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『another BATIK 『子どもたちの歌う声がきこえる』 『波と暮らして』』(黒田育世、佐多達枝) [ダンス]

 2018年2月3日は、夫婦で世田谷パブリックシアターに行って黒田育世さん率いるBATIKの公演を鑑賞しました。佐多達枝さん振り付けによる新作『子どもたちの歌う声がきこえる』と、2015年に初演された 『波と暮らして』再演のダブルビルです。上演時間は、『子ども』が50分、『波』が70分、総計2時間(+休憩時間20分)。


『波と暮らして』

 メキシコの詩人オクタビオ・パスの短篇小説『波と暮らして』を原作とするデュエット作品。2015年に初演されたものの再演ですが、初演を見逃していたので個人的には今回が初めての鑑賞です。


[キャスト他]

演出: 黒田育世
振付・出演: 柳本雅寛、黒田育世
美術: 松本じろ


 ショパンの夜想曲(アナログレコードの音に針とび等のノイズを混ぜたノルタルジックな音源)が流れるなか、原作における「僕」を柳本雅寛さんが、「波」を黒田育世さんが、それぞれ踊ります。海辺で「波」になつかれた男が、仕方なく彼女を連れ帰って奇妙な同棲生活を始めるのですが……。

 周囲をブルーシート(海を連想させます)で囲まれた空間。アナログレコードプレーヤーを除けばほとんど何もない寒々しい印象を与える部屋で、子どものように無垢で無邪気に男を翻弄する「波」、男の心が離れてゆくことに気づいて愁嘆場を演じる「波」、男の心を取り戻したと思って喜びはしゃぎ戯れる「波」。黒田育世さんの変幻自在で官能的な動きを、柳本雅寛さんがしっかりサポートします。

 とはいえ、黒田育世さんの苦悩の表現(叫び声、うめき声と共に、激しく同じ動作を繰り返す悲嘆のダンス)があまりにも胸に刺さるために、どのシーンも悲しく、切ない印象で上書きされてしまった感があります。もの悲しい犬の遠吠えが耳から離れません。


『子どもたちの歌う声がきこえる』

 黒田育世さんを含むBATIKのメンバー7名と、客演の男性ダンサー3名、合わせて10名が踊る幻想的な作品です。


[キャスト他]

振付: 佐多達枝
台本: 河内連太
振付助手: 斎藤隆子
出演: 
黒田育世、伊佐千明、大江麻美子、大熊聡美、熊谷理沙、田中すみれ、政岡由衣子(以上BATIK)
小出顕太郎(岩田バレエ団)、中弥智博(東京シティバレエ団)、牧村直紀(谷桃子バレエ団)


 投影された抽象絵画(深い森のようにも、カビのコロニーの拡大イメージにも見えます)を背景に、全員がフード付きの白い衣装を着て踊ります。人間界とは関わりのない、深い森の精たちが踊っているのを、こっそりのぞき見ているような印象です。単純に楽しく踊っているかと思うと、大きなものに怯えたり、割とあっさり死んでしまったり、けっこう感情を揺さぶってきます。

 森の木漏れ日を連想させる美しい絵を背景に、手前に倒れて死んでいるシーンはちょっと忘れがたいものが。

 全員が無個性な白い服で登場するにも関わらず、黒田育世さんが登場すると場の雰囲気が変わります。同じ振りでも、非常に細かく、精微に動いていて、どうにも「怖い」という印象が残りました。



タグ:黒田育世
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『猫は宇宙で丸くなる 猫SF傑作選』(中村融:編集・翻訳) [読書(SF)]

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 ここにお届けするのは、猫にまつわるSFとファンタジーを集めた日本オリジナル編集のアンソロジーである。とはいえ、「猫にまつわるSFとファンタジー傑作選」では長すぎるので、副題には「猫SF傑作選」と銘打った。
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文庫版p.432


