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『とてつもない失敗の世界史』(トム・フィリップス:著、禰冝田亜希:翻訳) [読書(教養)]

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 世界で起こっている最近の出来事を見聞きして、あなたの個人的な意見がどうであるか、あなたの政治的な立場がどうであるかにかかわらず、こうぼやいたことがあるのではないだろうか。「なんてこった。どうして人間はこうなんだ?」
 そんなとき、本書はせめてもの慰めになってくれる。「大丈夫だよ。私たちはいつだって、こうだったじゃないか。今もまだ同じところにいるというだけだよ!」と。
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単行本p.9


 人類の歴史は悲惨で間抜けな大失敗に満ちている。私たちの脳は致命的な欠点を抱えているし、環境保護も統治も戦争も外交も何もかも壊滅的に下手で、科学技術の発展は失敗を地球規模にまで拡大させただけだった。木から落ちて死んだルーシーからアメリカを再び偉大にするリーダーを選出した米国民まで、多くの人びとがやらかしてきた大失敗の歴史について語る一冊。単行本(河出書房新社)出版は2019年6月、Kindle版配信は2019年7月です。


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 人類のこれまでの出来を率直に評価すると、あなたを目の敵にしている上司がくだす無慈悲な査定と同程度だ。私たちはありもしないパターンを想像してしまうし、仲間とのやりとりは心もとなくて、コミュニケーション能力はときに欠如している。したがって、こんなことを変えたらあのことも変わってきて、さらに悪いことに陥り、しまいには、ああやめてくれ、こんなことになっちまった、どうやって止めたらいいかわからない……となると、事前に気づけなかった残念な歴史がある。
(中略)
 人間の脳はこんなに優れているにもかかわらず、極端に変てこで最悪のときに果てしなくおかしなことをしでかしやすい。毎度のように恐ろしい決断を重ね、ばかげたことを信じ、目の前にある証拠から目をそむけ、まったくもってナンセンスな計画を行きあたりばったりに思いつく。(中略)国政の何もかもが最悪の状況になっているのが日を追うごとに明らかになっているときにでも、国を代表する大臣たちが「交渉はまことにうまくいっている」だとか、「前向きな進展があった」だとか、かたくなに言い張る。もう選択はなされたのだから、選択は正しかったに決まっているではないか、なぜなら選択をしたからだ、というわけだ。
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単行本p.9、21、29




目次

第1章 人類の脳はあんぽんたんにできている

第2章 やみくもに環境を変えたつけ
最後の一本まで木を伐採したイースター島

第3章 気やすく生物を移動させたしっぺ返し
鳥をみくびってはならない——中国からスズメを駆逐した毛沢東
鳥をみくびってはならない——米国にムクドリを放ったニューヨーカー

第4章 統治に向いていなかった専制君主たち
兄弟を幽閉するオスマン帝国の黄金の鳥かご

第5章 誰が誰を、誰をどう選ぶかの民主主義
初めからばかにされていたヒトラー

第6章 人類の戦争好きは下手の横好き
おざなりだったケネディーのキューバ侵攻

第7章 残酷な植民地政策をヘマばかり
スコットランドを破綻させた投資家、パターソン

第8章 外交の決断が国の存亡を決める
チンギス・カンに消された大国ホラズム

第9章 テクノロジーは人類を救うのか
二度も地球を汚染した発明家、トマス・ミジリー

第10章 人類が失敗を予測できなかった歴史




第1章 人類の脳はあんぽんたんにできている
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 私たちの独特な思考のしかたは、どんなに素晴らしい方法で世界を思うように変えることを可能にしてきたのだろう? それでいて、それがどんなに最悪かがわかりきっているのに、可能なかぎり確実に最悪の選択を絶えまなくできるのだろう? つまり、私たちは月に人を送ることができるほど賢いのに、どうしてあんなメッセージをもう別れたはずの元カノに送ることができるのか。煎じ詰めれば、その答えは私たちの脳の進化のしかたにある。
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単行本p.21


 まず、最悪の大失敗をしでかす理由について、私たちの脳が持っている様々なバイアスとその進化的由来を解説します。


第2章 やみくもに環境を変えたつけ
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 ポリネシア人は、私たちよりまぬけだったわけではない。野蛮でもなかったし、ましてや状況に気づいていなかったわけでもなかった。もしあなたが、いつ何どき環境災害に見舞われても不思議ではない社会が、みすみす問題をやりすごし、そもそもの問題の元となることをし続けるのはどうかしていると思われるなら……あ、ちょっとあなた、少しまわりを見まわしていただきたい。
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単行本p.57


