前でノイマイヤーにかっさらわれて悔しがるというシーンを彷彿とさせるものがありました。何しろ金森穣さんはルードラ出身なので。<br />
<br />
<br />
［第40回ローザンヌ国際バレエコンクール入賞者リスト］<br />
<br />
１位　菅井円加（日本）、プロ研修賞、コンテンポラリーダンス賞<br />
Madoka Sugai, Japan<br />
Apprenticeship 2012<br />
<br />
２位　ハンナ・ベッテス（アメリカ）、スカラシップ、観客賞<br />
Hannah Bettes, USA<br />
Scholarship 2012<br />
<br />
３位　エドソン・バルボーサ （ブラジル）、プロ研修賞<br />
Edson Barbosa, Brazil<br />
Apprenticeship 2012<br />
<br />
４位　ニコラウス・トゥドリン（オーストラリア）、スカラシップ<br />
Nikolaus Tudorin, Australia<br />
Scholarship 2012<br />
<br />
５位　ミヒャエル・グリュネカー （ドイツ）、プロ研修賞<br />
Michael Gruenecker, Germany<br />
Apprenticeship 2012<br />
<br />
６位　ソニア・ヴィノグラド （スペイン）、プロ研修賞<br />
Sonia Vinograd, Spain<br />
Apprenticeship 2012<br />
<br />
７位　王楽（中国）、プロ研修賞<br />
Le Wang, China<br />
Apprenticeship 2012<br />
<br />
８位　王名軒（中国）、プロ研修賞<br />
Mingxuan Wang, China<br />
Apprenticeship<br />
<br />
<a name="more"></a>
]]> 
</content>
</entry>
<entry>
<title>『蕃東国年代記』（西崎憲）</title> 
  <link rel="alternate" type="text/html" href="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-05-15" />
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  <modified>2012-05-19T02:45:35Z</modified> 
  <issued>2012-05-15 15:31:00+09:00</issued> 
  <id>tag:blog.so-net.ne.jp,2012:babahide.53169746</id> 
  <summary type="text/plain"> </summary> 
  <dc:subject></dc:subject> 

<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-05-15">
<![CDATA[
　日本海に浮かぶ島国、蕃東国。倭や唐の影響を受けつつ独自の文化が栄えたこの国では、しかし怪異や物の怪の類もまた珍しくなかった・・・。架空の島を舞台に怪力乱神を語りまくり、『SFが読みたい!』ベストSF2011国内篇第16位に選ばれた連作短篇集。単行本（新潮社）出版は、2010年12月です。<br />
<br />
　日本や中国の古典をベースに、しっかりと構築された存在感あふれる国、「蕃東」を舞台とした連作集。個々の短篇は独立していますが、登場人物が共通していたり、途中で意外なつながりが明かされたりと、統一感が保たれています。<br />
<br />
　最初の『雨竜見物』は、もうすぐ竜が天に昇るらしいという噂を聞きつけ、貴族も平民も、ぞろぞろ見物に向かうという話。竜の昇天はどちらかというとマクガフィンで、見物に集まった人々の様子が活き活きと描写されるところが魅力です。ここで蕃東および主要登場人物が巧みに紹介され、読者は一気に引き込まれてゆくことに。<br />
<br />
　『霧と煙』は、四人の男女が小舟で漂流する話。渇きにより全員が瀕死になったところで海の化け物が現れ、各人が最も大切にしているものと引き換えに命を助けてやろう、と持ちかけてくる。貴族は詩歌を、女は色恋を、商人は金銭を。しかし、最後の一人、凡庸な顔だちの平民の男が引き換えにしなければならないものとは・・・。サスペンスで引っ張り、最後に意外で爽快なオチがつく好篇です。<br />
<br />
　『海林にて』は、海辺の地方都市に仕事で赴いた役人の話。前半の旅情も味わい深いのですが、後半になって酒場で怪異譚が次々と披露されることになる展開がまた魅惑的。怪異なのかどうかも含めて微妙に分からない不可解な話をたっぷり楽しむことが出来ます。個人的には、本作が一番のお気に入り。<br />
<br />
　『有明中将』は、有明中将なる美貌の貴族に魅了され命を落とした者たちの話。それぞれの生い立ちの不思議を詳しく書いて読者に感情移入させておき、そして妖怪によってあっさり殺される。因縁も何も分からず、謎は明かされないまま。有明中将その人はほとんど物語に関与しないというところもミソで、中国古典における志怪小説の雰囲気がよく出ています。<br />
<br />
　最後の『気獣と宝玉』は、幼なじみの美しい姫に求婚するため三つの宝玉を探しに出かける若者の話。宝玉はそれぞれダンジョンの奥に隠されており、手に入れるためには順番に守護者を倒さなければならない。しかも、宝玉を横取りすべく、若者の後を追う影がいくつもあった・・・。<br />
<br />
　パロディみたいな展開に笑ってしまうのですが、何しろ本書を最初から読んできた読者は若者が将来どうなるか既に承知しているわけですから、いわば、陳腐な設定、ありがちな登場人物、最初から明示されている結末、という厳しいハンデのもとでどれだけ面白い冒険譚が書けるかという挑戦のようでもあり、しかもこれが面白いというのだから、まいってしまいます。<br />
<br />
　というわけで、細かい書き込みにより緻密かつ壮大な設定を感じさせつつ、それを見せびらかすようなことをしない奥ゆかしさ。やろうと思えばもっと劇的に盛り上げたり膨らませたりすることが出来そうな話を、あっさり終わらせることで余韻を残す手法。その巧みさと品の良さが心地よい連作短篇集です。<br />
<br />
［収録作品］<br />
<br />
『雨竜見物』<br />
『霧と煙』<br />
『海林にて』<br />
『有明中将』<br />
『気獣と宝玉』<br />
<br />
<a name="more"></a>
]]> 
</content>
</entry>
<entry>
<title>『最後にあう、ブルー』（東京ELECTROCK STAIRS、振付：KENTARO!!）</title> 
  <link rel="alternate" type="text/html" href="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-05-14" />
  <link rel="service.edit" type="application/x.atom+xml" href="http://blog.so-net.ne.jp/atom/blog_id=224792/entry_id=53151023" title="『最後にあう、ブルー』（東京ELECTROCK STAIRS、振付：KENTARO!!）" />
  <modified>2012-05-19T02:45:35Z</modified> 
  <issued>2012-05-14 17:20:00+09:00</issued> 
  <id>tag:blog.so-net.ne.jp,2012:babahide.53151023</id> 
  <summary type="text/plain"> </summary> 
  <dc:subject></dc:subject> 

<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-05-14">
<![CDATA[
　昨日（2012年05月13日）は、夫婦で「こまばアゴラ劇場」に行って、東京ELECTROCK STAIRSの新作公演を観てきました。<br />
<br />
　若い男女七名による、ヒップホップ系ダンス公演です。全メンバーが、若さを持て余しているかのごとく、とにかく全力でダンス。振付・演出はKENTARO!!さんで、もちろんご本人もキレのいい動きでがんがん踊ります。<br />
<br />
　寸劇めいたつなぎのシーンも若干あるものの、70分間ほぼノンストップで常に誰かしら何かしら踊っているという、観ている方も最後の方は芯から疲れてくるような、気合充分、体力限界な舞台。これを11日間に渡って毎日、日によっては一日二回公演するというのですから、後先考えてないのではないかというその青春のほとばしり具合には感服する他はありません。<br />
<br />
　各メンバーのソロダンス、二名のかけあい（バトルじゃなくて）、そして全員によるカッコいいダンス、といったシーンをうまく並べて観客を退屈させないようにして、個々のシーンではダンサー達の空間的配置に細かく気を配っている様子がよく分かり、そのお利口さんっぽい配慮が見え見えなのが、妙に可愛く思えるんですよ。<br />
<br />
　というわけで、ヒップホップ系のダンスにはなじみが薄い私たちでも大いに楽しめる爽快な舞台でした。かっこいいなあ。若いなあ。<br />
<br />
［キャスト］<br />
<br />
振付・演出：　KENTARO!! 　<br />
出演：　高橋幸平、川口真知、横山彰乃、山本しんじ、Aokid、高橋萌登、KENTARO!!<br />
<br />
<a name="more"></a>
]]> 
</content>
</entry>
<entry>
<title>『見せびらかすイルカ、おいしそうなアリ　　動物たちの生殖行為と奇妙な生態についての69話』（パット・センソン）</title> 
  <link rel="alternate" type="text/html" href="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-05-11" />
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  <modified>2012-05-19T02:45:35Z</modified> 
  <issued>2012-05-11 18:31:00+09:00</issued> 