 マシュマロを焼く猫、人語を話す猫、宇宙戦艦に猫パンチかます猫、人間を出し抜こうと画策する猫。地上で、宇宙で、それぞれに魅力的な猫が活躍するSFとファンタジーの海外短篇を10篇収録した傑作アンソロジー。文庫版(竹書房)出版は2017年9月です。


[収録作品]

『パフ』(ジェフリー・D・コイストラ)
『ピネロピへの贈りもの』(ロバート・F・ヤング)
『ベンジャミンの治癒』(デニス・ダンヴァーズ)
『化身』(ナンシー・スプリンガー)
『ヘリックス・ザ・キャット』(シオドア・スタージョン)
『宇宙に猫パンチ』(ジョディ・リン・ナイ)
『共謀者たち』(ジェイムス・ホワイト)
『チックタックとわたし』(ジェイムズ・H・シュミッツ)
『猫の世界は灰色』(アンドレ・ノートン)
『影の船』(フリッツ・ライバー)


『パフ』(ジェフリー・D・コイストラ)
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 夏がすぎ、娘は目に見えて成長をつづけたが、パフは違っていた。いつ見ても永遠の子猫のままで、四六時中跳ねまわり、なにを見ても大喜びで、それはいかにも子猫らしかった。
 生物工学的に加えられた差異以外にも、パフにはひどく特別な点がある、とわたしがはじめて気づいたのは、彼がマシュマロを焼いているところに出くわしたときである。
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文庫版p.15

 成猫にならないよう遺伝子操作された子猫。だが生涯で最も学習能力の高い年齢のまま何年も生きている子猫は、制約なしに学習を続け、ひたすら知能を向上させてゆく。子猫がマシュマロを焼いているのを見たとき、語り手はそれが意味する危険性に気づいたが……。人為的に知能を向上させられた猫による復讐譚。ややホラーテイストであるにも関わらず、賢い猫がすごく可愛い。


『ベンジャミンの治癒』(デニス・ダンヴァーズ)
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 なぜベンが生き返り、そして生きつづけているのか、ぼくは知らない。手掛かりひとつない。それに答えが得られるまでは、以上が結論だ。神にはなにか計画があるのかもしれず、その場合なんの明確な指示も受けていないぼくは、なにをしようとその計画を台無しにするだろう。だが、もし神になんの計画もないのなら、ぼくは現状以外のことを考えだす義務が自分にあるとは感じない。だれもが死ぬという現状以外のことを。それが世の常というものだ。ベンを例外として。
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文庫版p.79

 奇跡が起きた。死んでしまった猫が蘇ったのだ。それからずっと、歳をとらない猫と一緒に過ごしてきた語り手。やがて歳月は流れ、ついに誰とも家庭を持たないまま猫と二人だけで生きてきた語り手の命がまさに尽きようとしているとき、猫がとった行動とは。ぼろぼろに泣けるファンタジー作品。律儀な猫がすごく可愛い。


『ヘリックス・ザ・キャット』(シオドア・スタージョン)
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「ま、きみが愚かなのはしかたがないが、それ以上愚かになることはないよ、ピート。吾輩が変わったと思っているようだが、それは違うね。きみにとっては、そのことをはやく理解するにこしたことがない。それと、頼むから吾輩に対して感情的になるのはよしてくれないか。退屈だ」
「感情的?」ぼくは叫んだ。くそったれ、たまにちょっとくらい感情を表に出すのがなぜいけない? とにかくいったいどうなってるんだ? この家の主人はいったいだれだ? だれが家賃を払ってる?」
「そりゃあきみだよ」とヘリックスは穏やかに言った。「おかげでますますきみがバカに見えるがね。吾輩なら徹底的に楽しめることでないかぎり、なにひとつしないのに。さあ、もういいかげんにしたまえ、ピートくん。子どもじみたふるまいをする年じゃなかろう」
 ぼくは重い灰皿をひっつかみ、猫に向かって投げつけた。ヘリックスは優雅に身を伏せて灰皿をかわした。「おやおや! そこまでしてバカの実例を見せてくれなくても」
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文庫版p.160