 アメリカ中央平原のダストボウル、干上がったアラル海、カヤホガ川の炎上、イースター島の伐採。環境破壊により強烈なしっぺ返しを受けた大失敗の歴史について語ります。


第3章 気やすく生物を移動させたしっぺ返し
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 1890年のある寒い初春の日にシーフェリンがしでかしたことは、結果として、病気をばらまき、毎年何百万ドルもの値うちがある作物を台なしにし、飛行機事故で62人もが命を落とす羽目になった。これはどこかの誰かが、ただ自分がどんなに熱烈なシェイクスピアのファンであるかを見せつけようとした報いとしては、あまりにも損害が大きい。
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単行本p.74


 オーストラリアのウサギ大繁殖、ヴィクトリア湖のナイルパーチ災害、ダストボウル問題を解決するために導入されたクズ、スズメを駆逐したことで起きた中国の大飢餓、ムクドリの大繁殖。軽はずみな外来種導入で生態系をずたずたにしてしまった大失敗の歴史について語ります。


第4章 統治に向いていなかった専制君主たち
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 独裁者がどこまで愚行を犯せるかという好例を見てみたいなら、二度あることは三度あり、悪いことは三度続くことを地でいくオスマン帝国の時代に勝るものはない。(中略)この時期のオスマン帝国の歴史は、人を人とも思わない血塗られた白昼夢のようで、本当に起こった出来事とは信じがたい。
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単行本p.96、122


 永遠の命にとりつかれた始皇帝、シンデレラ城で国を埋め尽くそうとしたルートヴィヒ二世、窃盗症のエジプト王ファルーク、思いつきで動いたトルクメニスタンのサパルムラト・ニヤゾフ、そしてオスマン帝国の阿鼻叫喚。独裁者たちがしでかした大失敗の歴史について語ります。


第5章 誰が誰を、誰をどう選ぶかの民主主義
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 何かおぞましいことが起こると、私たちはその背後に統制の取れたインテリジェンスがあったに違いないと想像しがちである。そう思うのも無理はない。天才的な悪人が裏で糸を引いているのでなければ、そこまでひどい事態に陥るはずはないだろうと考えるからだ。このことのまずい面は、天才的な悪人が身のまわりにいなければ、〈何も問題はない〉から安心できる、と思いがちなことである。
 この考えが大はずれだということは歴史からよくわかる。これこそ私たちが何度も繰り返してきた過ちである。
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単行本p.122


 国民の投票で選ばれた犬、足パウダー、そしてヒトラー。大失敗をしでかす能力に関する限り専制君主制度に勝るとも劣らないことを証明してきた民主主義の歴史について語ります。


第6章 人類の戦争好きは下手の横好き
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 アーサー・シュレジンジャーはのちにこう述懐している。作戦会議は「すでにできあがったコンセンサスのある奇妙な場の空気」の中で行われ、内心、計画が愚かしいと思っていても、会議中は押し黙っていた。「遠慮がちにいくつか質問をする以上のことをできなかった私の落ち度を言葉にするなら、この愚かな計画に警鐘を鳴らそうとする意欲が、会議の場の空気のせいで削がれてしまったと言うことでしか説明できない」と書いた。シュレジンジャーの肩を持つわけではないが、私たちは皆そうした場を経験している。
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単行本p.144


 英国軍が戦わずして負けたカディスの戦い、オーストリア軍がそもそも敵すらいなかったのに大敗北を喫したカランセベシの戦い、まぬけな自滅で大敗したピーターズバーグの戦い、戦争していることにすら気づかなかったグアム、ナポレオンとヒトラーがしでかした同じ間違い、第二次世界大戦で同士討ちをしでかした米軍、トイレ問題で沈没したドイツ軍の潜水艦、そしてベトナム戦争にキューバ侵攻。愚行にあふれている戦史について語ります。


第7章 残酷な植民地政策をヘマばかり
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 口を酸っぱくして言うが、植民地支配は悪かった。実に悪いことだった。本書のこの部分はあまり愉快でなくて申し訳ない。
 本来、このことは言うまでもない大前提であるべきだ。こんなことをわざわざ言わなければならないのは、私たちは現在でも、植民地主義は良いものだったという強烈な反動のただ中にいるからである。(中略)人類は実際に起こった事実にもとづいて過去を考えようとすべきで、漠然たる郷愁の想いから、帝国がどんなに良かったかという短絡的でわかりやすい物語にすべきではない。
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単行本p.157、159


 探検家から征服者、統治者まで、ありとあらゆる人びとが悲惨で壊滅的な大失敗を重ねてきた植民地政策。そもそも最悪でありながら、なお愚行と蛮行の底を突き抜けようとし続けた植民地支配の歴史を語ります。