  <id>tag:blog.so-net.ne.jp,2012:babahide.53091891</id> 
  <summary type="text/plain"> </summary> 
  <dc:subject></dc:subject> 

<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-05-11">
<![CDATA[
　二つある生殖器のひとつを自分でちぎりとって雌を追いかける雄クモ、攻撃するとき皮膚を切り裂いて骨が飛び出す蛙など、生物の驚くべき生態を扱ったカナダのラジオ番組を書籍化。単行本（飛鳥新社）出版は、2011年09月です。<br />
<br />
　ゲストとして呼ばれた研究者が生物の奇妙な生態について語るという、カナダ放送協会CBCのラジオ番組「クワークス＆クォークス」。この番組で取り上げられた話題のうち反響が大きかったものを収録したポピュラーサイエンス本です。<br />
<br />
　内容をいくつか簡単に紹介しましょう。<br />
<br />
　ヨツモンマメゾウムシのペニスは硬いトゲに覆われており、オスは交尾のときこれでメスの生殖器を切り裂く。こうすることで他の雄との交尾が出来ないようにするのである。さらに、彼らは体重の10パーセントに相当する大量の精液をメスに注ぎ込む。メスはこの大量精液から回収した水分により生き延びる。<br />
<br />
　ヒメグモのオスは巨大で重たいペニスを二つ持っており、メスを発見するとそのうち片方を自分でちぎりとって捨て、身を軽くして猛ダッシュをかける。<br />
<br />
　ミーアキャットのメスは、他のメスが生んだ子供をこっそり殺すことで自分の子を群れの中で出世させようと画策する。<br />
<br />
　アメリカザリガニは、オス同士の闘争で決着がついた後に、「手打ち式」として、オス同士、しかも人間そっくりの正常位で、交尾行動（疑似交尾）を行う。<br />
<br />
　コクヌストモドキという甲虫は、オス同士でも交尾を行う。どうやら他のオスに精子をつけることで、その相手が次にメスと交尾するとき、ちゃっかり自分の精子も受精させてしまうチャンスを狙っているらしい。そして、この戦略は功を奏している。<br />
<br />
　アカゲザルのオスは、自分の食事というコストを支払ってでも「メスの尻」と「優位オスの顔」の写真を見たがる。前者は「プレイボーイ誌」、後者は「フォーブズ誌」に相当すると研究者は考えている。<br />
<br />
　アマゾン・モーリーという魚は、メスだけで単性生殖する。つまりクローンにより繁殖している。それでも、彼女たちは近隣種オスと交尾しなければ排卵できない。これはオスから見れば決して受精させられない精子無駄打ちなのに、近隣種のオスたちはなぜか喜んで交尾に応じる。<br />
<br />
　アミメヤドクガエルは、他のカエルが産卵した場所を探して、そこに産卵する。先に孵化したオタマジャクシは、後から孵化した仲間を食べて栄養とすることで生き延びる。<br />
<br />
　アカメアマガエルのオタマジャクシは、まだ孵化に必要なほど成熟してなくても、ヘビが接近してくるときの振動パターンを検知すると、卵の中から「緊急脱出」を試みる。<br />
<br />
　ツチハンミョウの幼虫たちは、孵化した後でみんなで植物によじのぼり、ハチと同じサイズの固まりになって全員でハチの性フェロモンに似た化学物質を放出する。そして交尾しようと寄ってきたハチの背中にわらわらと飛び乗って、遠隔地まで運んでもらう。<br />
<br />
　・・・。<br />
<br />
　こんな話題が69個も収録されており、どれもこれも驚異的。生き延びて遺伝子を広めるためにいきものが編み出した奇抜な戦略の数々には驚かされます。<br />
<br />
　単に「こんなヘンな習性をもった生物がいるんですよ」で終わらせず、なぜそのような生態が進化してきたのか、そこをきちんと説明してくれるところも素晴らしい。<br />
<br />
　例えば、カウアイ島に棲息するコオロギのうち、95パーセントのオスが、決して鳴かない「平たい翅族」になっている。これは、鳴くことによるメス獲得のメリットと、鳴くことにより寄生バエを呼び寄せてしまうデメリットの、微妙な均衡による結果である。それだけでも驚くべきことだが、真の驚異は、この突然変異が群れ全体に広がるのに20世代もかからなかった、という点にある。<br />
<br />
　不条理としか思えないような奇怪な習性が、実は進化という観点からすると理に適ったものだと理解する瞬間、身が震えるような感動を覚えます。<br />
<br />
　さらに、その習性が進化的に有利になる理由を定量的に検証するための、研究者たちの奮闘努力にもまた興味深いものが。<br />
<br />
　野外で何時間も腹這いになって昆虫の交尾を観察し、研究室に帰ってさまざまな実験を繰り返し、少しずつ、少しずつ、仮説を検証してゆく彼らの姿には、何かこう、胸を踊らせるものがあります。<br />
<br />
　猿がわざと尿を手になすりつけるのはなぜか、コブラはどういうときに毒液を放射するのか、フクロウが他の動物の糞を巣穴に集めてくる理由は。それを調べるため、猿の尿をあちこちにつけて回り、手をコブラのような形にして、しゅっ、しゅっ、とか本物を威嚇して毒液を発射させては素早く透明アクリル板の盾で防いだり、木に登ってフクロウの巣穴からせっせと糞を回収して他の巣に移動させたり。フィールドワークに取り組む研究者の人生はさぞや楽しいんだろうな。<br />
<br />
　というわけで、いきもの雑学集としても滅法面白く、進化論の参考書としても充実しており、生物学者の仕事を学ぶことも出来る、どなたにもお勧めの一冊。こんなラジオ番組が40年近く続いているというカナダのラジオ局にも憧れます。<br />
<br />
<a name="more"></a>
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</content>
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<title>『たどたどしく声に出して読む歎異抄』（伊藤比呂美）</title> 
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  <modified>2012-05-19T02:45:35Z</modified> 
  <issued>2012-05-10 20:29:00+09:00</issued> 
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<![CDATA[
　『読み解き「般若心経」』で読者を驚嘆させた伊藤比呂美さんが挑む『歎異抄』の現代語訳。単行本（ぷねうま舎）出版は、2012年04月です。<br />
<br />
　現代詩の言葉が、親鸞、その妻、弟子の言葉をひらいてゆく。伊藤比呂美さんの現代語訳によって、彼らの声が活き活きと伝わってきます。<br />
<br />
　「アミダにおまかせするしかない悪人は／浄土にいちばんちかいところにいる」<br />
（『歎異抄』より、単行本p.22）<br />
<br />
　「人の心はほんとは清いのに／この世に／まことの人はいなくなった」<br />
（『和讃より、単行本p.99）<br />
<br />
　「ふつうの人もとうとい人も悪い人もおしえをそしる人も／心をあらためればみな同じになる。／この海に／いろんな水が流れこみ／たったひとつの水になるように。」<br />
（『正信念仏偈』より、単行本p.127）<br />
<br />
　「おまえについて伝え聞くことは、こんなことばかりだ。もはや、おれは親ではない。おまえを子とも思わない」<br />
（『親鸞書簡より、単行本p.80）<br />
<br />
　「この手紙を書いて送るのも、おとうさまが生きてらしたときはいう必要もなかったので、いわなかったからなのです。なくなった今は、「こういう人であった、こう生きた」と、あなたの心のなかでだけでも考えてもらいたくて書き記しているのです」<br />
（『恵信尼書簡』より、単行本p.106）<br />
<br />
　こちらの心が汚れているせいか、読んでもその思想や教義にはぴんとこないのですが、とにかく言葉のリズムや響きの美しさは格別。気持ちのよい声です。<br />
<br />
　そして、それらの声に重ね合わされるようにして、伊藤比呂美さんの「旅のつづき。」が挟み込まれます。米国の家族と、日本の親、双方を何度も何度も往復する苦しみ。<br />
<br />
　「飛行機のなかで、あるいは空港のすみで、野垂れ死ぬかもと思いながら旅をつづけた。どうしても避けられぬ事情があって、旅をつづけた。」（単行本p.14）<br />
<br />
　「一度だけ、日本の国を出るとき、旅券を戻されながら、にっこりとされて、いつも楽しく読んでいますといわれた。うれしかった。その日のためにこれまで何十回もこの苦痛をくりかえしてきたのかとさえ思った」（単行本p.14）<br />
<br />
　親鸞たちの声と旅の苦役、両者が交互に書かれ、やがて重なり合ってゆく様は感動的。伊藤比呂美さんの人生相談コーナーに投稿しようと思っている方も、本書を読めばその必要がなくなるかも知れません。<br />
<br />
　なお、タイトルにもある「たどたどしく声に出して読む」というのが何を指しているのかは最初の章に書かれていますが、個人的に、けっこう衝撃的でした。詩人はこんな風にして、声と言葉をすり合わせてゆくのか、と。<br />
<br />
<a name="more"></a>
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<title>『はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか』（篠田節子）</title> 
  <link rel="alternate" type="text/html" href="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-05-09" />
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  <modified>2012-05-19T02:45:35Z</modified> 
  <issued>2012-05-09 18:15:00+09:00</issued> 
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<![CDATA[
　ひたすら追いかけてくる謎のロボットから逃げ回る表題作、レアメタルを体内に蓄積する深海魚をめぐる騒動『深海のEEL』など、SF的なアイデア、風刺、ユーモアを見事に融合させ、『SFが読みたい!』ベストSF2011国内篇第12位に選ばれた短篇集。単行本（文藝春秋）出版は、2011年07月です。<br />