 とある事情で人語を話すようになった猫。当然ながら一人称は「吾輩」で、飼い主のことは下僕あつかい、上から目線で馬鹿にしてくる。飼い主と猫とのカトゥーンめいた戦いをユーモラスに描く作品。生意気な猫がすごく可愛い。


『宇宙に猫パンチ』(ジョディ・リン・ナイ)
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戦闘態勢にあるケルヴィンの背中の毛が逆立ち、尻尾は瓶洗い用のブラシさながらに太くふくらんでいる。ちっぽけな生きものが自分の千倍も大きな敵を威嚇するために、せいいっぱい自分を大きくみせようとしている姿に、ジャーゲンフスキーは心を打たれた。
「ふんぎゃあぁぁぁぁぁ!」ケルヴィンはわめいた。その声は怒りの度合いを示すかのように高く低く響き渡った。目は巨大なメインスクリーン上の赤い、ヘビのような戦艦をしっかと見据え、ふくらんだ尻尾が前にうしろに揺れている。
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文庫版p.206

 人類の宇宙船が、敵性エイリアンの宇宙戦艦から攻撃を受ける。まず船内の乗組員をすべて麻痺させた敵は、次に船体を破壊すべくレーザー砲を向けてくる。だが、船内には麻痺していない獣が一匹残っていた。怒りのあまり飛び上がって、メインスクリーンに映る敵戦艦の鼻先に、猫パンチ、猫パンチ、猫パンチ。それを火器管制コンピュータは攻撃命令と解釈した……。船猫がたった一匹で宇宙戦艦と戦う痛快なスペースオペラ作品。獰猛な猫がすごく可愛い。


『共謀者たち』(ジェイムス・ホワイト)
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第三生物研究室――巨大な〈船〉の半分以上も離れたところにある――で〈大きな者たち〉や、中継任務についていない〈小さな者たち〉に囲まれているホワイティを思いうかべたとたん、フェリックスはしばし畏敬の念に襲われた。その全員が〈脱出〉のために働いているのだ。そして第三研究室を種子貯蔵庫、中央司令室、機関室のような場所とつなげている別のテレパシー中継役たち……。外の通廊にいる〈小さな者〉からのじれったげな思考を捉えて、フェリックスはあわてて心を報告にもどした。
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文庫版p.222

 恒星間宇宙船に積み込まれていた実験動物たちが、無重力環境に長くさらされたため、知能を発達させた。自分たちの運命に気づいた彼ら、すなわちネズミ、モルモット、そしてペットである鳥と猫は、宇宙船からの脱出計画を立てる。人間の乗組員に絶対に気づかれないよう準備を進めなければならない。だが、猫はその凶暴性ゆえに他の共謀者全員から不信感を持たれていた……。動物たちを主役にしたサスペンスフルな『大脱走』。悩める猫がすごく可愛い。



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『日本懐かしオカルト大全』(寺井広樹、白神じゅりこ、並木伸一郎:監修) [読書(オカルト)]

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疑うことを知らない多感な少年たちにとってそれらは、驚きと興奮の連続、そして最高の娯楽だった。
曖昧な存在、不確かな情報に寛容であった時代。
当時の世相を反映しつつ人びとの好奇心をさらった、味わい深い「昭和のオカルト」について振り返る。
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帯のアオリより


 UFO、UMA、幽霊、超能力、超常現象、大予言……。1970年代あたりの何でもアリだった昭和オカルトの世界を懐かしむ。単行本(辰巳出版)出版は2017年12月です。

