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『SFマガジン2018年8月号 アーシュラ・K・ル・グィン追悼特集』 [読書(SF)]

 隔月刊SFマガジン2018年6月号の特集は、アーシュラ・K・ル・グィン追悼でした。


『赦しの日』(アーシュラ・K・ル・グィン、小尾芙佐:翻訳)
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 セックス、慰め、思いやり、愛情、信頼、どれもそれをいいあらわしてはいない。すべてをいいあらわしてはいない。それはまさしく親密なもの、ふたりが共感しあう肉体のなかに潜んでいるもの、だがそれは現実の状況をなにひとつ変えてはくれないし、世界のなにものをも、なにひとつ変えはしない。囚われの、この惨めな小さな世界にあるものすら変えてはくれない。ふたりは相変わらず囚われている。ふたりは相変わらずとても疲れているし、飢えてもいる。ますます絶望的になっている捕獲者どもが、ますます恐ろしくなってくる。
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SFマガジン2018年8月号p.51

 惑星ウェレルに赴任してきたエクーメンの使節ツリー、彼女の護衛として行動を共にしていたテーイェイオ、ふたりは暗殺計画に巻き込まれ、小さな隠れ家に幽閉されてしまう。互いに反目しあっていたふたりは先の見えない監禁生活を送るうちに次第に親密になってゆくが……。

 短編集『世界の誕生日』に収録されている『古い音楽と女奴隷たち』と同じく、何世代も続いた奴隷制度と性差別が社会基盤に組み込まれている惑星ウェレルを舞台とする中篇。


『博物館惑星2・ルーキー 第四話 オパールと詐欺師』(菅浩江)
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「尚美、判ってないわね。宝石の価値は希少性で決められるのよ。ジョンの乳歯からできたオパールは、世界にひとつ。ライオネルとマリアにとっては、バケツいっぱいのピジョンブラッドより価値があるかもしれない。そして、詐欺師は、人が一番大事にしているものを騙し取るのが大好き。違うかしら、健」
「そうだね。たとえ自分の利益にならなくても、被害者の悔しがる顔を見たいがために騙すってこともあるらしいよ」
 健は祈るような気持ちだった。
 どうか彼らの友情と信頼が本物でありますように。
 努力を怠らない二人が、自分たちの幸せを石の如く硬いものに変えて、しっかりと握りしめられますように。
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SFマガジン2018年8月号p.109

 既知宇宙のあらゆる芸術と美を募集し研究するために作られた小惑星、地球-月の重力均衡点に置かれた博物館惑星〈アフロディーテ〉には、化石化・宝石化の技術がある。恋人の愛犬の歯をオパール化してほしいという依頼を受けて作成した美しい人造オパールを引き取りにきた依頼主。だがその同行者は、十年前に宝石詐欺で捕まった前科のある詐欺師だった。二人の友情は本物なのか、それとも詐欺師の手練手管なのか。若き警備担当者である主人公は、事件発生を未然に防ぐために取引の現場に向かったが……。『永遠の森』の次世代をえがく新シリーズ第四話。


『うなぎロボ、海をゆく』(倉田タカシ)
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 わたしは、ほそながーい形をしたロボットです。色は黒いです。体をくねくねと曲げられます。頭に近いほうに、小さなひれがついています。なにに似ているかというと、うなぎに似ています。
 そうです、あの、何年もまえに絶滅した、おいしい魚です。
 おいしいからって食べつくしちゃうなんて、人間はすこしおバカなのかな?
 でも、人間のお手伝いができると、わたしはとてもうれしいです。
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SFマガジン2018年8月号p.319

 乱獲によりニホンウナギが絶滅してから十年。魚の密猟を監視する任務についていた「うなぎロボ」は、様々な出来事から世界と人間について学んでゆく。『母になる、石の礫で』の著者によるポストうなぎSF短篇集『うなぎばか』からの先行掲載。マグロの絶滅をテーマにしたSFコミックや、魚介類がレーザーを撃ち合うゲームなど、様々な先行作品を連想させつつ、読後感はちょっとしんみり。



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