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『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』(木下龍也、岡野大嗣) [読書(小説・詩)]

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ボス戦の直前にあるセーブ部屋みたいなファミマだけど寄ってく?
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なんつうかあれだなあ信長はよくあと三十年も生きたな
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邦題になるとき消えた THE のような何かがぼくの日々に足りない
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目のまえを過ぎゆく人のそれぞれに続きがあることのおそろしさ
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 男子高校生ふたりが過ごした、予感に満ちた七月の最初の一週間。避けられない結末に向けて疾走する青春まみれの200首を収録した、二人の現代歌人によるたぶんBL歌集。単行本(ナナロク社)出版は2018年1月です。


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七月、と天使は言った てのひらをピースサインで軽くたたいて
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 二人の作品を、「7/1」から「7/7」までの一週間に分けて配置しています。ときおり返歌のように呼応している場合もあり、全体として「二人の男子高校生による会話」のように感じられます。ストーリー展開も感じられますが、どういう話なのかは読者がそれぞれに読み解く必要があるでしょう。

 といった周到な構成や何やかやは気にもかけず、個人的に気に入った作品を抜き出してずらずら並べて引用しますよ。まずは、いかにも男子高校生の会話らしさあふれる作品から。


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ボス戦の直前にあるセーブ部屋みたいなファミマだけど寄ってく?
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フリスクがミンティアの2倍することに喩えて命の話をしよう
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なんつうかあれだなあ信長はよくあと三十年も生きたな
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スケートのリンクでカップヌードルを食べたいあわよくばこぼしたい
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あけてみて、ってはにかんで言われたら野蛮にやぶくべき包装紙
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邦題になるとき消えた THE のような何かがぼくの日々に足りない
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 しょっぱい青春の日々。


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わりばしでアイスコーヒーかきまぜて映画になれば省かれるくだり
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炙りハラスはパスしてイクラ軍艦を待てとお告げがあり待っている
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首の無いマネキンが着ていたシャツを買う僕 首を手に入れたシャツ
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目ん玉を画鋲にされた候補者が画鋲で見据える日本の未来
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繰り上げ算キメてお釣りは50円きっかりで今日イチのhigh
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 夏の高揚感。


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海岸に乗り捨てられた幼稚園バスの車窓にびっしりとパー
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トンネルの壁に続いた落書きがふいに途切れてここから不安
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ポテトチップスの袋の内側の銀きらめいて夏のどぶ川
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ビーサンで国道沿いをゆく僕におまわりさんが対話を望む
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冷えた印刷をうれしくにおうとき本屋に夏の入り口はある
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瓶ラムネ割って密かに手に入れた夏のすべてをつかさどる玉
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 なんかいろいろとうざいし面倒くさいしうつだし。


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カーストの中の上らのぞろぞろが渡り廊下で中の下殴る
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置いてかれたんじゃなく好きで残ってる好きで残って見てるあめんぼ
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誰のことも疑いたくない担任に招かれるまま教頭室へ
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ぼくであることに失敗したぼくを(だれ?なに?だれ?)が動かしている
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目のまえを過ぎゆく人のそれぞれに続きがあることのおそろしさ
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 死の気配はいつも近くにあるし。


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青いビニールテープで絞められた夢の首の感触わるくなかった
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交叉路でGPSのぼくが死ぬぼくと若干ずれたばかりに
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刃がぼくの皮膚を貫く間際まで世界に向けている半笑い
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泣きたがる観客のために新鮮な不幸を買いにゆくテレビ局
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神は僕たちが生まれて死ぬまでをニコニコ動画みたいに観てる
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玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ
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 というわけで、気恥ずかしい青春のイメージにうめくもよし、短歌でつむがれた物語を味わうもよし、もちろん単純に木下龍也さんと岡野大嗣さんの合同歌集として読んでもよし。様々な読み方が出来る一冊です。



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