 日本懐かし大全シリーズの一冊で、すなわち懐かしさを求めて昭和オカルトネタを集めた本です。当然ながら、新しい情報を求めるのは筋違いというもの。

 ただ、個人的にちょっと面白いと思ったのは、著名人たちへのインタビューです。


超常現象研究家 並木伸一郎
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今は何でもパソコンでメイキングできますからね。情報はたくさんあるけれどリアリティがないというのが、現代のオカルトの特徴です。まあ、国際宇宙ステーションがUFOとニアミスして接触するとか、そんなよっぽどすごい事件が起きれば、オカルトに新たな展開があるかもしれません。
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UFOディレクター 「宇宙塾」主催 矢追純一
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地球上に72億人いる中で、自分と同じ人間は1人もいない。自分は72億分の1という貴重な存在なんです。UFOを探すより、自分しか持っていないものを探したほうがいいでしょう?
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漫画家 日野日出志
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私は超常現象は99.9パーセントないと思っています。超常現象を否定するとロマンがないと言われますが、私は科学者の人たちが日々研究を重ねて謎を解明していく作業のほうが、よっぽどロマンがあると思うのです。
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月刊「ムー」編集長 三上丈晴
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――今後の『ムー』の展望があれば教えていただきたいのですが?

 世界征服かな。

――全世界の人を読者にしたいですよね(笑)

 そうなったら世も末ですよ(笑)。真実は日の目を見てはいけないのです。
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UFO 超常現象研究家 たま出版社長 韮澤潤一郎
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「スペースプログラム」というのは、地球全体の進化の計画なんです。ロズウェル事件で墜落したUFOの中に、その原文があったんですよ。それをアメリカの諜報機関が分析したところ、どうやら人類は終末的な最終ステージにきているということがわかった。我々自身も太陽系から入植して来た宇宙人の子孫。だから今、宇宙人は地球人類を救済しに来ているのです。オカルトを一言で言えば、宇宙の仕組みなんです。今、人類は、「宇宙の大きな意志の中の一環として存在している」ということを知る段階にきているんです。来るべき宇宙的危機を乗り越えるためにも、今、我々自身の意識の変化が迫られているのでしょう。
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 さめた、苦笑いめいた発言が続くなかで、ひたすらテンション高く語る韮澤潤一郎さんのぶれなさには感慨深いものがあります。


【主な内容】

「UFO・宇宙人」

・昭和UFO・宇宙人衝撃事件ダイジェスト
・ケネス・アーノルド事件
・ロズウェル事件
・MJ-12発足
・マンテル大尉事件
・プロジェクト・ブルーブック
・世界初のコンタクティ ジョージ・アダムスキー
・「空飛ぶ円盤研究会」発足
・ヒル夫妻誘拐事件
・キャトル・ミューティレーション
・アポロ11号月面着陸成功
・介良事件
・甲府事件
・四国に出現した宇宙人
・「火星人面岩」発見
・日航ジャンボ機UFO遭遇事件

「心霊」

・大霊能者 宜保愛子
・トラウマ心霊番組『あなたの知らない世界』
・心霊番組の先駆者 新倉イワオ
・心霊写真のパイオニア 中岡俊哉
・髪の毛が伸びる不思議な市松人形 お菊人形
・昭和心霊事件簿
・海外の心霊写真
・近代心霊ブームを彩った霊能者たち

「UMA」

・ネッシー
・ニューネッシー
・世界のネッシー大集合!!
・イエティ
・ビッグフット
・ツチノコ
・ヒバゴン
・懐かしUMA大集合!!

「超常現象」

・ミステリー・サークル
・ピラミッド・ミステリー
・ナスカの地上絵
・バミューダ・トライアングル
・秋田の涙を流す聖母マリア

「超能力」

・ユリ・ゲラー
・“ゲラー・ショック”空前の超能力ブーム到来
・昭和超能力ブームを彩る超能力者たち

「予言」

・世紀の大予言者ノストラダムス
・ファティマの予言

「メディア」

・テレビ番組
・映画
・漫画
・児童書
・雑誌

「都市伝説・怪談」

・三大都市伝説 口裂け女/首なしライダー/人面犬
・コックリさん
・テケテケ
・ムラサキカガミ
・道了堂跡
・深泥池
・青山霊園
・羽田空港赤鳥居
・鈴ヶ森刑場跡
・ホテルニュージャパン跡地
・掛け軸に描かれた生首