<br />
　四篇を収録したSF短篇集です。いずれも表題や基本プロットは著名な小説や映画のパロディとなっていますし、風刺やユーモアの味つけも巧みで、気軽に楽しめます。ただし、使われているアイデアは本格SFのそれ。油断なりません。<br />
<br />
　最初の『深海のEEL』は最も風刺色が強い作品。日本近海で新種の深海ウナギが大量に発見される。その体内には貴重なレアメタルが豊富に含まれていた。すなわちこのウナギは日本にとって重要な戦略的資源。というわけで捕獲作戦に乗り出すが、その頃にはウナギの群れは黒潮に乗って南下。一路、尖閣諸島へと向かっていた・・・。<br />
<br />
　レアメタルをめぐる昨今の国際紛争を茶化した話。単なる風刺ドタバタ小説として読むだけでも面白いのですが、深海ウナギがレアメタルを吸収する仕組みを生態系の観点からきちんと設定しており、しかもそれがオチに効いてくるところが素晴らしい。<br />
<br />
　『豚と人骨』は、縄文時代のものと見られる謎の遺跡が発見される話。その遺跡から出てきたのは、食用と思しき豚の骨と、そして大量の人骨だった。縄文時代に牧畜が行われ豚が常食されていたのだろうか。従来の考古学の通説を覆す証拠に関係者は色めき立つが、やがて発掘に関わった女性が次々と謎の奇病に襲われる。<br />
<br />
　古い墓を調査した探検隊が未知の寄生生物に襲われ、体内からその幼生体が飛び出してくる、という展開は某映画のあれですが、全体的な雰囲気は伝奇ホラー。考古学的アイデアと、生物学的設定（なぜ女性だけ発症するのか等）が、巧みに組み合わされているのに感心。<br />
<br />
　『はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか』は、ストーカーロボットに追われる女性が主人公。ごく狭い隙間からでも建屋内に侵入して、どこまでもヒロインを追いかけてくる謎のロボット。助けを求めても、誰も信じてくれない。他人が見張っているときは現れず、一人になったとき狙ったように襲ってくるマシン。それは未来から送り込まれてきた暗殺ロボットなのだろうか。<br />
<br />
　もちろん某映画が下敷きになっていますが、ロボットが示す謎めいた行動の背後にある設定が意表をつくもので、定型的ホラー（というか、あまりにベタな展開にむしろユーモア小説のようにも感じられる）から、いきなり本格ロボットSFへと、後方かかえ込み2回宙返り1回ひねりを跳んできちんと着地を決めるあたり、ベテランの仕業としか言いようがありません。<br />
<br />
　『エデン』は、旅行中ひょんなことから人里離れて孤立した集落に連れてゆかれた青年の話。周囲の自然環境ゆえに脱出困難なその村では、何世代にも渡って巨大なトンネル堀りが続いている。なぜそんなものを堀り続けているのかは誰も知らないらしい。青年は何度か脱出を試みたもののついにあきらめ、集落の一員として掘削事業に参加する。それから三十年の歳月が過ぎ、ついにトンネルが開通したのだが・・・。<br />
<br />
　個人的に、収録作で最も気に入った短篇。不条理小説のような謎めいた雰囲気で始まり、人生の様々な側面や心の移り変わりを巧みに表現しつつ、大きな感慨へと流れ込むところ、まるで長篇小説のような読みごたえがあります。トンネルも集落もどうせ「人生」の文学的象徴というやつだろうと思っていたら、最後にちゃんとした目的と設定が明らかにされ、そして本書全体を丸くおさめたのには仰天しました。<br />
<br />
　というわけで、本格SFといってよいアイデアを使いながら、SFに馴染みがない読者でも問題なく楽しめる短篇集です。設定はいかにも理屈っぽい（あるいはSFっぽい）のですが、決してそう感じさせない上手さというかあざとさには、感心する他はありません。<br />
<br />
［収録作品］<br />
<br />
『深海のEEL』<br />
『豚と人骨』<br />
『はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか』<br />
『エデン』<br />
<br />
<a name="more"></a>
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<title>『気分上々』（森絵都）</title> 
  <link rel="alternate" type="text/html" href="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-05-08" />
  <link rel="service.edit" type="application/x.atom+xml" href="http://blog.so-net.ne.jp/atom/blog_id=224792/entry_id=53038223" title="『気分上々』（森絵都）" />
  <modified>2012-05-19T02:45:35Z</modified> 
  <issued>2012-05-08 16:44:00+09:00</issued> 
  <id>tag:blog.so-net.ne.jp,2012:babahide.53038223</id> 
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  <dc:subject></dc:subject> 

<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-05-08">
<![CDATA[
　いい男は黙って我慢だ。亡き父のそんな古くさい遺言を守っていたら、友達とは疎遠になり、ガールフレンドからは誤解され、プレーヤーが故障してエロDVDが再生できないし、いい男を目指す中学生男子の青春も色々と大変だ・・・。表題作ほか、人生に降りかかってくる様々な恋模様を描く9篇を収録した作家デビュー20周年記念短篇集。<br />
<br />
　作家デビュー20周年を記念して、ここ10年ほどの間に雑誌やアンソロジーに掲載された短篇を集めた一冊です。最も古いものが2000年、最新作は2012年。ほぼ全ての作品が恋愛小説です。といってもロマンティックな作品ばかりではないのは当然のことで。<br />
<br />
　『17レボリューション』は、テンション低い女子高生が“イキのいい女”への自己改革を目指して頑張るユーモア青春小説。そもそも昆布茶や温泉が似合う体質だというのに、似た者同士だと思っていた「薄暗い」男子にふられたことから一念発起。テンション高い友達グループと付き合い始めたが・・・。<br />
<br />
　少女漫画でよく見かける低血圧女子ものですが、文章の軽快さでさらさら読んで楽しめます。ちなみに、友情に恋にエロに（特にエロに）迷いまくる中学生男子のイタい青春時代を描いた表題作『気分上々』と対になっているような気もします。<br />
<br />
　『本物の恋』は、恋愛なんてもうコリゴリだと思っていた女子高生が、「本物の恋」に苦しむ男を目撃する話。幸せそうなカップルに笑顔で挨拶して立ち去ってから、地面に崩れ落ち、号泣する男。本物の恋とはこれほどまでのものなのか。衝撃を受けた彼女は、自分も本気の恋を目指す決意をする。それから8年、その男に再会した彼女は、自分が決定的な勘違いをしていたことを知るのだった・・・。<br />
<br />
　よくあるオチがついていますが、話の流れに説得力があり、さわやかな読後感を残してくれる短篇です。<br />
<br />
　『東の果つるところ』は、左右対称の字だけで構成される姓名（例えば、ヒロインの名は「草間由果」）を持つ相手としか交際が許されないという一族の悲喜劇を描く話。一族の呪縛を嫌って土地を逃げ出したヒロインは、女優となって非対称の芸名を名乗ることで掟に反逆するが、しかし「左右対称の呪い」は彼女の努力をあざ笑うかのように人生を支配してくるのだった・・・。<br />
<br />
　能力も人柄も家柄も関係なく、ただただ姓名を構成する漢字の何割が左右対称であるかが全ての評価を決めるという厳しい掟、それに反逆するヒロインが命をかけて非対称を希求する。客観的に見ると途方もなく馬鹿げたことに、この上なく真剣に取り組む熱血譚、という個人的なツボの一つにピタリはまった作品。本書収録作のうち最も気に入りました。共感する人は少ないかも知れませんが。<br />
<br />
　他に、因習的な母親に嫌気がさして都会へ飛び出した青年が、母親の死後に郷里に戻ってきてようやくその真意に気づく『ブレノワール』、東京港湾合同庁舎の検疫所で始まる激しい恋の顛末を描いた『ヨハネスブルグのマフィア』などが印象に残りました。<br />
<br />
［収録作品］<br />
<br />
『ウエルカムの小部屋』<br />
『彼女の彼の特別な日　彼の彼女の特別な日』<br />
『17レボリューション』<br />
『本物の恋』<br />
『東の果つるところ』<br />
『本が失われた日、の翌日』<br />
『ブレノワール』<br />
『ヨハネスブルグのマフィア』<br />
『気分上々』<br />
<br />
<a name="more"></a>
]]> 
</content>
</entry>
<entry>
<title>『異国のおじさんを伴う』（森絵都）</title> 
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  <link rel="service.edit" type="application/x.atom+xml" href="http://blog.so-net.ne.jp/atom/blog_id=224792/entry_id=53011359" title="『異国のおじさんを伴う』（森絵都）" />
  <modified>2012-05-19T02:45:35Z</modified> 
  <issued>2012-05-07 18:46:00+09:00</issued> 
  <id>tag:blog.so-net.ne.jp,2012:babahide.53011359</id> 
  <summary type="text/plain"> </summary> 
  <dc:subject></dc:subject> 

<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-05-07">
<![CDATA[
　異国の地を訪れた作家は、なぜか巨大な人形と同行するはめになった・・・。表題作ほか、旅先で起こるささいな出来事から人間模様が鮮やかに浮かび上がってくる瞬間を描いた作品を10篇収録した短篇集。単行本（文藝春秋）出版は、2011年10月です。<br />
