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『科学史ひらめき図鑑 世界を変えた科学者70人のブレイクスルー』(スペースタイム:著、杉山滋郎:監修) [読書(サイエンス)]

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「植物の葉が緑色に見える理由は?」。高校生の頃、生物のテストでこんな問題が出ました。私は「葉緑体があるから」などと回答したはずです。不正解。その後「植物は光合成のために赤や青の波長の光を吸収するため、残った緑色の波長光だけが反射して葉が緑色に見える」という解説を聞いたとき、「現象」と「仕組み」がピタリと重なり、ゾクゾクしたのを覚えています。これが多分初めて科学とつながった瞬間。文系の進路を考えていた私でしたが、一気に理系に転向したのでした。この本は、そんな「ゾクゾク」を科学者たちのヒラメキを通して皆さんにもおすそ分けしたいと思って作りました。
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単行本p.314


 大発見や大発明を成しとげた科学者たちの「ひらめき」エピソードを70個も集めた一冊。単行本(ナツメ)出版は2019年1月、Kindle版配信は2019年9月です。


 各項目は2ページ、フォーマットが統一されています。
 まず当時の状況を説明して、何が困難だったのかを示し、それを突破したヒラメキ(こんまりメソッドにあやかって流行らせようという意図があるのか、やたらとHIRAMEKIと表記されます)、その結果としての発明や発見、それが時代をどう変えたか、最後にそこから得られるビジネス上のヒント(これは、こじつけっぽい)。
 例えば最初の項目はこんな感じで構成されています。

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既存の技術を組み合わせてみる

活版印刷の発明
ヨハネス・グーテンブルク

Before(HIRAMEKI以前)
  書物への需要が高まる
  活字を作る技術はあるが、印刷のほうはどうしたものか……
  そうだ!

MIRAMEKIの瞬間
  ぶどう絞り機が使えるんじゃないか?

After(世界はこう変わった!)

ビジネスでひらめき!
――


 イラスト中心で一目で理解できるように工夫されており、見た目に楽しげな本です。『決してマネしないでください。』の蛇蔵さんによるコミック化を希望。


[目次]

Chapter1 視点を変えろ!
Chapter2 人の話を聞け!
Chapter3 失敗から学べ!
Chapter4 偶然を呼び寄せろ!
Chapter5 苦労を惜しむな!



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『数をかぞえるクマ サーフィンするヤギ 動物の知性と感情をめぐる驚くべき物語』(べリンダ・レシオ:著、中尾ゆかり:翻訳) [読書(サイエンス)]

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 フンコロガシは、天の川のスナップ写真を頭にたたきこみ、この天体図を使って移動する。クマとニワトリは数をかぞえ、クジラは韻をふむ歌を作詞作曲する。アリは、鏡に映った自分の姿がわかるらしい。手話や絵文字を使って「おしゃべり」ができる類人猿は、物の名前がわからないときに、自分で言葉をつくる。そのいくつかは、驚くほど独創的だ。
(中略)
 この本を書くために動物の感情や賢さを物語るエピソードを集めたとき、いちばん苦労したのは、信頼できる科学的な証拠を見つけることではなかった。こんなにもたくさん集まったおもしろい話の中から、どれを採用するかだった。動物に関する驚くべき発見は、毎週のように、続々と報告されている。動物にはさまざまな感情があり、洞察力と知性でもって行動していることが証明され、私たちが動物やまわりの世界、私たち自身を見る目を根本的に変えている。
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単行本p.17、18


 道具や言語を作りだし、仲間の死を悼み、ライバルを騙し、他の種に対して利他的な思いやりを示す。動物の知性や感情について、研究者が発見した驚くべき成果を集めた一冊。単行本(NHK出版)出版は2017年12月、Kindle版配信は2017年12月です。