「コラム」

・ナチスとUFO
・アイドルの幽霊
・日本のミイラ
・歩くモアイ像
・火星を遠隔透視
・昭和の2大予言者

「インタビュー」

・超常現象研究家 並木伸一郎
・UFOディレクター・「宇宙塾」主催 矢追純一
・UFO超常現象研究家・たま出版社長 韮澤潤一郎
・漫画家 日野日出志
・月刊『ムー』編集長 三上丈晴

「鼎談」

・昭和オカルトから読み解くオカルトの未来


タグ:並木伸一郎
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『journey knowledge 台湾旅行情報2018』(千屋谷ユイチ) [読書(教養)]

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検索サイトで無駄に上位にいるくせに中身のない某知恵袋や、肝心な情報が書かれていない個人ブログ等を延々と検索し続けるのが嫌になったのが制作動機です。著者自身で利用することが主目的なため情報に偏りがあります。
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同人誌p.3


 市販のガイドブックでは省略されがちな基本情報を、現地調査を行いまとめた台湾旅行情報本の最新版。同人誌出版は2017年12月です。

 更新情報、サンプル、通販リンクなどは以下のページへ。

  journey knowledge台湾旅行情報2018 サポートページ
  http://cytn.info/jktw2018_support/


目次

「入出国」
 査証/護照/入出境/退税/海關

「交通」
 日本―台湾航空路線/台灣國内線/電子票證/高鐵/台鐵/捷運/市區公車/公路客運・國道客運/フリーパス類/區域交通/台北駅周辺 バスアクセスマップ/機場交通/渡輪/計程車/公共自行車/租車

「通信」
 公用電話/國際電話/國際漫遊/預付SIM/公衆上網/郵件/包裹

「その他」
 飯店・旅社/自助洗/便利商店/儲物・行李/地址/貨幣/外幣交換/信用/電力・水/氣候/安全/文化・習慣/日期/假期/語言

「付録」
 トラブルシューティング


 内容全般については前記のサポートページで確認して頂くとして、ここでは個人的に「おおっ」と思った、観光ガイドブックに乗ってない情報(役に立つとは限りません)をいくつか引用しておきます。


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「台北松山機場」

 開港時間が5:00~23:00なので早朝便に合わせての空港泊はできない。台北車站からタクシーを利用すると220元程度かかる。(中略)機場から敦化北路を約3Km南下すると24時間営業の誠品書店敦化店があるので夜明かしに利用できなくもない。
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同人誌p.9


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「水道」

 ガイドブック等では飲用に適さない、となっている。ただ、実際に外に飲み物買いに行くのが面倒で台北市内のドミトリーでコップ2~3杯程度飲んでみたが、何となく金属臭さを感じたものの、それ以降特に体調に変化はなかったので味はともかくとして飲用にしてもそこまで問題ないレベルだと言うのが個人的な結論。
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同人誌p.69


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「立法院・台北市政府・交流協会周辺」

 政治的に面倒な人たちが集まることが多いため、必要がなければ近寄らない方が良い。
 特に立法院周辺はテント村のようなものがあったり、赤い国旗を掲げてうろうろしている人達が多い。
 また、この手の人たちは日本を糾弾対象にしていることが多いため、拡声器で罵声を浴びせてくることもある(大抵は中国語で叫んでいるが稀に怪しい日本語で叫んでくることも)。直接絡んでくることはこちらが抗議や反撃に及んだりしなければまずない。
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同人誌p.70


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「颱風(台風)」

 台湾人は台風慣れしすぎていて逆に防災意識が低くなっているという指摘もあるので(現に停班停課を利用して屋内の娯楽施設へ向かう人は多い)、人が出歩いているから大丈夫とは限らないので台風来襲中に外出しなければならない場合は細心の注意を払う必要がある。
 繰り返しにはなるが、建物のメンテナンスが甘く、建て付けの悪い看板などが街中を飛び交うことも多い。
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同人誌p.72


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「語言」

 実際のところ「悠好」「謝謝」「對不起」の挨拶や返事と「没有」が聞き取れれば大きなトラブルにでも巻き込まれない限り何とかなってしまうことが多い。
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同人誌p.74



