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『宇宙の「果て」になにがあるのか 最新天文学が描く、時間と空間の終わり』(戸谷友則) [読書(サイエンス)]

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 一般社会向けの講演会で宇宙論の話をすると、必ず出てくる質問がある。まずはなんと言っても「宇宙人はいますか?」である。頑張ってビッグバン宇宙論の話をした後で、出てきた最初の質問がこれだった時の脱力感には未だに慣れることができない。その次に多いのがまさに「宇宙の果てはどうなっているか?」「ビッグバンで宇宙が始まる前はなにがあったのか?」といったものである。
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新書版p.18、


 宇宙はどこまで広がっているのか、宇宙が誕生する前には何があったのか、そして宇宙は最終的にどうなってしまうのか。誰もが気になる宇宙の「果て」について、現代科学がどこまで迫っているのかを解説するサイエンス本。新書版(講談社)出版は2018年7月、Kindle版配信は2018年7月です。


 私たちが宇宙について持っている「知識の限界」という意味での、宇宙の「果て」について解説する本です。インフレーション、ビッグバン、暗黒エネルギーによる加速膨張といった最新の宇宙論トピックについて、どこまで明らかになっているのかを解説し、その先、ほんの少しだけ想像力を働かせます。


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 自然科学が実験による客観的な検証をその礎としている以上、必ずその知識や理解には限界がある。「宇宙の果て」を考えていくと、結局はこの「我々の知識の果て」に突き当たることになる。
 それゆえ、皆さんが一番興味を持つところであろう、時間や空間方向に広がる「宇宙の果て」、いわば時空の果てについて、現時点の自然科学の知識をもとに明確な回答をすることはできない。しかしアインシュタインの言うように、想像をすることはできる。本書はあくまで自然科学の立場であるから、根拠のない想像をすることはできない。だが、これまでの自然科学の知識に基づいて、それなりに根拠のある形で宇宙の果てについて想像することはできる。
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新書版p.76


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 空間方向に広がる宇宙の果てについてまず確実に言える一つの回答は、「半径464億光年の宇宙の地平線よりはるかに大きな領域まで、一様かつ等方で、ゆがみのない平坦な宇宙空間が広がっている」ということである。
「それでは、インフレーションで整地された領域を超えた大きさでは、宇宙はどうなっているのですか?」という質問が直ちにきそうである。ここから先はまた、現代の科学知識では自信を持って答えることができない領域となる。事実、これを真剣に研究している研究者もほとんどいないのが実情だ。もちろん、研究者を含め多くの人にとって最も興味のあるテーマではあるが、実際に研究成果らしいものを出すのはほとんど不可能に近い。特に、若い大学院生が手を出しても、成果が出ずに研究者の職を得ることすら不可能になる恐れが大きく、とても学生に薦められるテーマではない。
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新書版p.104


 全体は9個の章から構成されています。


[目次]

第1章 宇宙の果てとはなにか
第2章 時空の物理学 相対性理論
第3章 宇宙はどのように始まったのか ビッグバン宇宙論の誕生
第4章 宇宙はどうしてビッグバンで始まったのか? 時空の果てに迫る
第5章 宇宙の進化史 最初の星の誕生まで
第6章 星と銀河の物語
第7章 観測で広がる宇宙の果て
第8章 最遠方天体で迫る宇宙の果て
第9章 宇宙の将来、宇宙論の将来


第1章 宇宙の果てとはなにか
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「観測可能な宇宙の果て」とはつまり、光が届く範囲ということであるから、実際に宇宙そのものがそこで終わるわけではない。宇宙――すなわち時空とそれを満たす物質はそこからさらに広がっているはずである。その空間的な広がりがどこまで続くのか、それこそがいわば真の「宇宙の果て」とも言えるものだろう。本書ではこれを「空間的な宇宙の果て」と呼ぶことにする。
 多くの宇宙関係の書物では、この二つの全く異なる概念に対して同じ「宇宙の果て」という言葉を使っている。書籍のタイトルや新聞の見出しなどでも、「ここまで宇宙の果てに迫った」というようなものをしばしば見かけるが、それらはほとんど、「観測可能な宇宙の果て」という意味である。上に述べたように、この意味の宇宙の果てであれば我々天文学者は自信を持って「ここまで宇宙の果てに迫った!」と胸を張ることができるからだ。
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新書版p.24