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 動物は豊かな感情をもっている。ネズミはくすぐられると笑う。カササギは、墜落死した仲間を木の葉でおおって、死を悲しんでいるように見える。ザトウクジラのメスは、年に一度女子会をして、そのために何千キロも旅をする。幼いチンパンジーは、棒きれを赤ちゃんに見立てて、ごっこ遊びをする。オマキザルは不公平に扱われると憤慨し、犬はほかの種が悩んでいるとなぐさめる。であれば、アメリカアカシカが利他的な行動をしてもおかしくないだろう。
(中略)
 動物の視点に立って調べるという手法が使われるようになったのは、比較的最近だ。昔は、正しい設問をしなかったために、動物の知能についてまちがった結論を出すことがあまりにも多かった。(中略)人間の偏見を考慮するにつれて、科学者はもっと創意に満ちた質問をするようになった。そうすることで、いろいろな種類の、想像もつかないような、すばらしい知能が明らかになっている。
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単行本p.16、232


[目次]

第1章 人間を笑う:ユーモアといたずら
第2章 おしみなく与える:恩返しと協力
第3章 規則を守ろう:公平とズル
第4章 そばにいて:友情
第5章 楽しいことが好き:遊びと想像力
第6章 わけへだてのない親切:思いやりと利他行動
第7章 神聖な気持ちになる:死と霊魂
第8章 私は誰?:自意識
第9章 動物とおしゃべりしたい:言語
第10章 かぞえる:数の認識
第11章 野生の王国のテクノロジー:道具を使う
第12章 道を見つける:空間認識能力
第13章 芸術のための芸術:創造力と美的感覚
第14章 知能指数を考えなおそう:動物の脳力



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『「研究室」に行ってみた。』(川端裕人) [読書(サイエンス)]

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 受験に理系・文系の壁があることは、今の日本では動かしがたい事実だ。でも、この本をまとめる中で、つまり6人の研究者たちの言葉に耳を傾けるうちに、実際の世界はそのように動いていないと知ることが重要だと思えてきた。研究は、既存の「教科」の枠や、文理の壁を超えて、自由だ。普遍的なことを知りたいという気持ちは、枠からはみだし、壁を壊して、越境する。
 本書の中の研究者たちは、まさに、枠からはみだし、壁を壊す人たちだ。突破し、越境し、旅する人たちである。その力強さと楽しさが伝わって読者の胸に響いたら、本当にうれしい。
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新書版p.236


 サハラ砂漠にバッタを追う。ロケットを、ロボットを、新元素を、巨大宇宙構造体を、創り出す。そして世界の見方を変える。六人の研究者たちへのインタビューを通じて、研究者の興奮や喜びを活き活きと描いたノンフィクション。新書版(筑摩書房)出版は2014年12月、Kindle版配信は2015年7月です。


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 自分がまとめたものを再読しながら、つくづく思ったのは、自分が十代の頃にこういう人たちに出会いたかったな、ということだ。ちょっと斜に構えながらも、実は感化されやすかったぼくは、きっとタマシイが震えるような興奮を憶えただろう、と。
(中略)
 活動拠点が日本国内か国外か。大学などの研究機関の研究室なのか、それとも企業の研究室なのか。研究のスタイルは様々だが、自分の関心を研究として結実させていく力強さは共通する。多少の障害は勢いではねのけたり、粘り強く働きかけたりすることで、道を切り拓く、いわば突破する力を素直に感じさせてくれる人たちである。
 こういう生き方、研究の仕方があるのだと、知ることで世界が広がるような、夢を感じさせるような、本書の中だけに存在する素敵な「チーム」ができたと信じる。
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新書版p.4、5




[目次]

『砂漠のバッタの謎を追う』
前野ウルド浩太郎(モーリタニア国立サバクトビバッタ研究所)

『宇宙旅行を実現するために』
高橋有希(宇宙ベンチャー開発エンジニア)

『生物に学んだロボットを作る』
飯田史也(チューリッヒ工科大学バイオロボティクス研究室)

『地球に存在しない新元素を創りだす』
森田浩介(理化学研究所超重元素合成研究チーム)

『宇宙エレベーターは可能である』
石川洋二(大林組エンジニアリング本部)