第8章 外交の決断が国の存亡を決める
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 ドイツは「敵の敵は友だ」という論理を鵜呑みにするという古い罠にはまった。これはつねに間違いだとは限らないが、友情の賞味期限はたいてい驚くほどに短い。実際に至上最悪の無数の決断の背後には、「敵の敵だ」という思い込みが潜んでいる。このことから、何世紀もの極端に混乱したヨーロッパの歴史を説き明かすことができる。
 この現象の別名は「戦後のアメリカの外交政策」と言ってもいい。
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単行本p.197


 残念な、あるいはまったく意味不明な、外交上の決断により滅びた国の数々。外交における愚行の歴史について語ります。


第9章 テクノロジーは人類を救うのか
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 科学、技術、産業の時代の夜明けは、これまで私たちの祖先が夢にも見なかった可能性を人類にもたらした。あいにく、これまで想像もしなかった規模で失敗をする機会ももたらした。
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単行本p.214


 ヤード・ポンド法のおかげで火星に激突した探査機、ポリウォーターやN線の大発見、優生学やルイセンコ学説の猛威、有鉛ガソリンとフロンの両方を発明して地球を徹底的に汚染した発明家。科学技術の発展が大失敗を防ぐのではなく、その規模をどんどん拡大していった歴史について語ります。


第10章 人類が失敗を予測できなかった歴史
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 私たちはたいして変わることなく、同じ行いを続けるのだろう。他人に責任をなすりつけ、空想世界を入念に築き上げさえすれば、自分のしたことに向き合わなくて済む。経済危機のあとでポピュリストの統治者たちが台頭し、金の争奪戦が繰り広げられる。集団思考に呑まれ、一過性のブームに浮かれ、確証バイアスに屈する。そしてまたもや性懲りもなく、この計画は抜かりなく、うまくいかないはずがないと心に言い聞かせるのだ。
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単行本p.264


 過去の過ちの再現速度が輪をかけて速まっている現代。私たちは過去から学ぶことはなく、これからも大失敗は続くだろう。それとも、今度こそ私たちは変わり、賢明になり、同じ大失敗を繰り返すことのない新しい時代を迎えたのかも知れません。現アメリカ合衆国大統領の、自信に満ちた笑顔の写真とともに、本書は幕を閉じます。



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『結局,ウナギは食べていいのか問題』(海部健三) [読書(教養)]

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 ニホンウナギが絶滅しない可能性はあります。しかし、だからと言って現状を放置することはリスクの高い博奕にすぎず、そのような博奕を受け入れる社会は、健全とは言えません。ある程度の不確実性はあっても、絶滅リスクを回避するために、予防原則に従って「ニホンウナギは絶滅するかもしれない」と考え、適切な対応をとる必要があります。
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単行本p.16


 ウナギは絶滅危惧種。いやいや漁獲高が減っているだけでウナギが減っているという証拠はない。食べるなんてとんでもない。いやむしろ食べて応援すべき。密漁を取り締まれば、稚魚を川に放流すれば、石倉カゴを設置すれば、完全養殖が実現すれば、それで解決する問題でしょう。いやいや多国間の取り決めやワシントン条約こそが大切。何となくモヤモヤが晴れないウナギ問題に関して、現時点で可能な限りの科学的知見と社会状況解説をQ&A方式で分かりやすくまとめた一冊。単行本(岩波書店)出版は2019年7月です。


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 ウナギの問題は、小さく見れば多様な問題の1つにすぎません。しかし、さまざまな要素を内包しているうえ、日本では社会の注目を集めるため、河川環境の問題や生物資源の持続的利用に関する問題、密漁や密売の問題を解決に向かわせるシンボルになりえます。ウナギの問題を解決することが、同じような問題を抱えている別の魚種、別の生物資源を守ることにつながるかもしれないのです。
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単行本p.vi




[目次]

1.ウナギは絶滅するのか

 ・ウナギは絶滅危惧種なのですか?
 ・ウナギはどの程度減っているのですか?
 ・なぜウナギは減ったのでしょうか?
 ・ウナギは数が多いから絶滅しない、という話を聞きましたが……
 ・結局のところ、ウナギは絶滅しますか?

2.土用の丑の日とウナギーーウナギを食べるということ

 ・なぜ土用の丑の日にウナギを食べるのですか?
 ・我々は、どのくらいウナギを食べているのでしょうか?
 ・ウナギを将来もずっと食べ続けることは不可能なのですか?
 ・安いウナギを食べるのは,よくないことですか?
 ・ウナギの代わりにナマズを食べればよいのでしょうか?
 ・結局のところ、土用の丑の日にウナギを食べてはいけないのですか?

3.ウナギと違法行為ーー密漁・密売・密輸

 ・法律に違反したウナギが売られている、って本当ですか?
 ・なぜ違法行為が行われるのですか?
 ・密漁や密売は暴力団がやっているのですか?
 ・シラスウナギはなぜ密輸されているのですか?
 ・法律に違反することと、ウナギの減少に関係はありますか?
 ・ウナギをめぐる違法行為は根絶できますか?

