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『おうむの夢と操り人形』(藤井太洋) [読書(SF)]

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「どうだろう。パドルと話すことの意味を製品の名前にしない?」
「いいね。例えば?」
「パロットーク(おうむ返し)だ。パドルに心はない。それを忘れないようにしよう」
 決まり、と言った飛美は席を立ってオフィスを出ていった。
 私の願いはすぐに裏切られることになった。
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Kindle版No.439


 ロボットに対して人間が抱く不信感をどうすれば払拭できるか。「家庭用ロボット」という夢を実現するためにどうしても乗り越えなければならない、その解決に取り組む技術者の姿を描くロボットSF中篇。Kindle版配信は2018年10月です。

 作中にはロボットに対する不安感をなくすための様々なアイデアが登場しますが、いずれも技術的な飛躍はありません。むしろ古くさい(それこそ世界最初のチャットボット「イライザ」で使われていた)発想をうまく再活用したリアルな解決策が語られるのです。

 しかし、本作の問題意識はさらにその先に向かいます。人間の錯覚を利用してロボットに共感させることが、倫理的に正しいことなのか。技術と倫理の葛藤に悩む語り手。しかし、経済の論理には逆らえず、社会はそれを受け入れ、人々は適応してゆきます。


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「いまさら、引き返せないな」
 ヤムテックが手を引くことは可能だ。
 だけど一度手に入れたものを人は手放せない。
 そしてパロットークは、一度きりの発明ではない。誰だって、何度だって再発明できるものだ。たまたま私は、パドルというロボットがたくさんある職場でそのヒントにたどり着いた。だけど、次に作る人は私が作ったパロットークを見るだけで、コードが書ける。
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Kindle版No.552


 やがて、知能は個体の中にあるのか、それとも個体を取り巻く環境に内在しているのか、社会や組織を動かす意思決定はどのレベルで実行されているのか、といった問いかけが浮上してくるあたりがSFとしての読み所です。



タグ:藤井太洋
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