『すべては地理学だった』
堀信行(奈良大学文学部地理学科)




『砂漠のバッタの謎を追う』
前野ウルド浩太郎(モーリタニア国立サバクトビバッタ研究所)
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 サハラ砂漠で、捕虫網を降る「バッタ博士」。
 サングラスをしていても、喜びが伝わってくるほどの躍動感で、バッタを白い網の中に追い込んでいった。
 本当に、楽しげである。学術的な研究とはいえ、捕虫網を振るのは童心に戻る作用があると思う。ぼくも、前野さんが必要な数を取り終えた後で、網を借りて少しだけ捕まえさせてもらった。実に、楽しいひとときだった。
 とはいえ、このバッタの幼虫は、「悪魔」と呼ばれるほどの凶暴さを発揮する成虫の、まさに直前の状態であることを思い出し、ふと現実に立ち返ったのだった。
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新書版p.21


 大発生すると農作物に壊滅的な被害を与えるサバクトビバッタ。その生態を調べる研究者は、サハラ砂漠のフィールドワークで捕虫網を振り続ける。前野ウルド浩太郎博士とその仕事については、ご本人の著作にも詳しく紹介されています。

  2017年06月22日の日記
  『バッタを倒しにアフリカへ』(前野ウルド浩太郎)
  https://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-06-22


『宇宙旅行を実現するために』
高橋有希(宇宙ベンチャー開発エンジニア)』
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 高橋さんはこんな「現場」で「国際宇宙ステーションとドッキングできる」仕様のドラゴン宇宙船開発にかかわり、その打ち上げをガラスで仕切られただけのミッションコントロールの外側で見守った。
「すごくワクワクしてましたね。宇宙ステーションのミッションはドラゴン宇宙船が地球に戻ってくるまで2週間くらいだったんですけど、ほとんど寝なかったです(笑)。何も見逃したくなかったので、寝てるときでさえもずっとヘッドセットで通信を聞きながら、何が起こってるかちゃんとモニターしてましたよ」
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新書版p.87


 南極から宇宙へ。民間企業で宇宙船開発チームに加わった研究者が、宇宙開発の現場の興奮を活き活きと語ります。


『生物に学んだロボットを作る』
飯田史也(チューリッヒ工科大学バイオロボティクス研究室)
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 ミツバチは、情報処理の計算能力を上げるのではなく、脳はシンプルなまま、目の構造をうまく調整することで、そもそも計算量を増やさずに済む方法を、何億年もかけた進化の中で獲得していたのだ。
 飯田さんは、ロボットについてのアプローチにしても、人間についての理解にしても、「脳」の役割を大きく見すぎているのではないかと感じているようだ。
(中略)
 飯田さんの研究室では、ロボットの研究をするにあたって、常に生物を意識する。
 生物がおそろしく「効率がよい」というのがその一つの理由として挙げられたが、それは、エネルギー効率やら計算効率やらを、身体そのもののメカニズムによってクリアしているという事実に基づいているようだ。我々は、自分たちの行動が脳によって支配されていると考えがちだが、飯田さんの観点からは、「体に脳がついていってる」のである。
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新書版p.111


 ロボットの動きをリアルタイムに制御するために高速情報処理を行うという発想から、身体の仕組みをうまく活用して計算量を減らし効率よく動くという、生物に見習ったロボットの基本原理を探求する。ユニークなロボットを創り出す研究とその背後にある哲学を解説します。


『地球に存在しない新元素を創りだす』
森田浩介(理化学研究所超重元素合成研究チーム)
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「1回目は、僕がシフトだったんです。先に帰る研究員が、じゃあお先にって部屋を覗いたときに、『森田さん、出てますよ。イベントですよ』って言って……めっちゃくちゃドラマティックですよ、ほんとに。もう気が狂いそうでしたよ。2個目はね、2005年4月2日午前2時過ぎ。3時間早かったらエイプリルフールなんだよね。もう死ぬほど興奮して、言葉にならない、というか」
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新書版p.160


