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『ハロー・ワールド』(藤井太洋) [読書(SF)]

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「袖のHello, world!(ハロー・ワールド)は? よく見るんだけど何か意味あるの?」
「うまくいきますように、っていうおまじない」
 僕のそっけない答え方に郭瀬が吹き出した。「泰洋さん、面白いけど、ひどいよ。汪さん、ハロー・ワールドってのは一番初めにプログラムで書かせる文字列なんだ。これを表示するところからソフトウェア開発は始まる。C言語の初めての教科書で使われたサンプルで──」
「だから、おまじないだろ」
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Kindle版No.27


 "Hello, world!"と表示せよ。
 そこから始まるプログラミングの世界。それは、現実世界とどのようにつながってゆくのだろうか。インターネットや仮想通貨を「解放」するために戦う(コードを書く)技術者の姿を描いた、高揚感に満ちたハクティビズム連作小説。単行本(講談社)出版は2018年10月、Kindle版配信は2018年10月です。


 新しいプログラム言語を学び、最初に書いてみる小さな小さなソースコード。正しい開始、正しい終了、きちんと閉じて、文法ミスがなければ、実行すると画面に"Hello, world!"と表示される。それがすべての始まり。今やあなたはそのプログラム言語で表現できるあらゆるアルゴリズムの世界にアクセスできるようになった。そして、それを正しく使えば、小さな画面を通じて現実世界とそこに生きる現実の人々にもまた、アクセスできるのだ。
 ハロー・ワールド、世界にようこそ。


[収録作品]

『ハロー・ワールド』
『行き先は特異点』
『五色革命』
『巨象の肩に乗って』
『めぐみの雨が降る』
『特別番外編 ロストバゲージ』


『ハロー・ワールド』
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 本気でアプリ開発に取り組んでいる人々から見れば遊び以下のプロジェクトだ。
 そんな〈ブランケン〉だが、多くの国で十位前後の販売実績を出している。
 それが今週、なぜかインドネシアだけで売れた。〈グレイシャー〉や〈セーフウェブ〉を抑えて堂々の一位だ。
 東南アジアの島国でなにが起こっているのか。
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Kindle版No.163


 わずか数名で開発したスマホ用の広告ブロッカーソフトが、なぜか突然、インドネシアだけで急激に売れ始めた。いったいそこで何が起きているのか……。
 国家権力によるネットの悪用に対して、ただひとり立ち向かう決意を固める主人公。その姿を通じて技術者のプライドを描く短編。


『行き先は特異点』
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 アマゾンのドローン誤配送に、新製品〈メガネウラ〉の不調、ウーバーとテストカーのアプリの異常。そして、僕やジンジュ、ファヒームが、何もないキャンプ場の中に来てしまったことが偶然とは思えない。ひょっとしたら、追突もだ。
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Kindle版No.935


 カリフォルニア州の中央、人里はなれた場所で、グーグルの自動運転車が事故を起こした。しかも、その地点にはアマゾンの配送ドローンが荷物を誤配達して置いてゆく。どうやらこの何もない場所が、なぜかマシンを引き寄せる特異点になっているようなのだ……。
 正しくつながればすべての人に恩恵をもたらすはずのソフトウェアと現実世界。だが、そうでなければ? ソフトが認識する「世界」と現実世界との間に乖離が生じたとき起こり得る事件を描きます。理の果てに立ち現れる美しいラストシーンが印象的な短編。


『五色革命』
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《どうした。いまバンコクだろ。クーデターは大丈夫か?》
《あんまり大丈夫じゃない。武装した学生のデモ隊に〈メガネウラ〉をとりあげられて、協力を要請されてる。革命放送をやりたいんだそうだ。それで、有料版が必要になった。事情は察してくれ》
《ハードラック(運が悪いな)。ちょっと待ってろ》
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Kindle版No.1486


 タイに出張中、クーデターに遭遇してしまった主人公。ドローンによる空撮映像をリアルタイムにネットに流すことで、革命の正当性を世界に訴える活動に協力しろと、武装した学生デモ隊から要請されたのだが……。
 技術の力で政治運動を支える。しかし一歩油断すると、それはどんな事態を引き起すか予想できない。理想主義的なハクティビズムが持つ二面性と技術者の責任について掘り下げてゆく短編。


『巨象の肩に乗って』
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『やらせてくれ。やりたいんだ』
 郭瀬は胸に手を当ててカメラに身を乗り出してきた。
『インターネットは自由でなきゃならない』
 そうだった。
 郭瀬にはそれを言うだけの資格がある。〈マストドン〉の肩に乗っただけの僕に、それはあるだろうか。
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Kindle版No.1966


 中国市場に入るために検閲を受け入れたツィッター。もはやどこにも残されていない「インターネットの自由」。その理想を取り戻すために、自分には何が出来るだろうか。すべての人々がインターネットの自由を享受できる世界を目指して、主人公は〈マストドン〉をベースとした新しいSNSを創り出そうとする。


『めぐみの雨が降る』
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 僕も新自由主義に毒された〈ビットコイン〉が正常なものだとは思っていない。投機のためだけに〈ビットコイン〉にへばりついている者たちが去れば、国境を越えて商品やサービスを購入するために使われるようにもなるだろう。悪くない未来だ。
 だが、この計画には協力できない。
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Kindle版No.3066


 ビットコインを支配して国際取引に使えるようにし、基軸通貨の地位をドルから奪う。そんな中国の野望に巻き込まれ、窮地に陥った主人公。だがそのとき、目に入った"Hello, world!"の文字列。そう、自分は技術者だ。何かをつくるのが仕事だ。だったら書けばいい。サトシ・ナカモトの構想を超える新しい仮想通貨のコードを。

 『アンダーグラウンド・マーケット』で仮想通貨「N円」による地下経済を描いた作者が、いわば仮想通貨「N元」の誕生とそれが創り出す世界経済ビジョンを見せてくれる最終話。


『特別番外編 ロストバゲージ』

 番外編。荷物紛失(ロストバゲージ)に遭遇し、空港で一夜を明かすはめになった主人公とその飼い猫の体験を描きます。猫のジローが大活躍(しません)。



タグ:藤井太洋
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