<br />
　何気ない状況からドラマを引き出す著者の腕前が冴え渡る短篇集です。特別な大事件が起きたり、刺激的な謎が提示されたりするわけでもなく、ごく日常的に思えるささいな出来事やちょっとした疑問が出てくるだけなのに、それがたちまち読者に食らいつき、もう最後まで一気に読まずにはいられなくなります。<br />
<br />
　例えば、最初の『藤巻さんの道』。いつも明るく健全な藤巻さんは、どうやら誰にも言えない秘密を抱えているらしい。ささいなことからそれに気づいた恋人が懸念を口にすると、藤巻さんは、思い詰めたような表情で、彼をはじめて自宅に招く。自宅に向かって走るタクシーの中で、藤巻さんはとうとう泣き出してしまった・・・。<br />
<br />
　藤巻さんの自宅はどうなっているのか。何か恐ろしい惨状になっているのではないかという不安。逆にそう思わせておいて全く違う真相を提示して笑わせてくれるのではないかという期待。最後の一行まで読者をどきどきさせ、そのどちらでもない、恋愛小説へと力強く着地する結末が素晴らしい。<br />
<br />
　『ラストシーン』は、長距離フライト中、映画を観ていたところ、着陸体勢に入ったとかでいきなり中断、あと少しでラストシーンだというのに、というありがちな体験を扱った話。日本人なら、まあ規則なんだからしょうがないな、で済ませるところですが、何しろ周囲の乗客はみんな英国人。みんなで団結して客室乗務員に抗議を始める。互いに一歩も引かない論争はどんどんヒートアップして・・・。<br />
<br />
　一年近く前に本作を『短篇ベストコレクション　現代の小説2011』（日本文藝家協会）で読んで感激したのが、森絵都さんの作品を読み始めるきっかけとなりました（2011年06月09日の日記参照）。再読してもやっぱり面白い。好きです。<br />
<br />
　『夜の空隙を埋める』は、異国の地で独身生活を送っている女性二人が、毎夜数時間だけ起きる停電という不可解なトラブルに見舞われる話。諸悪の根源を叩くべく、勢いに任せて夜の街に繰り出してゆく二人。だが最初の勢いはすぐに先細りになり、慣れない異国を真夜中に女性だけで歩いていることの不安にとらわれる。そのとき彼女たちの前に現れたのは・・・。<br />
<br />
　心細さ、困惑、奇妙な連帯感。揺れる心の動きが丁寧に描き出されており、先がどうなるのか気になって仕方ない話です。個人的には、『ラストシーン』と並んで本書収録作のなかで最も気に入った一篇。<br />
<br />
　他に、恋人の無神経な態度にイラっとくる瞬間とそれを一蹴する快感を味わえる『桂川里香子、危機一髪』、実家に帰省する度に母親の居場所が北上しているという謎を扱った『母の北上』、パワフルな恋人に振り回されるままホエールウォッチングに同行した男がひどい目に会う『クジラ見』、などが印象に残りました。<br />
<br />
［収録作品］<br />
<br />
『藤巻さんの道』<br />
『夜の空隙を埋める』<br />
『クリスマスイヴを三日後に控えた日曜の・・・』<br />
『クジラ見』<br />
『竜宮』<br />
『思い出ぴろり』<br />
『ラストシーン』<br />
『桂川里香子、危機一髪』<br />
『母の北上』<br />
『異国のおじさんを伴う』<br />
<br />
<a name="more"></a>
]]> 
</content>
</entry>
<entry>
<title>『PLAYPARK2012　　日本短編舞台フェス』（伊藤千枝、森山開次、小野寺修二）</title> 
  <link rel="alternate" type="text/html" href="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-04-29" />
  <link rel="service.edit" type="application/x.atom+xml" href="http://blog.so-net.ne.jp/atom/blog_id=224792/entry_id=52840076" title="『PLAYPARK2012　　日本短編舞台フェス』（伊藤千枝、森山開次、小野寺修二）" />
  <modified>2012-05-19T02:45:35Z</modified> 
  <issued>2012-04-29 15:13:00+09:00</issued> 
  <id>tag:blog.so-net.ne.jp,2012:babahide.52840076</id> 
  <summary type="text/plain"> </summary> 
  <dc:subject></dc:subject> 

<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-04-29">
<![CDATA[
　昨夜（2012年04月28日）は、夫婦で渋谷CBGKシブゲキ!!に行って『PLAYPARK2012』を鑑賞してきました。日本最大級の短篇舞台フェスで、演劇、ダンス、音楽、パフォーマンス、アート、古典芸能、お笑いなど、様々なジャンルに属する舞台作品（15～30分程度）を10日間に渡って総勢61組が上演するという一大イベントです。<br />
<br />
　昨夜は、演劇、ダンス、極右演説パフォーマンスなど5組がラインナップされていましたが、私たちのお目当ては、『珍しいキノコ舞踊団』と森山開次さんです。<br />
<br />
　『珍しいキノコ舞踊団』の演目は、最新公演『ホントの時間』（2012年02月27日の日記参照）からの抜粋版。ダンスシーンのいいとこだけ取り出して、30分間ノンストップで踊り続けてくれました。<br />
<br />
　とにかく観ているだけで脳内に何かがどばどば出てくるあの楽しいダンスを再び目にすることが出来て感無量。何度観ても心が舞いあがります。<br />
<br />
　『共犯』は、小野寺修二さんの演出により、森山開次さんと森川弘和さんが踊るという贅沢な作品。<br />
<br />
　薄暗い舞台に白い机と椅子が二脚。二人が断片的なシーンを演じたり、いきなりダンスに突入したり、かと思うと素知らぬ風で中断されたシーンを再開したり、でも役柄が入れ替わってたり、さらには次から次へと役柄を交替したり。小野寺修二さんの演出はいつもながら冴えています。<br />
<br />
　で、森山開次さんですが、これがもうカッコ良すぎ。細くすらりと伸びた足、絵画か彫刻のような体格、狭い空間を縦横無尽に美しく舞ってみせるキレの良い動き、そして「どこの熱血ヒーローアニメの主人公だよ」と云いたくなるようなシビレる肉声。ダンス以前に、そもそもご本人の存在が芸術的。<br />
<br />
　対する森川弘和さんも力強い熱演でしっかり場をコントロールしており、二人の息のあった動きの連鎖が、緊張感に満ちた空間を作り出します。素晴らしいパフォーマンスでした。<br />
<br />
［演目］（2012年04月28日　夜の部）<br />
<br />
『リアル感電!!／2012版（また会いたいし、笑いたい）』（ホナガヨウコ企画×d.v.d）<br />
『海神別荘』（花組芝居）<br />
『キノコース』（珍しいキノコ舞踊団）<br />
『玉砕演説』（鳥肌実）<br />
『共犯』（演出：小野寺修二、出演：森山開次、森川弘和）<br />
<br />
<a name="more"></a>
]]> 
</content>
</entry>
<entry>
<title>『SFマガジン2012年6月号　　Jコレクション創刊10周年記念特集』</title> 
  <link rel="alternate" type="text/html" href="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-04-27" />
  <link rel="service.edit" type="application/x.atom+xml" href="http://blog.so-net.ne.jp/atom/blog_id=224792/entry_id=52815946" title="『SFマガジン2012年6月号　　Jコレクション創刊10周年記念特集』" />
  <modified>2012-05-19T02:45:35Z</modified> 
  <issued>2012-04-27 17:09:00+09:00</issued> 
  <id>tag:blog.so-net.ne.jp,2012:babahide.52815946</id> 
  <summary type="text/plain"> </summary> 
  <dc:subject></dc:subject> 

<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-04-27">
<![CDATA[
　SFマガジン2012年6月号はJコレクション創刊10周年記念特集ということで、仁木稔さんの短篇と西島大介さんのコミックを掲載してくれました。<br />
<br />
　『ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち』（仁木稔）は、現実とは異なる歴史を辿った架空の米国を舞台に、ヘイトクライム（憎悪犯罪）を引き起こす社会病理に迫ったシリアスな作品。<br />
<br />
　この「米国」においては、遺伝子工学により作り出された亜人間が下層労働者として働いています。彼らは「妖精」と呼ばれ、多くの人はその存在を受け入れているのですが、一部の白人は「妖精」を忌み嫌い、その嫌悪感が宗教や“人種”差別と結びついて、彼らに対する過激な暴力に走る連中も出てきます。<br />
<br />
　「妖精」を「移民」に差し替えても違和感なさそう。<br />
<br />
　排他主義、不寛容、反知性主義、宗教的原理主義、異文化恐怖、そして陰謀論。外国や異教徒や異民族が米国を妬み、神に選ばれた正しい人間（白人）を堕落させ国を乗っ取る陰謀を進めている、今すぐ具体的な行動により奴らに強烈なメッセージを叩きつけてやらなければならない・・・。<br />
<br />
　ヘイトクライムを支える心理と社会的構造が、いささか戯画的な形で表現されます。まあ現実の米国そのものに「いささか戯画的」なものが感じられるので、そういう意味ではため息が出るほどリアル。<br />
<br />
　とにかく登場人物もその考えも言動も、何もかもが不愉快な話です。先に進むにつれて残虐シーンも増えてゆき、読者もいささかうんざりしてきたところで、あっと驚く真相が明らかにされるという仕掛け。まあ、実は典型的な陰謀論なんですけど、使い方が巧妙です。<br />
<br />