 自然界に存在しない超重元素を創り出す。17年間ずっと空振りを続け、ついに新元素の生成を確認した研究者の粘り強さと意志。113番元素にまつわる研究者の体験を描きます。


『宇宙エレベーターは可能である』
石川洋二(大林組エンジニアリング本部)
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「設計本部から、設計と意匠の専門家を呼びました。そもそも静止軌道ステーションをどんな形にしたらいいか、ですとか。これは、自由度が高くて、みんな嬉々としてやっていましたね。制約がないし、お客さんにプレゼンして納得してもらう必要もないし(笑)」
 石川さんをはじめとして、気象・土木・意匠・設計・施行、といった専門家が集まり、プロジェクトは、現時点で考え得る宇宙エレベーターの構想を描いた。
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新書版p.181


 地表から静止衛星軌道までをつなぐケーブルを伝わって、人や貨物が格安に宇宙まで行き来する。「宇宙エレベーター」構想を単なる理論的なモデルではなく実際の建築物としてデザインする。東京スカイツリーを施工した大林組の研究チームが挑む宇宙エレベーター建造プロジェクトについて紹介します。


『すべては地理学だった』
堀信行(奈良大学文学部地理学科)
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 堀さんという地理学者の研究史を経て、ぐるりと一周すると、「すべては地理学である」という、そんな領域にまで連れて行かれてしまった。
 きっとその観点からは、本書で取りあげた、サバクトビバッタも、宇宙船開発も、ロボット工学も、原子核物理学も、宇宙エレベーターも、すべてが地理学だ。ほんとうに見事なまでに、そう言えてしまう。
 その一方で、どのような分野の研究であれ、その道を極めていくにつれて、自ずとそこから見る世界の描像があり、そこには地図ができる。すべてが地理学だった、というのは、そのまま、あらゆるジャンルの中にも地理学的な認識がかならずある、ということでもある。
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新書版p.232


 地理学とは何か。森羅万象あらゆるものを位置付け関連づける学問としての地理学を通して、本書で取りあげた様々な研究テーマを一つのビジョンへと統合してゆきます。



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『地球をめぐる不都合な物質 拡散する化学物質がもたらすもの』(日本環境化学会) [読書(サイエンス)]

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 私たちの日々の生活は、便利で役に立つさまざまな化学物質に支えられています。毎日の生活で利用されている化学物質の数は、実に5万種類とも10万種類ともいわれています。そのうち10分の1程度の化学物質は、年間1000トンを超える量で製造され、出荷されています。
(中略)
 たとえ毒性があっても、自然界や生体内ですぐに分解されたり、自然環境の中で次第に薄まっていく物質であれば、その影響は狭い範囲にしか及びません。POPs(残留性有機汚染物質)が厄介なのは、ひとたび環境中に放出されると、なかなか分解されず、はるかかなたまで移動し、そこで生態系の上位の生物の体内に濃縮されて、有害な影響を示す可能性がある点です。
(中略)
 低濃度での長期暴露の影響に関する研究は困難で、科学的に未解明な部分も多く残されています。しかし、わからないからといって何の対策もとらないと、被害が拡がってしまい、毒性が明らかになった時点では、回復不能な打撃を与える危険性があります。
 忘れてはならないのは、ストックホルム条約に登録されているPOPsは、意図したにせよ非意図的にせよ、人類が作りだした物質である、ということです。すなわち、放置することなく、人類が責任を持ってその解決にむけて努力しなければなりません。
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新書版p.13、18、19


 「解決に向かうどころか、一層深刻化していた!」

 化学物質による環境汚染問題は、いまどのような状況にあるのか。環境残留性、生物濃縮性、毒性、越境移動性などやっかいな性質をあわせ持つPOPs(残留性有機汚染物質)によるグローバルな環境汚染問題について、それぞれの研究者が状況をまとめた一冊。新書版(講談社)出版は2019年6月、Kindle版配信は2019年6月です。