4.完全養殖ですべては解決するのか

 ・完全養殖とはどんな技術ですか?
 ・完全養殖が実用化されれば、天然のシラスウナギを捕らずにすみますか?
 ・完全養殖によって、どんな問題が解決されるのですか?

5.ウナギがすくすく育つ環境とは

 ・ウナギは川に戻ってくるのですか?
 ・ウナギが川で成長するにあたって、最も大きな問題は何ですか?
 ・ウナギを増やすには、「石倉カゴ」がよいのですか?
 ・どうすればウナギの住む環境を守れますか?

6.放流すればウナギが増えるのか

 ・なぜウナギを放流するのですか?
 ・放流すればウナギは増えますか?
 ・子供たちがウナギを放流することで、環境学習の効果が期待できますか?
 ・結局、ウナギの放流は行うべきですか?

7.ワシントン条約はウナギを守れるか

 ・ワシントン条約とは、どんな条約ですか?
 ・ニホンウナギの取引はワシントン条約で規制されるのですか?
 ・ワシントン条約でウナギを守ることはできますか?

8.消費者にできること

 ・行政は、ウナギの問題にどう対応していますか?
 ・政治は、ウナギの問題にどう対応していますか?
 ・消費者にできるのはどんなことですか?
 ・どんなウナギを選べばいいですか?




1.ウナギは絶滅するのか
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 リョコウバトの絶滅でも明らかなように、個体数が多いから絶滅しないとは言い切れません。むしろ個体数の多い生き物の場合は、「個体数が多い」状況が維持されなければ生存できない、という可能性すら考えられます。個体数の減少がある限界を超えたとき、一気に崩壊して絶滅に至る可能性があるのです。(中略)現在のところ、近い将来ニホンウナギがこの限界(ポイント・オブ・ノーリターン)を超えるのか、判断に必要な情報はありません。しかし、その生態とアリー効果を考慮したとき、ニホンウナギがある瞬間から急激に減少し、崩壊へ向かうことは十分に想定できるのです。
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単行本p.14


 ウナギは本当に絶滅するのか。現状、科学的にどこまでのことが判明しているのかを詳しく解説します。


2.土用の丑の日とウナギーーウナギを食べるということ
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 適切な消費量の上限が設定されていれば、値段や食べる時期など、食べ方は個々人がそれぞれの価値観に基づいて決めるべきことです。(中略)消費に関する最大の問題は、適切な消費量の上限が設定されていないことにあります。現在必要とされていることは、早急に適切な消費量の上限を設定し、誰もが後ろめたさを感じることなくウナギを消費できる状況を作り出すことです。
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単行本p.28


 日本人の食生活とウナギの関係について詳しく考えてみます。


3.ウナギと違法行為ーー密漁・密売・密輸
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 2015年漁期に国内の養殖池に入ったシラスウナギ18.3トンのうち、約7割にあたる12.6トンが、密輸、密漁、無報告漁獲など違法行為を経ていると考えられます。これら違法行為を経たウナギと、そうでないウナギは、シラスウナギが流通される過程や養殖の過程で混じり合い、出荷される段階では業者でもほとんど判別できません。(中略)シラスウナギの密漁や密売は、ウナギに関連する産業界ではごく当たり前のことであり、シラスウナギをスムーズに入手させてくれる「必要悪」だと信じられています。
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単行本p.32、38


 密漁などウナギに関する犯罪とその背景、影響について詳しく見てゆきます。


4.完全養殖ですべては解決するのか
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 今後、技術の革新が進み、ニホンウナギ人工種苗の商業的利用が可能になったとしても、費用対効果の面で人工種苗が天然のシラスウナギを凌駕する日は、さらにずっと後になるか、永久にやって来ないかもしれません。また、もし人工種苗が商業化されても、現状では天然のシラスウナギの漁獲量を削減する効果は期待できません。
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単行本p.55


 ウナギの完全養殖の現状と今後の見通しをまとめます。


5.ウナギがすくすく育つ環境とは
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 ニホンウナギは海の産卵場に集まって産卵し、その子どもは東アジアの各地へ分散します。ニホンウナギのこのような性質は、この魚の管理や生息環境の回復を難しくします。(中略)ある地域でウナギを取り尽くしたとしても、次のシーズンには産卵場からシラスウナギが運ばれてきます。このため、ウナギは保全のための努力が報われにくいのです。
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単行本p.59


 ウナギが成長しやすい河川環境を守るにはどうすればいいのかを考えます。


6.放流すればウナギが増えるのか
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 「放流すれば魚が増える」という考え方は非常にシンプルで説得力があります。しかし、現実はそう単純ではなく、放流はむしろ有害である可能性も高いということが、近年の研究で明らかになってきました。それでも放流が盛んに行われる背景には、放流に関する情報、特に放流がもつ負の側面が、適切に伝達されていないことが挙げられます。
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単行本p.81