　『All those moments will be lost in time』（西島大介）は、東京から広島に引っ越した感慨を描いたコミック作品。高台の住宅地、津波からも放射能からも遠いこの地、でも「ずっと昔ここには原爆が落ちた。爆心地から4Km」。<br />
<br />
　夜の散歩に出かけた著者は、放置された老人ホームや、土台は作られたのに家がない土地、誰もいない夜の公園、など静かな廃墟のような場所を歩きながら「僕は3.11後の世界で被爆者としてどう生きるべきか学ぼうとしていた。過去から」。<br />
<br />
　といった感じで、3.11後の「気分」を描こうとする作品です。しかし、Jコレクション創刊10周年記念特集号で、米国の「ポスト911」と日本の「ポスト311」を扱った作品が並ぶというのは、いかにも時代を感じさせますね。<br />
<br />
［掲載作品］<br />
<br />
『ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち』（仁木稔）<br />
『All those moments will be lost in time』（西島大介）<br />
<br />
<a name="more"></a>
]]> 
</content>
</entry>
<entry>
<title>『この女』（森絵都）</title> 
  <link rel="alternate" type="text/html" href="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-04-26" />
  <link rel="service.edit" type="application/x.atom+xml" href="http://blog.so-net.ne.jp/atom/blog_id=224792/entry_id=52803756" title="『この女』（森絵都）" />
  <modified>2012-05-19T02:45:35Z</modified> 
  <issued>2012-04-26 20:12:00+09:00</issued> 
  <id>tag:blog.so-net.ne.jp,2012:babahide.52803756</id> 
  <summary type="text/plain"> </summary> 
  <dc:subject></dc:subject> 

<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-04-26">
<![CDATA[
　妻の人生を小説にしてほしい。大阪・釜ヶ崎地区（あいりん地区）のドヤ街で日雇い労働をしていた青年に、そんな奇妙な依頼が舞い込む。謎めいた人妻に翻弄される青年は、やがて大きな政治構想に巻き込まれてゆく・・・。震災前夜の釜ヶ崎を舞台とした冒険と恋愛。単行本（筑摩書房）出版は、2011年05月です。<br />
<br />
　『ラン』から三年、著者の新境地を切り拓いた長篇です。ストレートに展開した前作とは打って変わって、謎めいた雰囲気のなか、錯綜した物語が少しずつほどけるように加速してゆく仕掛けの妙にまず感心させられます。<br />
<br />
　ドヤ街と寄せ場が集積し、日雇い労働者と路上生活者が吹きだまる大阪の釜ヶ崎（あいりん地区）。そこで働いていた語り手は、あるホテルチェーンの経営者から奇妙な依頼を受ける。自分の妻をヒロインとする小説を書いてほしい、報酬はたっぷりはずむ、というのだ。<br />
<br />
　さっそく取材を開始した語り手だが、ヒロインとなる人妻はとらえどころがない女で、何を尋ねても嘘とはぐらかしばかり。自分の過去を決して明かそうとしない彼女に翻弄されるうち、いつしか二人は抜き差しならない関係に。<br />
<br />
　冒頭100ページ、謎めいた展開で読者を引き込んでゆきます。<br />
<br />
　まず、語り手である若い青年。明らかに教養も知能も高く、健康で、文学的素養もあるのに、なぜ日雇い労働などしているのか。どうして、ここから出て行くことが出来ないのか。<br />
<br />
　次に、雇い主。なぜ妻をヒロインとする小説を書く、などという依頼に気前よく大金を払うというのか。明らかに何かを隠している様子からも、裏にヤバイ話が転がっていることは明らか。それを薄々承知しながらも、小説執筆にのめり込んでゆく語り手。<br />
<br />
　そして、ヒロイン。語られる過去は嘘ばかりで、どうにもとらえどころのない女。いったい彼女は何を考えているのか。最初は奇矯に思える彼女、しかしその特異な存在感には不思議な魅力があり、語り手とともに、読者も彼女のことをもっと知りたくなってきます。<br />
<br />
　「この女は壊れているけれど空っぽではない。乱れているけれど汚れてはいない」（単行本p.189）<br />
<br />
　「同じ男とはうち、一度しか寝えへん」（単行本p.187）<br />
<br />
　何といっても一番の魅力は、タイトルからも分かる通り、このヒロインの人物造形でしょう。なぜか気にかかって仕方ない女。その過去に何があったのか。彼女の謎が解き明かされ、それに伴って雇い主の目論見が明らかになり、最後に語り手の秘密が明かされる。<br />
<br />
　冒頭で仕掛けられた謎が、次々とほどける、その勢いで先へ先へとひっぱってゆく構成となっており、これが見事に成功しています。<br />
<br />
　他に行き場のない最低辺の人々が「使い捨ての紙コップみたいに路上に転がっとる」（単行本p.108）無法地帯、釜ヶ崎。その「浄化」計画を進める府行政。日雇い労働者の暴動や行き倒れ、未成年者がレイプされそうになる場面、絶望の果てにオウム真理教の終末思想に帰依する者、障害者に対する社会の冷酷さなど、出来れば目を背けておきたいシーンが頻出しますが、それらが並々ならぬ迫力で作品のリアリティを支えています。<br />
<br />
　明るく健全な物語ではなく、めでたく大団円を迎えるような小説でもありませんが、ヒロインの一種独特なたくましさのおかげで、読後感は決して悪くありません。読み終えてから、ふと気になって、最初の3ページを読み返してみたところ、ある登場人物の後日談がそこにさりげなく書かれていて、そこでまたじわりと感動が。<br />
<br />
　というわけで、森絵都といえば児童文学、ヤングアダルト小説、というイメージを打ち破った、地味ながらきらりと光る大人向け恋愛小説です。これまで著者の作品は数冊読みましたが、そのなかでは本作が最もお気に入り。<br />
<br />
<a name="more"></a>
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</content>
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<entry>
<title>『空耳の科学　　だまされる耳、聞き分ける脳』（柏野牧夫）</title> 
  <link rel="alternate" type="text/html" href="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-04-25" />
  <link rel="service.edit" type="application/x.atom+xml" href="http://blog.so-net.ne.jp/atom/blog_id=224792/entry_id=52785951" title="『空耳の科学　　だまされる耳、聞き分ける脳』（柏野牧夫）" />
  <modified>2012-05-19T02:45:35Z</modified> 
  <issued>2012-04-25 17:43:00+09:00</issued> 
  <id>tag:blog.so-net.ne.jp,2012:babahide.52785951</id> 
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  <dc:subject></dc:subject> 

<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-04-25">
<![CDATA[
　耳に入ってくる音の物理的な特性と、意識にのぼる聞こえ方、つまり知覚とは乖離している。ある意味、私たちが聞いている音の世界は、すべて空耳だと言えるかも知れない・・・。研究者が聴覚の不思議について講義した内容を収録したサイエンス本。単行本（ヤマハミュージックメディア）出版は、2012年02月です。<br />
<br />
　本書でいう空耳とは、「“バケツリレー、水持ってこい！”ってメタリカが歌ってるよー」といったあのタモリ倶楽部なものだけでなく、音の物理特性と知覚される音の間に乖離が生ずるような現象すべてを指します。<br />
<br />
　なぜ空耳は生ずるのか、そのメカニズムはどうなっているのか、そしてそれは私たちにとってどんなメリットがあるのか。聴覚研究者である著者が、震災直後の春休みに横浜サイエンスフロンティア高校の生徒に二日に渡って講義した内容をまとめたものが本書です。<br />
<br />
　普段、私たちが意識しない聴覚の不思議さを示す興味深い実験が次々と登場します。<br />
<br />
　話し言葉に繰り返し短時間ノイズを乗せてもちゃんと聞き取れる。つまり私たちの脳はノイズを自動的に除去して隙間を補完して聞く能力を持っている。ところが、そのノイズの部分を無音にするだけで、補完に失敗して、言葉が聞き取れなくなる。<br />
<br />
　聴覚と視覚の情報が矛盾する場合、私たちの脳はかなり高度な判断を自動的に行い、どちらかを優先させて矛盾のない認識を作り上げる。例えば図形の点滅は1回だけなのに、同時に音が2回鳴ると、2回点滅したように見える。<br />
<br />
　短時間のノイズで音が消えていても、私たちの脳はそこを補って、なめらかな連続音であるかのように「編集」して聞いている。矛盾が生じそうになると、辻褄を合わせるために、何とすでに聞こえた内容を過去に遡って「修正」した上で知覚している。<br />
<br />
　「このように、みなさん、なんとなく辻褄が合っているように感じて過ごしていると思いますが、実は、かなりの世界が脳内でつくり出されているということがわかったかと思います。脳の中では、200～300ミリ秒くらいの時間というのは、かなり複雑に行きつ戻りつしているってことなんですね」（単行本p.174）<br />
<br />
　「知覚しているものは物理的な音とはちがうということです。周波数が高いからといって、必ずしも高く聞こえるわけではないし、音が鳴っている方向も変化するし、時間も辻褄を合わせて聞いている。しかしそれは、よりよく世界を理解するための人間の癖のようなものだと思うのです」（単行本p.185-186）<br />