 我々から464億光年までの範囲が「観測可能な宇宙」であり、そこから先は原理的に直接観測することが出来ない。しかし、その先にも宇宙が広がっていることは確かであり、その先にあるかも知れない「空間的な宇宙の果て」を想像することは出来る。まずは、様々な意味で使われている「宇宙の果て」という言葉を整理してゆきます。


第2章 時空の物理学 相対性理論
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 ここでよく受ける質問がある。ゆがんだ2次元空間である球面は、3次元空間の中に存在する。地球の表面に住む人間は、表面の2次元世界に加えて、空へ向かう垂直方向というもう1次元も認識できる。時空がゆがんだ4次元空間ということなら、これは5次元だとかもっと高次元の世界が本当はあって、4次元時空はその中に存在しているということだろうか?
 実に良い質問である。残念ながら、その答えは今のところわからない。
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新書版p.43


 「物質やエネルギーの分布」と「時空の歪み」はどのように関係しているか。一般相対性理論の基礎について復習します。


第3章 宇宙はどのように始まったのか ビッグバン宇宙論の誕生
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 著者も主に理論的な研究を行っているので実感としてわかるが、存在するすべての観測データを説明できるような理論モデルなど、なんとか理屈をこねて作れてしまうものだ。したがって、既存のデータをうまく説明できたからといって、その理論がすぐに受け入れられるわけではない。大切なのは、その理論が予想することをあらかじめ予言しておき、将来の観測や実験の検証に委ねることなのだ。それが的中することはそう簡単に起こるものではない。
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新書版p.70


 決定的な観測的証拠がいくつも見つかり、標準理論の地位を獲得したビッグバン宇宙論。その歴史を振り返ります。


第4章 宇宙はどうしてビッグバンで始まったのか? 時空の果てに迫る
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 残された問題は「では、インフレーションの前の宇宙はどのようなものだったのか? そこでなぜ、どのようにインフレーションが始まったのか?」ということになる。そう、一般社会の人が最も聞きたいところであり、専門家にとっては最も聞かれたくない質問にたどり着いたのだ。
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新書版p.92


 ビッグバンの前に起きたことがほぼ確実視されているインフレーション。では、インフレーション自体はどのようにして起きたのか。「私たちの宇宙が生まれる前に存在し、ビッグバンの背景となった時空」の始まり、という宇宙の時間的な果てに迫ります。


第5章 宇宙の進化史 最初の星の誕生まで
第6章 星と銀河の物語
第7章 観測で広がる宇宙の果て
第8章 最遠方天体で迫る宇宙の果て
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 本書の後半では、二つの「宇宙の果て」について語っていきたいと思う。一つは、我々の近傍から出発して、人類の天文観測がどれだけ遠くへ、また、どれだけ深く宇宙を理解するに至ったのかという、人類の知的探求による「宇宙の果て」である。もう一つは、過去にさかのぼる宇宙初期とは逆に、未来の時間方向への宇宙の果て、つまり宇宙は将来どうなっていくのかという「果て」である。
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新書版p.108


 素粒子の誕生、反物質の消滅、元素合成、原子の生成、宇宙の晴れ上がり、宇宙の大規模構造、恒星の誕生、銀河の生成、ブラックホール、クェーサー、ガンマ線バースト。ビッグバンから始まる宇宙の歴史を振り返りつつ、宇宙の姿を明らかにした様々な観測技術の発展について解説します。


第9章 宇宙の将来、宇宙論の将来
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 現代の宇宙論における最大の未解決問題はなんと言っても「暗黒物質」と「暗黒エネルギー」であろう。研究者がこれらについて講演する際、スライドにダースベイダーの絵を入れるのはもはや世界的に使い古されており、ベタすぎてはばかられるほどである。ちなみに、宇宙の晴れ上がりから初代銀河形成までの「暗黒時代」をこの二つに加えて、「黒い三連星」というネタを講演でかましたのは、知る限りでは著者が最初だったと考えている。
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新書版p.228


 時間的に未来方向の宇宙の果て、すなわち究極的に宇宙がどうなってしまうのかという問題について語り、さらに現代宇宙論に残された最大の謎である暗黒物質と暗黒エネルギーについて現代天文学はどこまで迫っているのかを解説します。



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