タグ:台湾 同人誌
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『イヴのいないアダム』(アルフレッド・ベスター、中村融:編) [読書(SF)]

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「そうですね、その新鮮な題材に飽くなき飢えをいだいているという点ですが、なぜほかの作家のように自分の知っている題材で作品を書くことに満足しないのですか? なぜ狂ったようにユニークな題材を――まったくの未踏の分野を求めるんです? なぜわずかな目新しさに法外な代価を喜んで払おうとするんです?」
「なぜかって?」ブラウは煙を吸いこみ、食いしばった歯の隙間から吹きだした。「きみが人間ならわかる。その、人間じゃないんだろう……?」
「その質問には答えられません」
「それなら理由を教えよう。生まれてからずっとぼくを苦しめてきたもののせいだ。人間は生まれつき想像力をそなえている」
――――
文庫版p.302


 長篇『分解された男』『虎よ、虎よ!』で名高い米国SF界の鬼才、アルフレッド・ベスターの日本オリジナル短篇傑作選。文庫版(東京創元社)出版は2017年11月です。


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先にあげた二長篇は、いずれも大胆なタイポグラフィの実験をまじえて、超能力者の心理を迫真的に描きだした傑作であり、華麗な未来社会の描写とあいまって、後世のSFにおよぼした影響には絶大なものがある。おそらくこの二作がなかったら、サミュアル・R・ディレイニーやマイケル・ムアコック、あるいはウィリアム・ギブスンやブルース・スターリングの諸作もなかっただろう。
 だが、二大長篇の陰に隠れて、その短篇群が見過ごされているとなったら、黙ってはいられなくなる。ベスターの短篇は、長篇とは趣がちがうものの、これはこれで珍重すべき逸品ぞろいなのだ。
――――
文庫版p.391


 2004年に河出書房新社より刊行された単行本『願い星、叶い星』収録の8篇に新訳2篇を増補し、改題文庫化。これだけでベスターの短篇代表作を網羅できるという充実した一冊です。


[収録作品]

『ごきげん目盛り』
『ジェットコースター』
『願い星、叶い星』
『イヴのいないアダム』
『選り好みなし』
『昔を今になすよしもがな』
『時と三番街と』
『地獄は永遠に』
『旅の日記』
『くたばりぞこない』


『ごきげん目盛り』
――――
「じゃあ、なんであの子を殺したんだ?」ヴァンデルアーがわめいた。「刺激のためでなかったら、なんで――」
「念のため申しあげますが」とアンドロイド。この手の二等船室は防音ではありませんよ」
 ヴァンデルアーは革紐を落とし、荒い息をつきながら、所有する生きものをじっと見つめた。
「なんでやったんだ? なんであの子を殺したんだ?」とわたしは訊いた。
「わかりません」とわたしは答えた。
――――
文庫版p.15

 普段は正常に機能しているのに、何かのきっかけで突然おそるべき殺人マシンと化してしまうアンドロイド。そんなアンドロイドと共に星から星へと逃亡の旅を続ける男。やがて警察に追い詰められた二人は……。凶悪犯罪、逃亡劇、盛り上がるサスペンスと並行して、一人称の混乱が読者の心に引っ掛かりを残しつつ、最後のクライマックスへとなだれ込んでゆく。ストーリー展開と文体上の実験を見事に融合させた傑作。


『願い星、叶い星』
――――
「例の少年には武器がある。自分で発明したなにか。ほかの連中のようにばかげたなにかだ。(中略)その子は天才だ。危険きわまりない。どうすればいいんだ?」
――――
文庫版p.92

 少年は人類をはるかに超越する天才だった。その行方を追う教師は、犯罪のプロと手を組んで彼を探し出そうとする。だが、次々と返り討ちにあって姿を消してゆく一味のメンバー。少年が持っている能力とは何か。ミュータントテーマの定番的展開をうまくひねった作品。


