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『ひょうすべの約束(「文藝」2016年夏号掲載)』(笙野頼子) [読書(小説・詩)]

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国を捨てるのだ。自分の日記の中の、人喰い国、ヘイト国家、戦争暴力の、反社会内閣を。
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文藝2016年夏号p.298


 シリーズ“笙野頼子を読む!”第103回。

 子殺し人喰い妖怪ひょうすべにひょうすべられる国にっほん。埴輪詩歌は女人国ウラミズモの移民審査を受けようとしていたが……。だいにっほん前史(つまり今のこの国の現実そのものだぜまったくそ嫌!)をえがくシリーズ第三弾ついに登場。

 前作から三年以上も待たされましたが、ついに第三弾(おそらく完結篇)が発表されました。ちなみに、これまでに発表された「ひょうすべシリーズ」の紹介はこちら。


  2012年10月08日の日記
  『ひょうすべの嫁(「文藝」2012年冬号掲載)』
  http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08

  2013年01月07日の日記
  『ひょうすべの菓子(「文藝」2013年春号掲載)』
  http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2013-01-07


 何というか、あっという間に現実化してしまった、ひょうすべ。わが国はにっほんとなり、やがてだいにっほんへと劣化してゆきます。はやすぎる……(笙野ギドウ談)


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 このひょうすべ、本人たちは表現の自由をすべて守ると言っていますが、守るのはただひとごろし(ヘイトスピーチ)の自由とちかんごうかん(少女虐待や女性差別)の自由だけでした。そしてそれ以外については一切、何もしませんでした。
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文藝2016年夏号p.292


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……我が国は国連を脱退しました。脱退の理由は国連の人々が国籍差別と女子高生いじめをやめろ、と言ってきたからです。
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文藝2016年夏号p.298


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いまや難病患者も、すっかり「減りました」。でもそれはひょうすべが殺したのでした。新聞には病人が「減り」国民が健康になったという統計が出ています。既に国産品はロリエロだけです。今やパン民は自給の野菜もろくにないままにエロコンテンツばかり作らされています。むろんその一次生産は嫌がる女性を素材にしてひょうすべがやります。にっほんはヘンタイエロプランテーションと呼ばれ、世界中の笑いものに……。
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文藝2016年夏号p.300


 差別やヘイトスピーチが黙認どころか推奨され、「アート」と称する弱いものいじめがまかり通り、マスコミは何やら忖度しらんぷり。なーんだ言ってもいいんだやってもいいんだ。子供の貧困、六人に一人。いつの間にか「植民地人」として蹂躙されている私たち。思い起こせば、あのときに。


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そんな事になったのは私が九歳の時、二〇一六年、六月です。ひょうすべさんが日本にやって来た時。そして、そこから今までに戦争が二回もあった、という事です。
 だけど「戦死者はゼロ」と先生は言っていた。また新聞も教科書も何も書きません。にっほんは前の戦争法案の時に「生まれ変わった」のです。戦争がその時から出来るようになった。国名も日本からにっほんという間抜けな名に変わった。内閣は人喰い妖怪のひょうすべとすり変わった。
「それは世界企業という名の妖怪である」とおばあちゃんは英訳の共産党宣言をぶん投げてけーっ、と言いました。
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文藝2016年夏号p.293


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TPPの中に隠されていた毒ISD条項というものがその原因なのでした。しかし、昔日本という国があった時は、つまり「オレの勝手だろ」と言って「家の中の事は好きに出来た」。なのにひょうすべは要するに「ハンコついただろうが勝手に出来ねえよ約束約束!」って怒ってきたのでした。じゃ、自国を自国の勝手にする事が出来ない国? それ植民地かも? ていうかハンコついたの誰? それは選挙の約束を破った当時の政府でした。
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文藝2016年夏号p.


 国民との約束は平気で反故にするのに、ひょうすべさんとの約束は守って、頭から喰われてしまう政府。けーっ、とか徹底抗戦していた祖母も息絶え(膠原病で)、埴輪詩歌はウラミズモへの移民を決意するのですが……。

 というわけで、色々な意味で「スターウォーズ・エピソード3」みたいな感じで、だいにっほん三部作へとストレートにつながります。布団かぶってがたがた震えるような、そんな、ぞーんな、嫌怖さ。でもでも、新聞を開けば今日もほら、そこに、かしこに、ひょうすべさんのご活躍。


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 ひょうすべというのはその便所にいる人喰い妖怪の「あだ名」というわけです。だけど「絶対あの政党やひょうすべと関係があるね、やる事がそっくりだ」、と人々は言いました。またこの自称ひょうすべは実はマンガに出てくるあのカッパっぽい妖怪とは、まったく無関係の存在です。ひょうすべ。
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文藝2016年夏号p.292


 ひょうすべ。



タグ:笙野頼子
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