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『SFマガジン2018年4月号 ベスト・オブ・ベスト2017、「BEATLESS」&長谷敏司特集』 [読書(SF)]

 隔月刊SFマガジン2018年4月号の特集は、『SFが読みたい! 2018年版』の「ベストSF2017」上位に選ばれた作家たちの作品特集「ベスト・オブ・ベスト2017」、そして「「BEATLESS」&長谷敏司特集」でした。



『9と11のあいだ』(アダム・ロバーツ、内田昌之)
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「ETが転進中」モーディが声をあげた。「スクープの収穫物を燃料にして本艦へむかってくるわ。ワープを再起動できなかった場合、接触するまでの残り時間は……」彼女はふいに口をつぐみ、困惑をあらわにした。「計算によれば時間は……」
 それはわれわれが生きていられる時間と等しいので、わたしはどうしても数値を知りたかった。
「まあ、9分かな」モーディは言った。「9と11のあいだ」
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SFマガジン2018年4月号p.27

 敵性エイリアン戦艦から受けた謎の攻撃。コンピュータは誤動作し、人間もAIもおかしくなる。はたして攻撃により“破壊”されたのは何だったのか。軽快なスペースオペラ、と思わせておいて、いきなり馬鹿SFへの鮮やかな転進。


『魔術師』(小川哲)
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「竹村理道は天才だよ。マジシャン史上、最大の天才。こんな仕掛けを思いついて、かつそれを実行するなんて、天才かつ狂ってないと無理。もし彼が天才じゃないのなら……」
「のなら?」
 その次の姉の言葉を、僕は死ぬまで忘れないだろう。
「タイムマシンが本物だった。ただそれだけ」
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SFマガジン2018年4月号p.41

 落ちぶれた天才マジシャンが仕掛けた最後のステージ。それは、タイムマシンの実演だった。時間遡及、それは何らかのトリックなのか、それとも本物なのか。


『邪魔にもならない』(赤野工作)
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 RTAでは、現実の全てがゲームプレイの一部とみなされる。「競技」と名のつくおおよその行為に、自己都合による中断が許されていないのと同様に。ゲームの最中に体調が悪くなれば、無論、それはプレイヤーの責任となる。RTAでは、ゲーム中の体調管理もゲームプレイの一部だからだ。(中略)
 RTAは命懸けの行為である。少なくとも、それに真剣に臨んでいる人間たちからすれば。
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SFマガジン2018年4月号p.49

 ファミンコンソフト『スペランカー』のクリア時間短縮に命がけで挑み続ける老人。その姿、僕たちの未来としか思えない。


『宇宙ラーメン重油味』(柞刈湯葉)
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 どうやら彼は課長に話しかけているのではなく、心の叫びが内蔵袋につながった神経系に漏れ出しているようだった。その証拠に最後のほうで、
「ふん、地球人にしては食えるものを出すじゃないか」
 という明瞭な声が聞こえてきた。
「まさかこんなところで地球特産の重油が飲めるなんて」
 と、課長も心から満足そうにしていた。
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SFマガジン2018年4月号p.67

 太陽系外縁天体群の小惑星「ヤタイ」、そこに「ラーメン青星」が出店。ポリシーは「消化管があるやつは全員客」。あそこはどんな異星人にもそれぞれの代謝に合わせて美味しいラーメンを出す、という評判を聞きつけた客が集まってくるのだった。脱力のB級グルメSF。


『1カップの世界』(長谷敏司)
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「わたしが狂っているのではないわ。きっとね、……正気というものが、ほんの少しだけズレてしまったのよ。だから、わたしは、この世界をしあわせにはしない」
 笑ってしまった。涙ににじむ視界が揺れた。どうしようもない孤独が、自分が今生きていることを激しく感じさせていた。
 AIたちの能力は人類を超えている。だから、アナログハックで、いつかエリカのことも誘導できるようになるかもしれない。
 それでも、痛快だった。
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SFマガジン2018年4月号p.91

 『BEATLESS』スピンオフ短篇。高度AI、アナログハック、そして冷凍睡眠から覚醒してたった一人で22世紀に放り出されたエリカ・バロウズの物語。
 ちなみに『BEATLESS』単行本の紹介はこちら。

  2012年12月21日の日記
  『BEATLESS』(長谷敏司)
  http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-12-21


『骨のカンテレを抱いて』(エンミ・イタランタ、古市真由美訳)
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 夜深く、眠りの蜘蛛の網に沈み込んでいきながら、わたしは時折、体の中に谺を聞く。この世ならざる世界の音色、互いに結びあわされた旋律が、ありえたかもしれない光景を目の前に描きだす。けれど映像は曙の光に掻き消される。朝はこの現実のため、ペンと五線紙のためのもの。物語のためのもの、ある物語は生きながらえるべく、ある物語は消える運命のもとに生みだされる。
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SFマガジン2018年4月号p.115

 音楽によって魔物を退治する仕事をしているヨハン・Sのもとに、隣人の奇行に悩まされている依頼人がやって来る。フィンランドの作曲家シベリウスとフィンランドの民族楽器カンテレが活躍する、いかにもフィンランドの作家らしい作品。


『博物館惑星2・ルーキー 第二話「お開きはまだ」』(菅浩江)
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 触覚、圧覚、温覚、冷覚、痛覚。メルケル触板、マイスナー小体、ルフィニ小体、パチーニ小体、自由神経終末。どんなものが、どんなところに、どんな色で、どんな動きで。それこそ産毛だけを撫でられるかのような言語化できない気配まで、アイリスは腕が受け止める感覚を脳内で画像として再構築する。
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SFマガジン2018年4月号p.329

 既知宇宙のあらゆる芸術と美を集めた小惑星、地球-月のラグランジュ5ポイントに置かれた博物館惑星〈アフロディーテ〉で、新作ミュージカルが公開されることになった。そこに出席する予定のミュージカル評論家に脅迫状が届く。視覚情報をすべて触覚に変換して細部まで子細に「視る」ことが出来る盲目の評論家は、その辛口評論ゆえに敵も多い。若き警備担当者である主人公は、彼女の警備という任務に就いたが……。『永遠の森』の次世代をえがく新シリーズ第二話。



タグ:SFマガジン
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