『イヴのいないアダム』
――――
 それが海であることはわかっていた――古い海のなごり、さもなければ、できかけの新しい海だと。しかし、それはいつの日か、乾いた生命のない岸に打ち寄せる、空っぽで生命のない海になるだろう。この星は石と塵、金属と雪と氷と水の惑星になるだろう。だが、それですべてなのだ。もはや生命はない。彼ひとりではどうしようもない。彼はアダムだが、イヴはどこにもいないのだ。
――――
文庫版p.118

 無謀な実験のせいで破滅した地球。荒涼とした終末風景のなかをひたすら這い続ける男。目指すは海。だが、もはや人類は彼一人しか残されておらず、生物の絶滅は確定しているというのに、なぜ海を目指すのか。それは彼自身にも分からなかった……。地球最後の人間テーマですが、その迫力に驚かされます。


『昔を今になすよしもがな』
――――
日付――1981年6月20日。氏名――リンダ・ニールセン。住所――セントラル・パーク模型船用池。職業または勤め先――地球最後の男。
「職業または勤め先」については、はじめて図書館に押しいったときから、しっくりこないものを感じていた。厳密にいえば、彼女は地球最後の女だが、そう書いたら、女性優位主義的なきらいがあるような気がするし、「地球最後の人物(パーソン)」と書いたら、酒をアルコール飲料と呼ぶみたいにばかげて聞こえる。
――――
文庫版p.151

 何らかの異変により人類は消滅。生き延びた最後の男女が出会う。同じく地球最後の人間テーマですが、無人の街で好き勝手する気の狂った男女、という設定だけでぐいぐい読ませるパワーが凄い。


『時と三番街と』
――――
「インチキして、ゲームに勝って楽しいですか?」
「ふつうは楽しくない」
「ディスニーなんでしょう? 退屈だ。飽きあきする。意味がない。非調和的です。あなたは正直なやりかたで勝ちたかったと思う」
「だろうな」
「それなら、この本を見たあともそう思うでしょう。あなたの行きあたりばったりの人生を通じて、あなたは人生というゲームを正直にプレイしたかったと思うでしょう。その本を見たことをヴァーダッシュされる。後悔される。われわれの偉大な詩人・哲学者、トリンビルの名言を身にしみて思いだすことになる。彼は明晰でスカゾンな一行にそれを要約しました。『未来は勝ちテコンされるものである』とトリンビルはいったのです。ミスター・ナイト、インチキをしてはいけません。お願いですから、その年鑑をわたしにください」
――――
文庫版p.224

 書店で統計年鑑を購入した男。だが謎めいた相手が現れて、その年鑑はずっと未来の版であり、手違いでこの時代に紛れ込んだものだと告げる。これからの世界の趨勢があらかじめ分かってしまう本。うまく活用すれば富も名声も思いのまま。それを無償で自主的に返してほしいと説得する相手に、男は迷うが……。タイムパトロールテーマですが、会話に混入する未来語(たぶん)がよい味を出しています。オチもクール。


『地獄は永遠に』
――――
「あなたがたひとりひとりが、好きなようにこしらえていい現実を。あなたがたご自身が作る世界を提供しましょう。そのなかでミセス・ピールは喜んで自分のご主人を殺せる――それなのに、ミスター・ピールは自分の奥方を手放さずにいられるのです。ミスター・ブラウには作家の夢である世界を提供し、ミスター・フィンチリーには芸術家の創造力を――」
――――
文庫版p.255

 放蕩のかぎりを尽くしていた数名の悪徳グループの前に現れた悪魔(たぶん)が「皆さんそれぞれの望んでいる世界を創り、永遠にその理想現実の中で生きられるようにしてあげましょう」と提案してくる。しかも無償で。
 自分が望んだ世界(内世界?)に転移したメンバーがそれぞれに辿る皮肉な運命を描く作品。メンバーのなかに作者自身をモデルにしたと思しき人物(生年月日がベスターと一致する作家)がいて、饒舌に自分語りするのが興味深い。



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