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 多くの人は、「化学物質」という言葉を聞いただけで、「何か恐ろしいもの」「やっかいなもの」という印象を持ったり、それ以前に「自分にはわからない」と思考停止になったりしがちです。そのために、学問や研究に携わる人間は、よりわかりやすく、何が既知で何が未知かを、市民の側に伝えていく努力が求められます。
(中略)
 私たちは、さまざまな化学物質の手助けなしには維持できない社会に暮らしています。その一方で、その化学物質の濫用が生物や地球環境に無視できないダメージを与えていることは否定できません。リスクとベネフィットを比較して、納得できる選択肢を選ぶためには、環境化学に対する基本的な知識と正しい問題意識が必要です。そこでは、今以上に市民感覚を生かしていく必要があることは間違いありません。
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新書版p.253、


[目次]

プロローグ 地球をめぐる不都合な物質とは
第1章 世界に広がるPOPs汚染
第2章 マイクロプラスチック「不都合な運び屋」
第3章 水俣病だけではない「世界をめぐる水銀」
第4章 古くて新しい不都合な物質「重金属」
第5章 知られざるPM2.5
第6章 メチル水銀が子どもの発達に与える影響を探る
第7章 化学物質が免疫機構に異常を引き起こす
第8章 毒に強い動物と弱い動物
エピローグ 化学物質を化学物質をめぐる対立


第1章 世界に広がるPOPs汚染
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 新たな汚染源となっている新興国や途上国の多くは、低緯度の熱帯・亜熱帯地域にあります。こうした地域では大気循環が活発なため、POPsは大気を通じて遠方へと拡散していきます。大気に乗せられて高緯度地域まで運ばれたPOPsは、冷たい空気に冷やされて極域の海洋や陸域に沈着することになります。
 海洋は、地球の表面積の約7割を占めています。今後、低緯度地域でPOPsの無秩序な利用が進行すると、大量の汚染物質が揮散し、高緯度地域で海洋に溶け込むことなどにより、化学物質の大半は、世界中の海に広がることになります。
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新書版p.25


 環境中に放出されたPOPs(残留性有機汚染物質)がどのようにして地球全域に広がり、濃縮された上で私たちの体内にまで侵入してくるのか。海生哺乳動物の異常な汚染についてのデータを示しながら、その基本的なメカニズムを解説します。


第2章 マイクロプラスチック「不都合な運び屋」
――――
 世界の海には、50兆個以上ものプラスチックが漂っていると試算されています。重さにすると、実に27万トンものプラスチックが海を漂っているのです。(中略)世界の海を漂っているプラスチックは、単なる物理的に不都合な物質にとどまりません。物理的な悪影響に加えて、懸念されるのが、プラスチックに含まれている化学物質です。海洋に漂うプラスチックには、100種類以上の不都合な物質、有害化学物質が含まれています。
(中略)
 やっかいなことにこの運び屋は、生物の体の中にまで有害化学物質を配達しています。これを「トロイの木馬」と表現する研究者もいます。マイクロプラスチックという「トロイの木馬」は動物の体の中にやすやすと侵入し、内部に潜ませている汚染物質を排出し、身体にダメージを与えていることが、最近の研究でわかってきています。
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新書版p.61、77


 動物の臓器に対する物理的危害に加え、化学物質の運び手として世界中の海に汚染を広げ、さらには容易に身体に侵入して汚染物質を体内に配達するやっかいな性質を持つマイクロプラスチック。世界中の海洋に広がるマイクロプラスチック汚染の現状を整理します。


第3章 水俣病だけではない「世界をめぐる水銀」
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 大気への水銀の1年間の排出量を見てみると、火山ガスなど地質起源が500トン、植物の燃焼が600トン、土壌や植生からの排出が1000トン、人為的な排出が2000~3000トンと推定されています。
(中略)
 地域別の水銀の排出量では、アジアが49%、中南米が21%、アフリカが17%を占めています。これらの地域では小規模金採掘が行われていて、水銀排出量も増加傾向にあります。
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新書版p.105