 川に放流することでウナギを増やそう、という素朴な考えにはどのような問題があるのかを見てゆきます。


7.ワシントン条約はウナギを守れるか
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 ワシントン条約に頼らなくとも、科学的な知見に基づいて、適切な消費量の上限を設定すれば、過剰な漁獲を抑制し、ニホンウナギを含むウナギの仲間を持続的に利用することは可能なはずです。しかし、第2章で説明したように、現在のニホンウナギの消費量の上限は過剰であり、消費を抑制する機能を果たしていません。また第3章で紹介したように、シラスウナギの漁獲と流通には違法行為が蔓延しています。現状では、適切な管理が行われているとは言えません。このような状況が継続すれば、強制力を伴った国際的な枠組みであるワシントン条約による規制を望む声は、必然的に大きくなるでしょう。
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単行本p.93


 ワシントン条約でウナギを守ることが出来るのか、それは望ましいことなのかをを考察します。


8.消費者にできること
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 水産行政に関わる人間がそろって極悪人で、業界からの賄賂を懐に入れ、ニホンウナギを絶滅に追い込むことに至上の喜びを感じているという状況は、どう考えてもありえません。私の知る限り、水産行政の方々は、可能であればウナギの持続的な利用を実現したい、と考えています。
(中略)
 水産行政の科学的知識の欠落は、科学的な知見に基づいて問題を解決しようという姿勢が欠けている、という根本的な問題も関係している可能性がありますが、おそらくは主に、人員というリソースの不足によるものでしょう。
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単行本p.97、98


 行政や政治がどれほどウナギ問題に取り組んでいないのか、そして消費者に出来ることは何かを探ります。



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『書店本事 台湾書店主43のストーリー』(郭怡青:著、欣蒂小姐:イラスト、小島あつ子・黒木夏兒:翻訳) [読書(教養)]

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 ここ数年間、台湾には文芸開花の風が吹いているように感じられる。景気が悪いと言われているにもかかわらず、それぞれの理想に満ちた小規模な書店は続々と、台湾のあらゆる街角に芽吹いている。
(中略)
 書店主たちは往々にして、ある種の使命感を背負っている。それぞれの書店にはそれぞれの物語や歴史があり、各店主の生命の歌を織りなしている。台湾をぐるっと一周する中で分かってきたこと、それはこの取材が時空を超えた人文科学の旅だということだ。店主の口から語られるストーリーは、書店ごとに異なっていた。私はそこからさまざまな知識のピースを見つけ出し、やがてそれらのピースは台湾近代百年の縮図を形づくった。
 特色ある書店とは、読書の多様性を形づくるピースだということだ。これが一番の根底である。
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単行本p.110、422


 誠品や金石堂のような大型チェーン店だけが書店ではない。台湾には様々な独立系書店が存在し、たとえ経営が苦しくとも、それぞれの理想と信念、そして誇りを持って書物を扱っているのだ。台湾全土をまわって小規模な独立書店を取材した、書物愛に満ち溢れる一冊。単行本(サウザンブックス社)出版は2019年6月です。


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独立書店がもたらすのは、豊富な知識の花。私たちは読書の画一化を拒み、多様性を死に物狂いで守っています。
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単行本p.120


 台湾各地にある43の独立系書店を取材した本です。それぞれの書店について、基本情報、取材した内容、店主の紹介とインタビューが掲載され、素敵なイラストがついています。どのページからも飛び出してくるのは、書店主の熱い言葉。


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 もしあなたがとても優れた本を、他の誰にも作れないような本を生み出したとします。その本が出版後に一冊も売れなかったとしても、重要なのは今売れるかどうかではなく、百年後にその本がどんな意味を持つかなんです!
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単行本p.83


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 私は花の種を撒いています。それはこの世で最も美しい花、つまり知識の花です。知識の花は永遠にいい香りを放ち、一人一人の心の中で大きく育つのです。
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単行本p.91


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 こういった書店を開くことでなんらかの理念を呼び掛けたり、人々に対して幾らかの影響を及ぼすことができると、そこまで思ったことはありません。それでも、ここは小さな、美しい“点”です。そういった美しい“点”がどんどん増えていけば、それが次々につながって、大きな美しい台湾が姿を現す。私はそう信じています。
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単行本p.318


 ここには、売れない本には出版する価値がないとか、売れてない作家がベストセラーを批判するなとか、そんな浅はかで幼稚なことをいう人はいません。どのページからも、書物に対する深い愛情と、文化の多様性を守っているという誇りがあふれており、深く心打たれます。熱意もすごい。


