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『ノッキンオン・ロックドドア』(青崎有吾) [読書(ファンタジー・ミステリ・他)]

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「どちらが探偵さん?」
「残念ながら両方です」と僕。「うちは共同経営でしてね」
「俺が不可能専門、御殿場倒理」
「僕が不可解専門、片無氷雨」
 順に自己紹介したが、マダムにはいまいち伝わらなかったらしい。
「不可能……不可解?」
「得意分野だよ」相棒――倒理が答えた。「謎に合わせて担当を分けてるんだ」
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単行本p.10


 犯人の足跡が残っていない雪上殺人、衆人監視下での不可能毒殺、なぜ犯人は絵を赤く塗ったのか、なぜ犯人は被害者の髪を切ったのか。不可能専門探偵と不可解専門探偵、相棒にしてライバルの二人が組んで謎を解くバディ探偵もの連作ミステリ短篇集。単行本(徳間書店)出版は2016年4月、Kindle版配信は2016年4月です。


 犯行方法を推理するのが得意な倒理、犯人の不可解な行動の動機を見破るのが得意な氷雨。それぞれ一人では解けない謎も、互いに分担し協力すれば解決する。というわけで二人の探偵が分担して事件に挑みます。


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 僕ら二人の関係は、まるでファミコンの横スクロールアクションだ。プレイヤーが扱えるキャラクターは二人。片方のキャラは攻撃力が高く、もう片方のキャラはジャンプ力が強い。倒理じゃないと倒せない敵もいるし、僕じゃないと届かない足場もある。目前の敵や地形に合わせて、僕らは目まぐるしく入れ替わる。そうやって少しずつステージのゴールを目指す。補い合う。協力する。共闘する。
 共謀する。
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単行本p.238


 なぜこういう面倒くさい探偵に仕事が来るかというと刑事の知り合いがいるからで、どうして不可能犯罪やら不可解犯行やらに出くわす率が異様に多いのかというと実行犯の背後にトリックを考案してやる教唆者がいるから。そしてさらに面倒なことに、この四人は旧友でありライバルなのです。


――――
 僕らの関係は複雑だが、難解ではない。
 大学時代、僕ら四人は同じゼミに在籍していた。文学部社会学科・第十八期天川ゼミ「観察と推論学」。教授が採り上げる数多の犯罪を相手に、毎週四人で机を囲み、議論し、学び、ほどほどにサボり、卒業して社会に出た。
 四人のうち、一人は犯罪者を捕らえる仕事に就き、
 二人は犯罪を暴く仕事に就き、
 もう一人は犯罪を作る仕事に就いた。
 まあ、それだけのことである。
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単行本p.145


 それだけのことである、っていうか、四人の暗黙の協力によって流れ作業的に殺人事件が量産されているような気がしてならないんですけど……。


[収録作品]

『ノッキンオン・ロックドドア』
『髪の短くなった死体』
『ダイヤルWを廻せ!』
『チープ・トリック』
『いわゆる一つの雪密室』
『十円玉が少なすぎる』
『限りなく確実な毒殺』


『ノッキンオン・ロックドドア』
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 アトリエの天窓ははめ殺しであり、ドア以外現場に出入口はなかった。そしてドアには、内側から鍵がかかっていた――つまりは密室殺人である。
 しかしその不可能状況の他に、現場にはもう一つ不可解なものが。
 アトリエの壁には霞蛾作の風景画が六枚飾られていたのだが、そのすべてが額縁から出されて床に放られており、しかも一枚は、真っ赤に塗りつぶされていたというのだ。
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単行本p.14

 密室内で殺されていた画家。なぜ犯人はわざわざ絵を赤く塗ったのか。不可能犯罪と不可解犯行が見事に融合された事件に、二人の探偵が挑みます。


『髪の短くなった死体』
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「このとおり、善田さんは髪を長く伸ばしていました。コンビニの防犯カメラの映像でも髪は長いままでした――ところが死体発見時は、髪が短くなっていたんです。うなじあたりの長さまでばっさりと」
「……それってつまり」
「ええ。犯人は死体の髪を切り、それを現場から持ち去っているんです」
 神保は首を60度近く傾け、「不可解でしょ?」としたり顔で言った。
――――
単行本p.45