 水俣病の原因物質として悪名高い有機水銀。日本では水俣病への反省から水銀の大気への排出は削減されているが、世界をみると、特に小規模金採掘が行われている地域では排出量は増加している。地球規模で見た水銀汚染の現状をまとめます。


第4章 古くて新しい不都合な物質「重金属」
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 国内での対策ではコントロールできない越境汚染を解決するためには、日本の周辺国のみならず、国際的な取り組みが重要であると考えられます。さらに、日本においては重金属による環境汚染レベルは下がっている、と説明しましたが、その一方で、現在、これまで問題ないとされてきた低い濃度レベルでの水銀や鉛による胎児や小児への健康リスクが問題となり始めています。
 さらには、ヒトの健康保護だけでなく、生態系への影響も配慮することが求められるようになってきました。
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新書版p.138


 水銀、砒素、鉛、カドミウムなどの重金属による環境汚染は今、どうなっているのか。越境汚染問題について解説し、特定の国や地域だけの取り組みには限界があることを示します。


第5章 知られざるPM2.5
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 その寿命(大気中での濃度が半分になるまでの時間=半減期)は数日から数週間と比較的長く、大気中に舞い上がった土壌粒子が約13日かけて地球を一周した様子も観測されています。まさに、PM2・5は地球をめぐっているわけです。輸送中には、成分の揮発(ガス化)、凝縮(ガス成分の粒子化)、凝集(粒子どうしの結合)、酸化反応による成分の変質なども起きます。また、黄砂が舞い上がり、都市域を輸送されていく間に人為起源の有害物質を吸着するケースも知られています。
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新書版p.155


 そもそもPM2.5とは何なのか。なぜ問題となっているのか。意外に知られていない「新しい」環境汚染PM2.5を解説します。



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『古生物のサイズが実感できる! リアルサイズ古生物図鑑 中生代編』(土屋健:著、群馬県立自然史博物館:監修) [読書(サイエンス)]

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 「数字」ではなく、「感覚的」にサイズを伝えたい。この「リアルサイズ古生物図鑑シリーズ」は、そんな思いで始まりました。さまざまな時代のさまざまな古生物を、現代の(身近な)風景に配置して、みなさんにサイズ感を楽しんでいただくことを目的としています。
 本書は、2018年7月に刊行された「古生代編」に続く2巻目です。ただし、「2巻目」とはいっても、各巻は独立した内容になっております。たとえば「恐竜がやっぱり気になる!」という方はぜひ、本書からお手に取られても大丈夫。ご安心ください。
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 ちゃぶ台を囲む座布団、その上に乗っているキアモダス。電車の座席を五人分占領して寝ているエオリンコケリス。東京駅の前に立っているパタゴティタン。古生物を身近な光景にさり気なく配置することで、有無を言わさずスケール感を明らかにする新感覚古生物図鑑シリーズ、恐竜が登場する第二弾。単行本(技術評論社)出版は2018年7月です。


 第一巻の紹介はこちら。

  2018年08月01日の日記
  『古生物のサイズが実感できる! リアルサイズ古生物図鑑 古生代編』(土屋健、群馬県立自然史博物館:監修)
  https://babahide.blog.so-net.ne.jp/2018-08-01



 第二巻では、子供用ベッドで寝ているプロトケラトプス、教室で転校生として紹介されているフクイサウルス、競泳用プールで泳いでいるリードシクティスといったように、「古生物のスケール感」を感覚的に伝えるために、身近な風景に正しいサイズで配置してビジュアルとして見せてくれます。

 現代の動物と比較するケースも多く、例えばキリンとマメンキサウルスの首の長さ比較とか、ザトウクジラの群れに混ざるショニサウルスとか、ウシと一緒に牧場で飼われているトリケラトプスといった具合です。

 思っていたより大きいとか、印象と比べて意外に小さいとか、いちいち驚きがあります。ただ眺めているだけでも楽しい。次の巻も楽しみです。



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