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 この場に流れているのは、台湾の女性たちの最も純粋な本音。ここは婦人解放運動にとっての文化的な前線基地であり、社会運動の情報プラットフォームなんです。……フェミニストと、社会的弱者に関心を持つ改革者とが並び立つための。
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単行本p.65


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 もし読んでみて面白くなかったら、台北-ヨーロッパの往復航空券を差し上げますよ!
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単行本p.86


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 本を自分の手元に置いておきたくて、店内にはたくさんの非売品があります。ここの店主は嫌な奴だと思っているお客さんもいらっしゃいます。怒り気味にどうして売らないものを棚に並べるんだ、って言われます。でも私が置きたいから店に並べているんです。
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単行本p.269


 書物愛はじける自由さもまぶしい。

 台湾観光のついでに書店併設カフェに立ち寄り、書物に囲まれてお茶やコーヒーを飲んでみたいという方。台湾における出版や書店の現状に興味がある方。異国の書店めぐりという(リアルな、あるいは少なくとも想像上の)旅をしてみたい方。そして、理想、信念、情熱、誇り、を持って生きるということを忘れがちなすべての方にお勧めします。


 最後に、『歩道橋の魔術師』(呉明益)、『父を見送る』(龍應台)、『星空』(幾米)など数々の台湾文学を翻訳紹介してくれた天野健太郎氏が、本書の企画に加わりながらも最後まで見届けることがかなわなかったことについて、訳者のひとりである黒木夏兒さんが書かれた文章を引用しておきます。


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 この打ち合わせと、その後の代々木駅まで僅か5分の道のりが天野さんとの「同じ土俵に立った翻訳者同士」としての最初で最後の時間になるとは思いもよらなかった。訃報が入って1週間くらいは、翻訳を続けようとするたび「どんなにいい翻訳をしても、もう天野さんには読んでもらえないんだ」という思いが涙とともに湧き上がってしまって、どうにもならなかった。
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単行本p.430



タグ:台湾
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『ショーン・タンの世界』(ショーン・タン、岸本佐知子、金原瑞人、他) [読書(教養)]

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タンは、私たちが普段は忘れていたり、見ないようにしていたり、目隠しされている現実や記憶を鮮やかにイメージに変え、私たちの心に困惑を残す。そして、タンの物語の住人は困惑を受け入れることの恐さや奇妙な心地よさを教えてくれる。
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単行本p.79


 <企画展>「ショーン・タンの世界展 どこでもないどこかへ」(ちひろ美術館・東京、2019年5月11日~7月28日)に合わせて製作されたショーン・タンのガイドブック。単行本(求龍堂)出版は2019年5月です。


 企画展については次のページを参照してください。

  ショーン・タンの世界展 どこでもないどこかへ
  http://www.artkarte.art/shauntan/


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ショーン・タンの作品は独特だ。親しみがあると同時に謎めいており、明快でありながら容易に理解し難いところがあり、ハートフルな面もあれば皮肉に満ちた面もあり、それらが見事に具現化されている。そんな彼の物語、絵画、彫刻などの作品は、白昼夢の中で構成されて現れたように見えるかもしれないが、実際のところ、多くの実験や遊びを通じた検証の末に作品化されている。
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単行本p.150


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 エリックやカラスのまなざしは伝染します。ショーン・タンの作りだす、不思議であたたかい、美しくてちょっと怖い、魔術的なのにどこかなつかしい世界を心ゆくまで味わって本を閉じると、なんだか世界が前とは少し変わって見えないでしょうか。いつもは気にも留めなかった物や、人や、出来事に、そう世界のはしっこに、前よりもすこし視力がよくなったような。
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単行本p.7


 130点におよぶ作品を掲載したガイドブックです。特に『アライバル』『ロスト・シング』『遠い町から来た話』『夏のルール』『内なる町から来た話(邦訳仮題)』については、それぞれ一章が割り当てられ、作品からの抜粋、習作やスケッチ、ノートなどの資料がぎっしりと並んでいます。未訳の最新刊『内なる町から来た話』の一部が掲載されているのが嬉しいところ。

 さらに油絵、立体造形、インタビューなど盛りだくさん。インタビューでは今後の予定が語られているところが素敵です。岸本佐知子さん、金原瑞人さんをはじめとするエッセイも収録。充実した一冊となっています。

 「ショーン・タンの世界展 どこでもないどこかへ」を観てから美術館付属ショップで購入することをお勧めしますが、一般書店でも購入できます。手に持っているだけで、何かの魔法を感じる素敵なガイドブックです。



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『9つの脳の不思議な物語』(ヘレン・トムスン:著、仁木めぐみ:翻訳) [読書(教養)]