<br />
　他にも、モバイルイヤー実験（耳介模型の中にマイクを仕込んで、マジックテープで身体のあちこちに装着して、左右の耳を逆にして聞いてみたり、下半身に耳があるとどう聞こえるか試したり）、音楽に感動しているときの脳の活動を調べた研究、ボーカロイド（初音ミクなど）の歌が不自然に聞こえないようにしている技術、など面白い話題がてんこ盛り。<br />
<br />
　やや専門的な内容も含まれていますが、高校生向けの講義なので、ごく初歩的な数学（対数や三角関数）だけを使って説明してくれます。それにしても、この聴講生たち、反応が実に鋭く、また質問も深い。講義の勘どころを的確に理解していることがよく分かり、読んでいるこちらも清々しい気分になります。<br />
<br />
　「みなさん、本当にすばらしい生徒さんでした。私はよく大学などでも講義するのですが、レベル的にはむしろみなさんのほうが上だな、という気がしました」（単行本p.308）<br />
<br />
　というわけで、聴覚に関する不思議な現象に興味がある方、私たちが知覚している世界がどれほど脳によって「編集」されたものかを知りたい方、利発で好奇心の強い理系高校生の授業風景に接してみたい方など、色々な方にお勧めできるポピュラーサイエンス本です。<br />
<br />
<a name="more"></a>
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</content>
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<entry>
<title>『おいで、一緒に行こう　　福島原発20キロ圏内のペットレスキュー』（森絵都）</title> 
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  <link rel="service.edit" type="application/x.atom+xml" href="http://blog.so-net.ne.jp/atom/blog_id=224792/entry_id=52758269" title="『おいで、一緒に行こう　　福島原発20キロ圏内のペットレスキュー』（森絵都）" />
  <modified>2012-05-19T02:45:35Z</modified> 
  <issued>2012-04-24 18:14:00+09:00</issued> 
  <id>tag:blog.so-net.ne.jp,2012:babahide.52758269</id> 
  <summary type="text/plain"> </summary> 
  <dc:subject></dc:subject> 

<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-04-24">
<![CDATA[
　福島原発周辺に取り残された沢山のペットたち。飼い主を失い死を待つばかりの犬猫のために、警察の取り締まりをかいくぐって避難対象地域に侵入し、救出活動を続ける人々。何が彼らを駆り立てているのか。ペットレスキューに同行した作者が原発20キロ圏内で見たものとは。単行本（文藝春秋）出版は、2012年04月です。<br />
<br />
　「この取材が正しいのか正しくないのか、私にはいまだもってよくわからない。見たくて、知りたくて、書きたくて、伝えたかった。そこに正義の意識はなかった。同時に良心の呵責もなかった」<br />
<br />
　日に日に状況が悪化してゆくなかで、一匹でも多くの命を救うべく原発20キロ圏内に侵入する。避難所生活を送る飼い主からの依頼を受け、取り残されたペットを保護するペットレスキュー活動に同行取材した渾身のルポです。報道風ではなく、あくまで著者自身が体験したことを一人称で語るという形式。<br />
<br />
　「飼い猫は、絶対、手放しちゃダメだ。何があっても・・・・・・手放したら、もう二度と会えない」（単行本p.48）<br />
<br />
　「それまではテレビを観ながら泣いてばかりいたんです。このままだったら病気になる、よほど自分で行ったほうがマシだ、と」（単行本p.73）<br />
<br />
　「皮しか残ってない犬や猫がたくさんいて、勘弁してよ、と思って。（中略）見たくもないような量の見たくもないものを見ちゃって、泣くことでしか精神のバランスを保てなくて」（単行本p.64）<br />
<br />
　「自分がやってることが正解だとは思ってないし、もう何回もやめたくなりましたよ。なんのためにこんなことやってるんだろう、って。泣いて、吐いて、泣いて、吐いて」（単行本p.64）<br />
<br />
　福島におけるペットレスキュー活動に取り組む人々の姿が生々しく書かれています。現場の様子、里親探し、キャットシェルター建設、飼い主との再会、そして別離。様々なシーンを丹念に積み重ね、今そこで起きていることを伝えようとする気迫に満ちて。<br />
<br />
　著者自身による写真も多数収録されており、現場の様子を窺い知ることが出来ます。過度にむごたらしいものはありません。文章にも凄惨なことは書いてないので、そういうのが苦手な方もたぶん大丈夫。<br />
<br />
　ただ、個人的には、道端に転がっている仔猫の遺体（写真）とか、座り込んで地面を舐め続ける猫とか、痩せすぎて首輪がたすきになった猫とか、読んでいていちいち苦しかった。<br />
<br />
　封鎖ブロック除去、警察パトロールの回避、職務質問されたときの嘘など、公表すると今後の活動に支障をきたしかねないヤバイことも正直に書かれています。しかも関係者の実名入り。きれいごとにはしない、あまのままを伝える。著者と関係者の覚悟のほどが伝わってきます。<br />
<br />
　「まだ圏内にいる仲間が警察に捕まって、車に乗せていた猫二匹、保護した場所へ戻してこいって言われたらしいんです。しかも、リリースしたことを証明するために、空になった捕獲器をもう一度、見せにこいって・・・・・・」（単行本p.167）<br />
<br />
　「レスキュー自体はどうってことないんです。あちこち動きまわって、それで疲れるとかは全然ない。けど、今、警察に会ったらどんな嘘つこうとか、なんて言って切りぬけようかとか、もう一日中ずっと嘘ばっかり考えてて、それがすごく疲れる。もうほんとにね、嘘だらけですわ、私たち」（単行本p.168）<br />
<br />
　心ならずもペットを見捨てざるを得なかった飼い主の苦しみ。比喩でなく血を流して犬猫を保護する人々。救出された犬猫を一時保護するために奔走する人々。捕獲できない動物たちに餌をやるためひたすら現場に通い続ける人々。読み進めるにつれてその迫力に圧倒されます。<br />
<br />
　「時として荒っぽいこともする彼女たちを、私は諸手を挙げて賛美するつもりはない。彼女たちの健康や生活を考えると無責任な応援もためらわれる。けれど（中略）彼女たちの向こうみずな行動力に、そのありあまる母性と他者への想像力に、闇の中に一筋のびる命綱のような心強さを感じずにはいれらないのも事実だ」（単行本p.84）<br />
<br />
　「よかったことをどれだけ数えあげても、根底にある悲しみが深すぎて、どうしても気持ちが陰へ落ちていく。よくない。こんなことがあっていいわけないんだ」（単行本p.144）<br />
<br />
　あそこで見捨てられた犬猫のことが気になっている方は是非お読み下さい。また、あの原発事故そのものではなく、それによって明らかになったこの国の問題が何であるのか考えたい方にも、一読をお勧めします。国や社会の本当の姿を知りたければ、最も「弱みのある者」への扱いを見るのが一番だと、つくづくそう思います。<br />
<br />
<a name="more"></a>
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</content>
</entry>
<entry>
<title>『ジェノサイド』（高野和明）</title> 
  <link rel="alternate" type="text/html" href="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-04-23" />
  <link rel="service.edit" type="application/x.atom+xml" href="http://blog.so-net.ne.jp/atom/blog_id=224792/entry_id=52739511" title="『ジェノサイド』（高野和明）" />
  <modified>2012-05-19T02:45:35Z</modified> 
  <issued>2012-04-23 17:54:00+09:00</issued> 
  <id>tag:blog.so-net.ne.jp,2012:babahide.52739511</id> 
  <summary type="text/plain"> </summary> 
  <dc:subject></dc:subject> 

<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-04-23">
<![CDATA[
　有機合成化学を専攻する大学院生が、亡き父親から受け継いだ不可解な研究テーマを追ううちに国際謀略に巻き込まれてゆく。一方、中央アフリカに派遣された傭兵たちは、密林の奥地で驚くべきものと遭遇。両者をつなぐ糸の先には、人類の未来を左右する大きな秘密が隠されていた・・・。<br />
<br />
　ミステリとして「このミス」第一位を獲得、さらに日本推理作家協会賞を受賞、冒険小説として山田風太郎賞を受賞、そして本格SFとして『SFが読みたい!』ベストSF2011国内篇6位に選ばれた、ジャンル横断型の軍事サスペンス国際謀略小説。単行本（角川書店）出版は、2011年03月です。<br />
<br />
　ミステリー、冒険小説、SF、軍事サスペンスなど様々なジャンルの魅力を集大成した観があります。とにかく面白い。物語を構成する要素に新味はありませんが、定番的な設定やプロットを巧みに使いこなし、途中で読むのを止められない堂々たるエンターティメントを作り上げた手腕は驚嘆もの。ベストセラーになるのも無理はありません。<br />
<br />
　実際、後半に入ったあたりで強烈に引き込まれ、他のことをほったらかして夢中になって読みふけってしまいました。ひさしぶりに「日常生活に支障をきたすほど面白い小説」を読んだ気がします。<br />
<br />
