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『魚だって考える キンギョの好奇心、ハゼの空間認知』(吉田将之) [読書(サイエンス)]

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 手足に測定用の押しボタンを装着し、身動きがとれなくなるとか。サカナに音楽を聞かせているようにしか見えないとか。細胞の数を数えすぎて、水玉模様を見るとついつい数を数えそうになってしまったり(もう治ったようです)せっかくとった卵が全滅してしまったり。
 研究の現場は、常に汗と涙にまみれている。
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単行本p.6


 「サカナが何かを考えるしくみ」について調べている広島大学「こころの生物学」研究室。学生たちの奮闘努力を中心に、魚類を対象とした生物心理学の研究成果について語るサイエンス本。単行本(築地書館)出版は2017年9月です。


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 サカナの声なき声を聞くために、幾多の学生たちとともに格闘してきた。
 たいてい、研究についての報道は、成果のみである。
「これこれについての研究により、このような発見がなされました。以上」
 いやいや、べつに、わたしたちの研究はハデに報道されるようなものでもないし……とひがんでいるのではない。このようなことに興味をもって、日々奮闘している若者たち(もちろんわたしも含む)もいることを、ちょっとだけ知ってもらいたいのだ。
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単行本p.5


 全体は11の章から構成されています。


「1 サカナの脳は小さいか」
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 ハトの脳とラットの脳の大きさは同じぐらい(どちらも約2グラム)だ。しかも、最近の研究によれば、鳥の大脳のニューロン密度は、哺乳類のそれよりもずっと大きいことがわかっている。だから、鳥類のハトのほうが哺乳類のラットよりも良い成績をおさめてもいいぐらいなのだ。
 それに比べて、キンギョの脳の重さはわずか0.1グラム。ハトの20分の1だ。これでハトと同じぐらいの成績をおさめるなんて、すごいじゃないか、キンギョ。
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単行本p.17

 キンギョの学習能力はハトに匹敵する。なのに、脳の重さはハトの20分の1しかない。では、ニューロン数で比較すると、どうなるのだろうか。そのためには「キンギョの脳を構成しているニューロンを数える」という気の遠くなるような仕事が必要となる。さあ、学生がんばれ。


「2 サカナは臆病だけど好奇心もある」
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 サカナにも好奇心はある。ダイビングや釣りなどで、サカナをよく見る機会がある人たちはそれを疑わない。でも、「サカナにだって好奇心はあるんです!」と声高に叫んだところで、「気のせいでしょ」といわれればそれまでである。
 それじゃあちゃんと測ってやろうじゃないの。ということで、N君の卒論テーマになった。
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単行本p.30

 サカナにも好奇心がある。それを客観的に証明するためにはどうすればいいだろうか。というわけで、キーをそれぞれのサカナの行動に割り当てた鍵盤を前に、サカナの行動を観察してはキーを叩いて記録する実験が始まった。


「3 ゼブラフィッシュは寂しがり」
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 新しい水槽に入れられたときのゼブラフィッシュの不安は、たぶんわたしたちが知らない場所に立った時に感じる不安と基本的に同じだろう。なぜかというと、人間に効く抗不安薬は、先に書いたようなゼブラフィッシュの「不安行動」を抑える効果があるからである。
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単行本p.46

 ゼブラフィッシュの不安行動には、人間用の抗不安薬や、さらにはアルコールが効く。ならばサカナは人間と似たようなメカニズムで不安を感じているのではないだろうか。ゼブラフィッシュの不安行動を研究する。


「4 サカナの逃げ足」
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 いくつかのビデオから、アオサギの捕食スピードを計ってみた。「構え」の姿勢から動き始めて約0.1秒後にくちばしが水中に突き入った。その鋭い形状と速度からして、くちばしが水中に入ってからサカナに達するまでの時間は極めて短いだろう。くちばしが水面についてから反応したのでは、サカナもさすがに逃げきれまい。
 でもアオサギも結構失敗しているよな。実際にはサカナはどうしているのだろう。
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単行本p.70

 アオサギの電光石火の捕食行動に対して、しばしば逃げきるサカナ。どうもその逃走反応は、鳥のくちばしが水面に達するより前に開始されているようだ。というわけで、ひたすら水中に棒を突っ込んでサカナを脅かす実験が始まった。


「5 恐怖するサカナ」
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 高等学校の生物の教科書には、小脳のはたらきは「運動の調節と身体の平衡を保つ」ことだと書いてある。実のところを申せば、小脳にはもっといろいろな役割がある。最近では、感情に関わる機能が注目されている。
 わたしたちが得た結果は、「キンギョの古典的恐怖条件付けには小脳が必要です」のひとことで済んでしまうわけだが、これは10年ちかくにわたる苦難に満ちた研究の成果なのである。
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単行本p.87