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 本書に登場した人たちは特別な人々だが、願わくばその風変わりさではなく彼らの人間性に驚嘆し、彼らとの違いより共通点に驚いていただきたい。彼らは、我々はみな一人一人特別な脳を持っていると教えてくれた。我々にはボブのような頭脳はないが、誰しも過去を思い出し、数え切れない素晴らしい瞬間で心を彩ることができる。我々は存在しない音楽を聴いたり、宙に浮かぶカラフルなオーラを見たりはしないが、それでも幻覚は見ている。我々が感じる現実はその幻覚の上に成り立っているのだ。我々はジョエルほど他人の痛みをありありと感じることはないが、ミラーニューロンのおかげで、程度は違うがそれを感じることができる。
 我々はみな素晴らしく精巧な神経システムを持っているおかげで、強い愛情を感じ、他の人を笑わせ、誰とも違う、予想もつかない人生を作り出す力を持っている。
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単行本p.302


 完全記憶、脳内地図喪失、幻音楽、狼への変身、ミラータッチ共感覚。他人にはない特別な能力を持っている人々はそれをどう感じているのか、どのように生きてきたのか。特殊な脳を持つ人々に取材した驚愕のノンフィクション。単行本(文藝春秋)出版は2019年1月、Kindle版配信は2019年1月です。


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 人生のほぼすべての日のことを細大漏らさず、完璧に覚えているボブや、荒れた人生を送っていたのに脳出血を起こして以来、別人のように繊細で優しい性格になり、絵を描き続けるようになったトミー、他人にオーラのような色を感じるルーベンのように、その脳の特別さと共存し、ある意味楽しんでいる人たちもいれば、自宅内でも迷子になってしまうシャロン、頭の中で絶え間なく響く音やメロディに苦しめられているシルビアのように症状と戦い、想像を絶する苦労をしている人たちもいます。どれだけ不自由で辛い毎日であったのかは想像に余りあります。さらに自分が死んだと感じる絶望、なくなった手足があるはずだと感じたり、実際にはある手足がないと感じる激しい違和感などは、筆舌に尽くしがたい苦しみだと思います。
 相手の感覚を自分のものとして感じる能力がある医師のジョエルは、患者から見れば自分のことをよくわかってくれる名医ですが、本人の精神的、肉体的負担は想像もつかないほど大きいでしょう。また、日本の読者の中には突然、トラに“変身”してしまうマターのエピソードに、中島敦『山月記』を思い出す人もいるでしょう。
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単行本p.315


 オリヴァー・サックスの著作と同様、脳の高度機能の働きが他人とは違う人々について書かれた本です。「症状」についての最新知見も含まれますが、むしろ多くのページが割かれているのは、本人の人生や生活、主観体験を聞き出すこと。バラエティに富んだ「ユニークな脳」の世界を知るにつれて、逆に「平凡な脳」がどれほど高度なことを行っているのかが分かってきます。そして、私たち一人一人が見ている感じている世界が、思ったよりも大きく異なっているということも。


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 我々は脳の全てを理解しているとは言い難い。実際、我々が「高度な機能」と呼んでいる、記憶や意思決定や創造性や意識といったものについて、満足な説明がなされているとは決して言えない。(中略)わかっているのは、奇妙な脳はいわゆる「正常」な脳の謎を解くためのユニークな窓だということだ。こうした脳は我々みなの中にも特別な能力が隠されていて、解き放たれるのを待っていると教えてくれる。また、我々がそれぞれ知覚している世界はみな同じではないことを示してくれる。さらには自分の脳は今まで思っていた通り正常なのかという疑問まで抱かせる。
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単行本p.19


 全体は序章と終章に加えて9つの章から構成されています。


[目次]

序章 「奇妙な脳」を探す旅へ出よう
第1章 完璧な記憶を操る
  過去を一日も忘れない“完全記憶者”ボブ
第2章 脳内地図の喪失
  自宅で道に迷う“究極の方向音痴”シャロン
第3章 オーラが見える男
  鮮やかな色彩を知る“色盲の共感覚者”ルーベン
第4章 何が性格を決めるのか?
  一夜で人格が入れ替わった“元詐欺師の聖人”トミー
第5章 脳内iPodが止まらない
  “幻聴を聞く絶対音感保持者”シルビア
第6章 狼化妄想症という病
  発作と戦う“トラに変身する男”マター
第7章 この記憶も身体も私じゃない
  孤独を生きる“離人症のママ”ルイーズ
第8章 ある日、自分がゾンビになったら
  “三年間の「死」から生還した中年”グラハム
第9章 人の痛みを肌で感じる
  “他者の触覚とシンクロする医師”ジョエル
終章 ジャンピング・フレンチマンを求めて


第1章 完璧な記憶を操る
  過去を一日も忘れない“完全記憶者”ボブ
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 自分の過去についての記憶力が素晴らしいからといって、ほかの事柄を覚えるのも得意なわけではない。しかし彼にある一日について聞くのは、話がまったく違う。彼は40年前のある日のことを、昨日のように容易に思い出せる。その日のことはにおいや味やそのときの気持ちなど、様々な感覚を伴ってありありと思い出せるのだ。
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単行本p.40


