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『NNNからの使者 あなたの猫はどこから?』(矢崎存美) [読書(小説・詩)]

――――
「そう。みんなにミケさんって呼ばれてるの」
 背中を撫でられてゴロゴロ喉を鳴らしている。
「この子、ちょっと不思議な猫として有名でね」
「そうなんですか?」
「子猫とかを斡旋したり、保護猫施設に連れていったりするのよ」
「ええっ!?」
 なんかそういう話、ネットで読んだことあるような――。
――――
文庫版p.83


 猫、飼いたいけど、色々と事情もあって……。悩みを察知されるや、たちまち舞い込んでくる猫との良縁。そんな猫飼いあるある現象の背後では、NNNなる謎の猫組織が暗躍しているらしい。ミケさんと呼ばれている不思議な三毛猫(雄)がもたらす「猫と人の出会い」を描く五つの物語を収録した短篇集。『NNNからの使者』シリーズ第二弾。文庫版(角川春樹事務所)出版は2018年4月です。


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 この小説はフィクションです。
 作中に描かれる猫の行動は、すべての人間を猫の下僕にするため暗躍する謎の組織NNN(ねこねこネットワーク)の理念に則っているように見えますが、ほんの少し関係あるかもしれません。
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 というわけで、猫好きのあいだで(主にネット上で)話題にのぼりがちな謎の組織NNN(ねこねこネットワーク)の暗躍を扱った謀略サスペンスシリーズ、ではなくて、猫を飼いたいと思っている人が自分の猫と出会うロマンス小説です。人の視点、猫の視点、ときどき切り替えながら語られてゆく五つの物語。猫飼いの読者はもちろん魅了されますが、それほど猫に興味がない方でも、読めばきっと猫を飼いたいと思うはず。

 ちなみに前作の紹介はこちら。すべての作品は独立していますので、どちらから読んでも大丈夫です。

  2017年10月16日の日記
  『NNNからの使者 猫だけが知っている』
  http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-10-16


[収録作品]

『第一話 聞こえなかった声』
『第二話 願掛け猫』
『第三話 セーター猫の奇跡』
『第四話 猫に優しく』
『第五話 猫大好き、でも――』


『第一話 聞こえなかった声』
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「捕獲器に入って……」
 怖いのはわかっている。でも、そこに入れば暖かい場所でおいしいものが食べられる。風邪だって治してもらえる。
 優しい飼い主のところで暮らせる。
 できれば小雪がその「優しい飼い主」になりたかった。
「入ったら、あたしと……一緒に暮らそう」
――――
文庫版p.48

 一人暮らしをしたいと思いつつ、同居している親に精神的に束縛され何もできないでいる若い女性。そんな彼女が出会ったのは野良の虎猫。家を出て、この子と一緒に暮らしたい。でもこわい。どうしたらいいの……。勇気を振り絞って新しい人生に一歩踏み出そうとする彼女を、最後の瞬間に助けてくれるミケさん、かっこいい。


『第二話 願掛け猫』
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 大盛り上がりの三人を見ながら、本当にそうなのかな、と海は思う。考えても結論は出ない。多分みんな偶然だ。きっとあの三毛猫がいなくたって、こうなっていたはず。きっと。きっとね。
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文庫版p.89

 ペット飼育禁止のアパートに引っ越してきた若い男。そこに一匹の子猫がやってくる。隣人と一緒にこっそり世話しているうちに、何だか次々とアパートの住人が参加してきて、あっという間に保護猫グループ化。何と、このアパートの住人はみんながみんな猫好きだったのだ。え、じゃあミケさんの出番ないじゃん、と思った読者を待ち受ける驚愕の真相。


『第三話 セーター猫の奇跡』
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「今日は、猫を飼いたいけど飼えないらしい人がペット可のお部屋を決めたよ」
 と話す。
「どうして飼えないの?」
「猫アレルギーなんだって」
「ふーん。それは残念だね」
 ミケさんはそう言って、何やら考えているようだった。
「猫アレルギーって僕たち猫にはよくわからないことだよね」
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文庫版p.98

 猫アレルギーで猫を飼えない女性のために、奇跡の出会いをもたらすべく奔走するミケさん。「せっかく猫が好きで、飼える場所にいるんだもの。飼えるようにしてあげたいよね」(文庫版p.99)というわけで、NNN活動の基本「猫を飼いたいと思った途端、まさにぴったりの猫との出会いが」の背後にある、猫同士のネットワークから手配の詳細までがよく分かる物語。


『第四話 猫に優しく』
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 働けるのなら、あの子を養うこともできる。自分以外のものにお金を使うことがうれしくて、大輔はまた少し泣いた。
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文庫版p.159

 これまで不遇な人生を送ってきた男が、占い師から「猫に優しくしなさい」と助言される。そうすれば運が開ける、と。半信半疑ながら何とか猫に優しくしようと頑張っているうちに、幸運をもたらすオッドアイの白猫が現れる……。


『第五話 猫大好き、でも――』
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 人生には、いくつか「あの時こうだったら」と思う分岐点がある。柾樹の場合、それにはいつも猫が絡んでいるような気がする。
 家に帰ると、黒豆が熱烈歓迎してくれた。犬ももちろんかわいい。それはわかっている。
(中略)
 ただ時折、とてつもなく「猫が飼いたい」と思う自分もいる。今までの歴代の犬たちに申し訳ない気分になるが、犬は犬、猫は猫なのだ。
――――
文庫版p.167

 飼うのに何の障害もなく、猫大好きなのに、たまたま積極的に動かなかっただけで、猫を飼いはじめる絶好のチャンスを何度も逃してきた男。見るに見かねたミケさん、これまでで最も強引かつストレートな猫斡旋をしてくるのだった。



タグ:矢崎存美
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