　主なストーリーラインは二つ。まず、日本の大学院生が国際謀略に巻き込まれながら命がけで難病治療薬の開発に取り組むはめになる話。そして、傭兵たちが中央アフリカの密林に派遣され、そこで発生した新型疫病のアウトブレイクを阻止せよという奇怪なミッションを与えられる話。この二つの話がどう関係してくるのか、というのが前半の「引き」です。<br />
<br />
　おそらく多くの読者は、『アンドロメダ病原体』（マイクル・クライトン）や『復活の日』（小松左京）のような話に展開するか、さもなければ寄生型エイリアンによる侵略、あるいはゾンビものか、などと想像するでしょう。メインアイデアが明かされたところで、あっ、そっちだったか、いやまあSFでは珍しくない、というかむしろありふれたネタだけど、こういう使い方をしてくるのか、と感心することに。<br />
<br />
　後半になると、米国権力中枢や現地ゲリラ兵といった形で「ヒトという種が持つ最悪の側面」が主人公たちを追い詰めてゆきます。絶体絶命のピンチを綱渡りのようにして切り抜けてゆくものの、一難去ってまた一難、次から次へと絶望的な状況に追いやられる。<br />
<br />
　そのあまりの過酷さに、読者も主人公たちに強く感情移入して、何とか助かってほしい、生き延びてほしい、と願うようになります。こうなると読むのを中断するのは困難。どきどきはらはらしながら、最後までページをめくる手が止まりません。<br />
<br />
　実のところプロットもアイデアも人物造形もごくありふれたもので、独創性は皆無といってよいのですが、なにしろ組み立てがべらぼうに巧い。冒険小説、軍事サスペンス、国際謀略小説あたりを中心軸に、理系研究者の心情もうまく書かれているのでお仕事小説的な魅力もあり、仕掛けられた様々な謎と意外性がミステリ読者を満足させ、さらに「人類には地球の支配種たる資格があるか」といった小松左京的テーマがSFファンの気を惹きます。<br />
<br />
　小松左京といえば、個人的に、氏のある長篇（『復活の日』ではなく）を連想しました。もしかしたら作者も意識しているかも知れません。<br />
<br />
　余談ですが、ツングースカ爆発の現場では生物異常が発見され、黒塗りの車からはダークスーツ着用でサングラスをかけた黒服の男たちが降り立ち、ウィンドウズOSにはもともと国防総省によるバックドアが仕掛けられており、魔の三角海域で航空機が消えるとき海面が白く光るという、その手の定番ネタも満載。そういうのが好きな方にも向いています。これじゃあそのうちブラックヘリコプターとか飛ぶかもなあ、などと思っていたら何と・・・。<br />
<br />
　というわけで、ベストセラーを狙って書かれ、狙い通りに売れた、という感じの、どのジャンル読者をも満足させるスケールの大きなエンターティメント大作。軍事サスペンスや謀略小説は苦手という方を除き、どなたにも安心してお勧めできます。<br />
<br />
<a name="more"></a>
]]> 
</content>
</entry>
<entry>
<title>『ゴロツキはいつも食卓を襲う　　フード理論とステレオタイプフード50』（著：福田里香、絵：オノ・ナツメ）</title> 
  <link rel="alternate" type="text/html" href="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-04-20" />
  <link rel="service.edit" type="application/x.atom+xml" href="http://blog.so-net.ne.jp/atom/blog_id=224792/entry_id=52668035" title="『ゴロツキはいつも食卓を襲う　　フード理論とステレオタイプフード50』（著：福田里香、絵：オノ・ナツメ）" />
  <modified>2012-05-19T02:45:35Z</modified> 
  <issued>2012-04-20 17:52:00+09:00</issued> 
  <id>tag:blog.so-net.ne.jp,2012:babahide.52668035</id> 
  <summary type="text/plain"> </summary> 
  <dc:subject></dc:subject> 

<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-04-20">
<![CDATA[
　ヤクザ者が乱入してくるとき、一般家庭は常に食事中。逃走シーンは必ず厨房を通り抜ける。漫画や映画におけるステレオタイプ化した食事シーン、食品を用いた演出の定型を50個も取り上げて分析。全ての項目にオノ・ナツメさんのイラストが付いています。単行本（太田出版）出版は、2012年04月です。<br />
<br />
　「ゴロツキが食卓を襲っている。どうだろう、明確には思い出せないが、しかし、確かに過去に何回もこの場面を観たという記憶がないだろうか？」（単行本p.7）<br />
<br />
　・マヌケはフードを喉に詰まらせてあせる<br />
　・食いしん坊の寝言はいつも「うーん、もう食べられない」<br />
　・絶世の美女は何も食べない<br />
　・煙草を手放さないひとは、心に秘密を抱える傍観者<br />
<br />
　・動揺は、お茶の入ったカップ＆ソーサーをカタカタ震わせることで表現される<br />
　・驚きは、液体をブッと吹き出すことで表現される<br />
　・マグカップを真顔でかかえたら、心に不安があるか、打ち明け話がはじまる<br />
　・男前が水道の蛇口から直接水を飲んでいると、かわいこちゃんが話しかけてくる<br />
<br />
　・スーパーの棚の前でふたりが同じ食品に同時に手をのばすと、恋が生まれる<br />
　・カーチェイスではね飛ばされるのは、いつも果物屋<br />
　・逃走劇は厨房を駆け抜ける<br />
<br />
　あー、あるある、と思いませんか。<br />
<br />
　こういう風に、漫画やアニメや映画に登場する食品や食事のシーンがどのような演出に使われているのか、その類型を集めたのが本書です。著者はこの定型的な演出のパターンを「フード理論」と呼び、さらに最も基本となる法則を次の「フード三原則」にまとめています。<br />
<br />
　　第一原則　：　善人は、フードをおいしそうに食べる<br />
　　第二原則　：　正体不明者は、フードを食べない<br />
　　第三原則　：　悪人は、フードを粗末に扱う<br />
<br />
　つまり、登場人物の性格や位置づけを短時間にはっきり表したいとき、最も便利なのが「彼または彼女がどのようにフードを扱うか」というシーンを入れることだ、というわけです。<br />
<br />
　上記の原則を元に、個別の演出パターン（ステレオタイプフード）が50個も取り上げられています。<br />
<br />
　「バナナの皮で滑って転ぶ」、「酔っぱらい親父が十字に紐掛けした折り詰めをさげてふらふら歩く」、「遅刻、遅刻と呟きながら少女が食パンをくわえて走ると、曲がり角で転校生とぶつかる」など、あまりにステレオタイプ化が激しいため今やギャグとしてしか使えないようなパターンから、「家族会議が終わるきっかけは台所から漂ってくる焦げ臭いにおい」といった、言われてみればなるほどと思えるものまで、よくまあこれだけ集めたものだと感心させられます。<br />
<br />
　単に集めただけではなく、なぜその演出が効果を発揮するのか、についての考察も鋭い。「カーチェイスではね飛ばされるのは、いつも果物屋」なのはなぜか。「絶世の美女は何も食べない」という演出の背景にはどういう意図があるのか。納得のゆく説明がつけられています。<br />
<br />
　「繰り返し登場するようになるには、なるだけの意味がある。わたしたちにある種の真実を端的に突き付けてくるからだ。ゴロツキが食卓を襲うには、もちろんちゃんとした理由があるのだ」（単行本p.8）<br />
<br />
　宮崎アニメにおけるフード演出の細やかさについての分析。定型的演出は容易に思い浮かぶのに具体的にそのシーンが登場する作品がぱっと思いつかないのはどうして。最初にこの演出を発明したのはどの作品か。さまざまな興味深い話題が繰り広げられます。<br />
<br />
　そして、全ての項目に人気漫画家オノ・ナツメさんのイラスト（いかにも定型的なシーン）が付いているのが素晴らしい。<br />
<br />
　時代劇なら登場人物たちが小料理屋に集まり、警察ものなら警官たちがカフェに立ち寄り、大名は好物を列挙し、親子はワイングラスをぶつけ、旧友とはたき火をはさんでウイスキーを飲み交わす。なるほど、オノ・ナツメさんの作品は確かにステレオタイプフードの宝庫です。改めて読み返してみたくなってきます。<br />
<br />
　というわけで、まずオノ・ナツメさんのファンなら50枚を超えるイラスト目当てに購入しても問題ないでしょう。作品を創る人にとっては、演出のヒント集として実用的価値がありそう。もちろん単に「あるある、この演出」と思って読むだけでも充分楽しめます。一読すれば、この先、観たり読んだりした作品すべてが「ステレオタイプフード探し」の対象になってしまうかも知れません。<br />
<br />
<a name="more"></a>
]]> 
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</entry>
<entry>
<title>『ラン』（森絵都）</title> 
  <link rel="alternate" type="text/html" href="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-04-19" />
  <link rel="service.edit" type="application/x.atom+xml" href="http://blog.so-net.ne.jp/atom/blog_id=224792/entry_id=52656385" title="『ラン』（森絵都）" />
  <modified>2012-05-19T02:45:35Z</modified> 
  <issued>2012-04-19 17:05:00+09:00</issued> 
  <id>tag:blog.so-net.ne.jp,2012:babahide.52656385</id> 
  <summary type="text/plain"> </summary> 
  <dc:subject></dc:subject> 

<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-04-19">
<![CDATA[