第2章 脳内地図の喪失
  自宅で道に迷う“究極の方向音痴”シャロン
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 シャロンの“迷子”はだんだん頻繁になって、ついには一日中常に起こるようになった。道がわからないので、近所や学校に行くこともできなくなった。それなのにシャロンはこの問題を誰にも打ち明けなかった。その代わりに生来のユーモアと鋭い知性を駆使して、いつも迷子になっていることを誰にも知られぬまま学校を修了し、友達を作り、結婚までした。
「25年も隠していたのよ」
「25年も?」
「そう……魔女って言われると思っていたから」
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単行本p.62


第3章 オーラが見える男
  鮮やかな色彩を知る“色盲の共感覚者”ルーベン
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 じっさい、ルーベンは2005年まで、自分の共感覚に気づいていなかった。彼はグラナダ大学で心理学を勉強していた女性と親しくしていた。彼女は共感覚の研究に参加することになったと話してくれた。このとき彼は「共感覚」という言葉をはじめて聞いたので、彼女に説明してもらった。
 これまでの多くの人たちと同じように、ルーベンもなぜそれを調べなければならないのかわからなかった。
「僕は『ふーん、ふーん、で?』みたいな感じでした。そんなの普通じゃないか!って」
 友人は驚き、あなたは共感覚者かもしれないと言った。
「そう言ってから、彼女は真っ青になりました」ルーベンは言った。「思い出したんです、僕が色盲だってことを」
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単行本p.111


第4章 何が性格を決めるのか?
  一夜で人格が入れ替わった“元詐欺師の聖人”トミー
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「側頭葉に損傷のある人々が、言語能力を失っているのに異常に多弁になるケースはよく見られます。そういう人たちは自分の発言を、以前より厳しく判断しなくなっていることが多いです。我々はそれを“政治家の話し方”(ポリティシャン・トーク)と呼んでいます。たくさんの言葉を話していても、内容はないということです」
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単行本p.144


第5章 脳内iPodが止まらない
  “幻聴を聞く絶対音感保持者”シルビア
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 セスは以前こう語ってくれた。「我々の現実というのは、感覚によって抑制されている、コントロールされた幻覚にすぎないのです」あるいは心理学者クリス・フリスはこう言う。「それは、現実と一致している幻想です」
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単行本p.172


第6章 狼化妄想症という病
  発作と戦う“トラに変身する男”マター
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 彼女は興奮し、張り詰めた様子で救命救急部門にやってきたという。彼女は突然カエルのように跳びまわったかと思うと、ゲコゲコ鳴き、まるでハエを捕まえるかのように舌を勢いよく突き出した。別のケースでは、蜂になったという奇妙な感覚を持った女性が報告されている。彼女は自分がどんどん小さくなっていくように感じていたという。
 2015年の終わり頃、ハムディは私に、長年にわたって狼化妄想症にかかったり、治ったりを繰り返しているマターという男性患者がいるというメールをくれた。
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単行本p.183


第7章 この記憶も身体も私じゃない
  孤独を生きる“離人症のママ”ルイーズ
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 ルイーズが離人症に本格的に悩まされはじめたのは大学生のときからだった。悪夢を見ているときに、彼女は急に世界が遠くなり、自分が身体から抜け出たように感じた。宙に浮かんでいて、世界の一員ではなくなっていたという。この感覚は一度起こると数日続いた。
「そのうちに一週間続くようになり、それからもっと長くなっていった。ついにいつもその状態になってしまって、元に戻らなくなった」
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単行本p.215


第8章 ある日、自分がゾンビになったら
  “三年間の「死」から生還した中年”グラハム
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「私は死んでいる」ある出来事を機に脳がなくなったと感じたグラハムは、そう訴えて周囲を当惑させた。彼を検査した医師らには衝撃が走る。起きて生活をしているのに、脳の活動が著しく低下し、ほとんど昏睡状態にあったのだ。
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単行本p.230


第9章 人の痛みを肌で感じる
  “他者の触覚とシンクロする医師”ジョエル
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 ジョエルが病院という環境の中で、どうやって冷静さを保っていられるのか不思議だ。痛みを抱え、咳をし、嘔吐している患者を前にすると、彼は自分の肺が締めつけられる感じがするという。喉にチューブを挿管されている患者がいると、チューブが喉に降りていくにつれて声帯が押される感覚を味わうという。脊椎に注射をするときは、針がゆっくりと自分の腰に滑りこんでくる感覚があるという。(中略)ジョエルが初めて人の死を目撃したときは、そこで自分が何を感じるのかわかっていなかった。
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単行本p.275、277



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