 サカナの恐怖反応には小脳が関与している。それを証明する実験に必要な「小脳の局所麻酔」という無茶な難題に、ひたすら練習して挑む学生。がんばれ。


「6 サカナも麻酔で意識不明?」
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 わたしは、サカナにもサカナなりの意識があると考えている。もちろん、われわれ人間がもつ意識とはだいぶ違うだろう。
 ひょっとして、麻酔が効く様子を詳しく調べれば、サカナ的意識の理解に役立つのではないだろうか。こう考えて、キンギョの脳波を記録しながら麻酔をかける実験を行った。
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単行本p.104

 サカナは意識を持っているのだろうか。この問題にアプローチするため、キンギョに麻酔をかけたとき脳波がどのように変化するかを調べる実験を行った。


「7 各方面に気を配るトビハゼ」
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 とにかく、トビハゼは、何かをよく見る時には眼の向きをちゃんと調節していることがわかった。この時、その対象物とレンズの中心を通る延長線上の網膜に像が投影されることになる。したがって、網膜のその部分が、最も高い空間解像度で光情報を脳に送っているはずである。
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単行本p.119

 捕食行動の前に、エサに「注目」しているように見えるトビハゼ。本当にそちらに「視線」を向けて注視しているのだろうか。トビハゼの網膜の「神経節細胞の数を数える」という苦行の果て、視界から水玉模様が消えなくなり、小さな丸いものを見るとひたすら数を数えてしまうようになった学生。がんばれ。


「8 眼を見て誰かを当てるの術」
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「ん? なんだか1尾ずつ目つきが違うような気がするぞ」
 はっきりとどこが違うとは言えないのだが、何となく違う。そこで、数尾のキンギョを水槽からすくって、眼をアップで撮影して比べてみた。
 すると、虹彩の部分に何本かのスジが入っていて、このスジの入り方が1尾ずつ違っている。このせいで、何となく目つきが違っているように見えたのだ。スジの入り方は右目と左目でも違っている。
「もしかして、これは使えるかもしれない」
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単行本p.129

 大量に飼っているキンギョをそれぞれ傷つけることなく個体識別するために、虹彩の模様が使えるのではないか。というわけで、ひたすらキンギョの眼を撮影しては個体識別してみるという地味でしんどい研究が始まった。


「9 サカナいろいろ、脳いろいろ」
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 というわけで、脳の形を見れば、そのサカナが何が得意で、どんな生活をしているかだいたい想像できる。
 わざわざ脳を取り出して見なくたって、サカナの体を見ればわかるじゃないかと言われるかもしれない。もちろん、体やヒレの形、眼や鼻の具合なんかを見ればかなりのことがわかる。
 でも、脳を見ると、よりサカナの気持ちに近づけたり、別の角度からサカナの生活に思いを馳せることができるのだ。
 そんな理由から、わたしの研究室ではいろんなサカナの脳コレクションを作っている。
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単行本p.147

 サカナの心に迫るために、その脳を手にとってじっくり眺めてみたい。そんな願いをかなえるために「実物脳のさわれる標本」を作る研究が始まった。


「10 ハゼもワクワクするか」
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 水位が上がり始めると活動が活発になり、水面近くを泳ぐようになる。レンガはまだ水没しておらず、エサの匂いもしていないのにだ。水位が上がることで、レンガの上にあるエサ場に行けることを予期し、一刻も早く(でないと誰かに先を越されてしまうかもしれない)これにありつこうとしているのだ。すごくワクワクしているに違いない。
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単行本p.162

 潮の満ち引きを手掛かりとしたハゼの学習実験。はたしてサカナはわくわく何かを期待することがあるのか。


「11 飼育は楽し」
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 頭以外の体の部分はもちろん食べる(麻酔薬を使ったサカナは別として)。わたしの研究室には、調理設備一式が備えられている。
 サカナ好きのくせに、そんなことをしてかわいそうだと思わないんですか。などと言わないでほしい。身の部分は、いつも金欠の学生の貴重な栄養となる。そして、ふつうは食べられることのない頭(脳)は、標本としていろいろな場面で活躍する。
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単行本p.182

 自分たちで釣ってきて、自分たちで飼育し、実験終了後には自分たちでおいしくいただく。サカナの行動研究に欠かせない捕獲や飼育などの活動について紹介します。


「12 スズキだって癒やされたい」
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 わたしが疑問に思うのは、彼/彼女らは傷を負って「しんどい」と感じているのだろうか、ということである。そして薄まった海水に浸ると「気分が良い」のだろうか。
 サカナも痛みを感じることは、多分間違いない。もちろんこれには異論もある。と言うより、サカナに痛みがあると考えている人のほうが少ないだろう。
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単行本p.191

 傷ついたスズキが適度な塩分濃度の場所を求めて移動する行動をとるとき、彼/彼女たちは何を「感じて」いるのだろうか。行動の背後に意図や気持ちがあるのだろうか。生物心理学が目指す究極の問いについて語ります。



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