　フルマラソンを完走すれば、死んでしまった家族に自力で会うことが出来ると知った日から、彼女の挑戦が始まった。孤立癖の強いヒロインがランナー仲間との交流を通じて少しずつ成長してゆく姿を描いた感動作。単行本（理論社）出版は2008年6月、私が読んだ文庫版（角川書店）は2012年2月に出版されています。<br />
<br />
　幼くして家族をすべて失い、天涯孤独の身となったヒロイン。他人との交流をなるべく避け、ひっそりと生きていた彼女だが、あるとき「あの世」に到達して家族と再会する方法を見つける。ただし、そのためにはフルマラソンに相当する距離をノンストップで完走しなければならないのだった。<br />
<br />
　かなり強引な設定で始まるスポーツ長篇です。何しろ、この世で生きて行くのが辛くて、あの世に逃げ込んで家族と暮らしたい、というむっちゃ後ろ向きな目的でランニングに励む、という話なのです。<br />
<br />
　最初はそれこそ死人のように暗い雰囲気をまとっていたヒロインですが、身体を鍛えているうちにどんどん高まる生命力。やがては一緒に走る仲間も出来て、苦手な人との付き合いや職場のイジメにも対処できるようになり、さらにはボーイフレンドも獲得。まるで幸運のペンダントか何かの宣伝みたいな展開に。<br />
<br />
　孤独癖の強い主人公が、仲間との交流を通じて次第に人間的に成長してゆく。そのシンプルで、ひねりのない真っ直ぐなストーリー展開に、むしろ意表を突かれる思いです。ここまでストレートな長篇小説って、あまり読んだことがない。<br />
<br />
　というわけで、仲間の友情に支えられながら目標に向かって努力する若い女性の姿を真正面から書いたストレートなスポーツ小説、という路線が大好きな読者ならきっと泣けるであろう感動作です。個人的には、やや物足りませんが。<br />
<br />
<a name="more"></a>
]]> 
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<title>『聖女の救済』（東野圭吾）</title> 
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  <modified>2012-05-19T02:45:35Z</modified> 
  <issued>2012-04-18 17:24:00+09:00</issued> 
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<![CDATA[
　遠く離れた場所にいる犯人が、密室内にいる特定の人物を、何の痕跡も残さずに毒殺する。そんなことがありえるだろうか。超常現象としか思えない奇怪な事件の数々に天才物理学者・湯川学が挑む「ガリレオシリーズ」の第二長編が文庫化。単行本（文藝春秋）出版は2008年10月、私が読んだ文庫版は2012年04月出版です。<br />
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　自室で毒殺された会社社長。現場を見た女性刑事は夫人が怪しいと感じる。だが夫人には鉄壁のアリバイがあった。現場は密室、あらかじめ毒を仕込んであった痕跡は見つからない。不可能としか思えない遠隔毒殺トリックの謎に、ガリレオ先生こと湯川学が挑む。<br />
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　というわけで、探偵ガリレオシリーズの長編です。最初から犯人を明示し、登場人物もわずか数名で、ほとんど遠隔毒殺トリックへの興味だけで読者を最後まで引っ張るというシンプルで力強い構成。<br />
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　もちろん最後に明かされるトリックはあっと驚く見事なものですが、それが動機、人物造形、ドラマ性、そして意味深なタイトル、といった要素と分かちがたく結びついているところが最大の魅力です。<br />
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　こういう大技トリックの場合、仕掛けが解き明かされると途端に白けてしまう作品も多いのですが、真相を知ることでそこから感動が生じるよう念入りに工夫されています。さすがはベストセラー作家。<br />
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　トリックがあまりにも（小説のプロットとして）読者の心をつかむため、むしろどうやって証拠を手に入れるかという点が問題になります。ここまでやった犯人が凡ミスで逮捕されたりするのは、読者として納得できません。<br />
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　「おそらく君たちは負ける。僕も勝てないだろう。これは完全犯罪だ」<br />
（文庫版p.289）<br />
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　湯川にそこまで言わしめた完璧な犯罪。犯人の誤算がどこにあったかは最後に分かりますが、このための大胆な伏線の張り方には感心させられました。トリックより何より、こういった工夫にこそミステリの面白さがあるような気がします。<br />
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<title>『謎解き超常現象III』（ASIOS）</title> 
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  <modified>2012-05-19T02:45:35Z</modified> 
  <issued>2012-04-17 17:14:00+09:00</issued> 
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<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-04-17">
<![CDATA[
　ASIOS （Association for Skeptical Investigation of Supernatural : 超常現象の懐疑的調査のための会）の謎解きシリーズ最新作。分野を問わず有名どころの超常ネタを取り上げて徹底検証。子供の頃に信じていたあの話、この事件、実はこんなんだったのか、という楽しい驚きまみれの一冊。単行本（彩図社）出版は2012年04月です。<br />
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　UFO、UMA、超能力、大予言など様々な超常現象を取り上げ、まずは広く知られているストーリーを「伝説」としてまとめ、続いて「真相」としてその検証結果を解説する、という二段構成で楽しませてくれる「謎解き」シリーズの新刊です。<br />
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　「伝説」のストーリーを読んで「あったあった。子供の頃、マジで信じて怖がったなあ」などと懐古にふけり、あるいは「あ、それ最近よく聞くけど何なの結局」などと好奇心を刺激され、続いて「真実」を読んで「え、そうだったの。何それ、しょぼーん・・・」と驚き脱力しつつも、実は意外に大喜び。一ネタで二度おいしい本。<br />
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　取り上げられている総計34個の話題も、ごく最近のトピックから懐かし系のネタまで幅広く選ばれており、心の琴線に触れます。主な項目をざっと挙げてみましょう。<br />
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　サイ・ババの奇跡、バクスター効果（植物にも意識がありテレパシーに反応する）、日月神示の予言、田代峠の怪奇事件、リンカーンとケネディの不思議な一致点。<br />
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　ファフロツキーズ（空からの奇妙な落下物）、アズテックUFO墜落事件、イースタン航空機事件、ベルギーのUFOウェーブ、クラリオン星人とのコンタクト、ベテルギウス爆発による地球滅亡説、エレーニン彗星地球衝突説、地球空洞説。<br />
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　「スクリューのガー助」の写真、シーサーペントの写真、屋久島の精霊の写真、ヒバゴン、トスカーナのエクスカリバー、トンカラリン、源義経＝ジンギスカン説。<br />
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　全ての項目について知っていたという方は、かなりの通でしょう。個人的に、日月神示、田代峠、トスカーナのエクスカリバー、トンカラリンなど本書で初めて知った項目も多く、勉強になりました。何の勉強かはさておき。<br />
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　また、ヒバゴンの謎を解くため現地に取材に行った記事など、独自調査によるレポートが素晴らしい。やっぱり、現地に行って実際に話を聞く、という姿勢は大切ですよね。また、源義経＝ジンギスカン説の記事も、この奇説それ自体の歴史を深く追っていて、読ませます。<br />
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　自分ではお馴染みだと思っていたネタについても意外に知らないことが多く、何度も驚かされました。例えば「惑星クラリオン」は太陽系内にあると思っていたのですが、後にクラリオン星人が「地球から15万光年離れた別の銀河系」にあると言い出したとのことで、そっか、それってつまり大マゼラン星雲のイスカンダルだと云いたいわけですね、分かります。<br />
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　それから、さりげなくリアル犬神明氏が登場していてびっくり。<br />
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　もちろんまっとうな読者でも楽しめるように工夫されているので、オカルト界隈やスピリチュアル方面の定番ネタを知っておきたいだけ、という方にもお勧め。1巻から3巻、それに『謎解き古代文明』も読めば、ちょっとしたオカルト通になれそうです。<br />
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