 なぜ犯人は被害者の長い髪を切って持ち去ったのか。一見して不必要な犯人の行動、その背後にある動機は、事件の構図をひっくり返すだけのものだった。


『ダイヤルWを廻せ!』
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 この人何か勘違いしてるんじゃないか? と疑念を抱き始めた僕らをよそに、長野崎仁志は立ち上がらんばかりの勢いで熱く断じたのだった。
「つまり祖父は、遺書に暗号を残したんですよ!」
(中略)
 この人何か勘違いしてるんじゃないか? と今日二度目の疑念を抱き始めた僕らをよそに、奈津子女史はその細い瞳に炎を燃やして言い張ったのだった。
「きっと父は、誰かに殺されたのよ!」
――――
単行本p.77、79

 不可解な状況で亡くなった老人。遺書に書かれている番号通りにダイヤルを回しても開かない金庫。二つの事件にそれぞれ分担して取り組んだ倒理と氷雨は、現場で鉢合わせすることに。


『チープ・トリック』
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 心臓を撃たれ、死体となり、窓際に倒れていた湯橋甚太郎。被害者が立っていたのは窓からわずか50センチしか離れていない場所だ。しかし彼は事前に狙撃を警戒しており、何があってもカーテンを開けようとせず、それどころか窓際に近づこうとさえしなかった。
 ――だとしたら、どうやって彼は窓際で狙撃を?
「不可解だ」
「それに不可能」
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単行本p.122

 分厚いカーテンに隠された部屋、しかも窓際には決して近づかない被害者を、狙撃犯はどうやって仕留めたのか。狙撃現場に残された大胆不敵な挑戦状。倒理と氷雨には、このトリックを考え出した黒幕に心当たりがあった……。


『いわゆる一つの雪密室』
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「ところが、誰がどうやって空き地の真ん中にいる男を殺したのか、それがわからないってわけで。つまりこれは、いわゆる一つの」
「雪の密室!」
 口元がほころんだ。これぞ“不可能専門”探偵・御殿場倒理が待ち望んでいた絶好のシチュエーション! 俺はご馳走にありつく前みたく、手袋をつけた両手をすり合わせる。
 対照的にテンション下がりまくりの“不可解専門”が、背後で「温泉入りたい」とぼやくのが聞こえた。
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単行本p.150

 雪に覆われた空き地の真ん中で刺し殺されていた男。残されていた足跡は被害者のものだけ。いわゆる雪密室に二人が挑む。


『十円玉が少なすぎる』
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「『十円玉が少なすぎる。あと五枚は必要だ』」
 ゆっくりはっきり、言いました。
 倒理さんと氷雨さんはまばたきを二度繰り返し、仲よく首をかしげました。
「今朝学校に行くとき、そういう言葉を耳にしたんです。スマホで通話してる男の人とすれ違って、その人が通話相手に話しかけてるのが一部分だけ聞こえて」
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単行本p.184

 『十円玉が少なすぎる。あと五枚は必要だ』
 探偵事務所のバイトである高校生が聞き取った何気ない言葉。そこからどんな推理が可能だろうか。言うまでもなく『九マイルは遠すぎる』(ハリイ・ケメルマン)の本歌取りで、「原典」と同じ着地点を目指して二人の推理は進んでゆきます。


『限りなく確実な毒殺』
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「男が衆人環境下で毒殺された」と、倒理。「奴が飲んだシャンパンから毒物が。だがグラスに最初から毒が入っていたはずはない」
「でも、男がグラスを取ったあとに毒が混入したとも考えられない」
「本当にそうだとしたら奴は死なない。何か見落としてるんだ。盲点を。シャンパンに毒を混ぜる方法を……」
――――
単行本p.239

 衆人監視下での毒殺。被害者が飲んだグラスから検出された毒物。しかし、最初から毒が入っていたはずはなく、後から入れることも不可能。そして現場に残された挑戦状。再び奴の考案したトリックが使われたのだ。倒理と氷雨は旧友からの「出題」に立ち向かう。



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